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17 村人とシスター

「こんにちは、おばさま。今日も痛み止めの塗り薬を持ってきましたわ」

「あら、シスター。いつもありがとうね。今日は色々と品揃えがあるけれど何か欲しいものはあるかい?」

「とうもろこしの種とかってありますか?」

「えぇ、もちろん。とうもろこしはこの村ではよく食べるからいくらでもあげるよ。そうだ、いつもの小麦粉と、ほら! みんなシスターが来てくれたよ!」


 おばさまの掛け声で村中の人たちが集まる。


「おや、この前の魚はどうだったかい? 今日もよく釣れたから持って行ってくれよ」

「シスター、シスターのポーションで子供の風邪が良くなったの。うちで取れたお野菜を持って行ってちょうだいよ」

「あら、みなさんありがとう。これは保存用のポーションです。お子さんの風邪がぶり返したら飲ませてあげてくださいね。それから……おじさまは手荒れがひどいとおっしゃっていたからクリームを練ってきましたわ。寝る前によく手に塗り込んでくださいね」

「ありがとう、シスター」

「シスター、牧場で飼っている子牛が足に怪我をしてしまってね、みてくれないか?」

「えぇ、すぐに参りますわ」


 牧場で子牛の怪我の手当てをし、そのお礼にとたくさんのミルク、バター、チーズを分けてもらった。十分すぎるくらいの量で遠慮しつつもみなさんがくれる気持ちを断ることもできなくて「ありがとう」とお礼を言った。


「シスター、これも持って行ってくれ」


 と牧場主のおじさまがカゴいっぱいの鶏の卵を渡してくれる。


「まぁ、こんなに?」

「あぁ、鶏たちは毎日産むから村でわけあっても余ってしまうくらいでね。栄養満点、ぜひ味わってくれよ」

「こんなに……ありがとう。私も鶏を一羽教会でお世話しようかしら」

「おぉ! それも良いね。けれど、森には狼や狐、イタチなんかもいるだろう? 鶏は襲われやすいからなぁ」

「確かにそうですわね」

「ということで、また村にきたら卵をもらっておくれよ」

「ありがとう、おじさま」


 牧場から村の中心地に戻ると、今度は布と毛糸をいくつかポーションと交換で恵んでもらい今日の用事がやっと終わったのだった。みんなの好意で荷物はたくさん、王子がいても問題ないくらいの食料品である。ミーシャのリクエストであるお魚も今日は三尾。王子のリクエストのとうもろこしも無事手に入れることができた。

 次ここにくる時はお返しをするためにたくさんポーションや魔法植物で作ったものを持ってこよう。


「シスター! よかった。間に合った!」


 少女が駆け足で私の側にくるとにっこりと微笑んで可愛らしい刺繍の入った小さなバスケット。


「あ、あの。私、以前シスターからもらったポーションで長年悩んでいた頭痛が良くなって。えっと……りんご農家のリカと言います。この通り、おかげさまで元気に。だからお礼をしたくって。これ焼いたんです。アップルパイなんですけど、よかったら持って行っていただけませんか?」


 両手でバスケットを突き出して顔を真っ赤にした彼女はうるうるした瞳で私を見つめた。まだ10にも満たないであろう女の子だ。拙い敬語はきっと一生懸命練習したものだろう。

ふと彼女の後ろの方には彼女を見守る女性の姿があった。


「ありがとう、リカ。うれしいわ。私と森の仲間たちで美味しくいただくわね」

「よかった! ママ! シスターが受け取ってくれたよ!」

「シスター、すみません。そんなに大荷物なのに」


 リカの母親はこちらへ寄ってくると申し訳なさそうに言った。


「いえ、美味しそうなアップルパイ。とっても嬉しいですわ。今度、こちらへきた時は何かお返しをさせてくださいね」

「いえ。とんでもありません。シスターの煎じてくれたポーションのおかげで娘が長年悩んでいた謎の頭痛がすっかり良くなったんです。おかげさまで学校にも通えるようになって。この子は我がりんご農園の一人娘ですから。家族ともどもシスターにはとても感謝をしていて……」

「そんな、私は森に住むシスターとしてできることをしただけですわ。また何か困ったことがあったら相談してくださいね」

「シスター、またアップルパイ焼いたら食べてくれる?」


 リカはキラキラした瞳で私を見つめた。純粋で何にも汚されていないその瞳。きっと私が守らなければならないものだ。もしも、ペガサスを惨殺しようとするような人たちが国の頂点になればこの子のような純粋な子供たちを守ることはできないかもしれない。もしかすると、今も都市の方では泣いている子供たちがいるかもしれない。

 私は膝をおり、リカと同じ視線になって彼女の髪をそっと撫でた。


「次は、リカが焼いてくれたアップルパイをシスターと一緒に食べましょうね。景色の良い場所でブランケットを敷いて……ね?」


 リカはぱっと目を輝かせぴょんぴょんと飛び跳ねた。


「うん! 次は一緒に食べようね! リカ、たくさん練習しておくね」

「ありがとう。それじゃあ、またね」


 私は二人にお礼を言うと、リカからもらったバスケットを大事に抱えて森へと帰路を急いだ。


 


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