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第94話 お茶会

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 第94話 お茶会

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 九月半ばになりもうすぐ冬に移り変わろうという今日この頃、ダンジョン探索は続けているけど、アイテムは見つからない。

 レベルはすでに二百九十九まで上がっている。もうすぐお父様のレベルに追いつく勢いだ。


 そんなある日、俺の屋敷で茶会を開くことになった。

 呼んだのは、第七王子ラインハルト君、バルツァー伯爵令嬢クラウディア嬢、デリンガー伯爵家三男ブルーノ君、アイクホルスト伯爵家長男ダニエル君、ホルツヴァート伯爵家三女デボラ嬢、ノイベルト侯爵家長女レーネ嬢。

 まあ、ラインハルト君の派閥だ。


 ここで問題になるのが、どんなお菓子を出すかだ。

 冷蔵庫と冷凍庫があるのだから、やっぱり冷たいものがいいと思う。

 冷蔵庫はかなり好評で、現在生産待ちが三百台以上ある。

 月産十五台という状態なので、納品まで二年くらいの待ち時間があるのだ。

 特に上級貴族や中級貴族は同時に複数台の注文をしてくるから、最初は二台までと制限をつけた。

 これ、国王が会う人たちに自慢しているせいね。


 ブルーノさんには、早急に弟子を取るように要望した。代官にもブルーノさんに協力して人材を広く募集するようにと連絡している。


 おっと話が横道に逸れてしまった。

 冷たいものの代表格はやっぱりアイスクリームだろう。

 以前もアイスクリームを作ったし、作るのはそれほど難しくない。牛乳と卵、あと砂糖があれば作れる。バニラビーンズがあれば、バニラアイスだけど、この世界でバニラビーンズは見てない。変換で創れないわけではないが、それはしないでおこう。


 牛乳と砂糖、卵を鍋に入れて、しっかり砂糖が溶けるまでかき混ぜる。ここではまだ火は点けない。

 砂糖がよく溶けたら、ここで火を点ける。弱火だ。

 とろみが出てきたら、火を止める。

 あとは濾して容器に入れ、冷凍庫で凍らせたらアイスクリームの完成だ。


「ベン。味見するか?」

「食べる、食べる!」


 ベンは俺がアイスクリームを作っているのを、物陰からずっと見ていた。勉強はいいのかと思ったが、いつも俺の都合に合わせてもらっているし、たまの息抜きは必要だ。それに、以前のアイスクリームのことを覚えているのだろう、めっちゃ期待した目で見られていたよ。


「うっめーっ! やっぱ冷たいアイスクリームだよな!? トーマ、めっちゃ美味いぞ!」


 ここまで喜んでくれると、作った甲斐があったというものだ。


「ベン! こんなところにいたのね!」

「げっ!? シャーミーッ!?」

「げっとは何よ、失礼ね。で、何を食べているの?」

「アイスクリームだ! めっちゃ美味いぞ。シャーミーも食ってみろよ!」


 どうやらベンは勉強から逃げ出してきたようだ。シャーミーに必死にアイスクリームを勧めている。


「シャーミーも食べてみて」

「以前食べたものよね? あれ、美味しかったわ」


 ベンが親指を立ててきたので、俺も親指を立てて返事しておいた。


「美味しい!」


 アイスを食べれば、女性は笑顔になる。昔の偉い人はいいことを言う。俺が言ったんだけど。


 そんなわけでプリンアラモードをお茶会で出すことにした。

 プリンはすでに王妃様にお届けし、その際にラインハルト君にも届けておいた。


 出すお茶はウミャーのハーブティーとベスタ皇国から輸入されたコーヒーだ。コーヒーは豆の状態で輸入されているのを、俺が焙煎して挽いたものだ。

 これでコーヒーゼリーを作ったら、苦味が鼻に抜けて最高に美味かった。今回は飲み物として出そうと思う。





 上級貴族用の馬車が屋敷に横づけされた。降りてきたのは、学園では見ないほどおめかしをしたレーネ嬢だ。

 いつもはサラサラのストレートの銀髪だが、今日はゆるいカールがかかっており、さらにアップにして色っぽい襟足が見えた。


「レーネ嬢。今日もお美しいですね」

「ありがとうございます、トーマさん。ウフフフ」


 レーネ嬢をエスコートして会場に案内する。

 会場といっても三十畳くらいの部屋に皆がゆったり座れるくらいの丸いテーブルと椅子が置いてある部屋だ。

 今日はいい天気だけど、外は寒いので部屋の中へと案内した。


 煌々と輝くシャンデリアが室内を照らしている。


「まあ、素敵なシャンデリアですこと」


 何度も光の加減を確認して作り上げた集光ランプのシャンデリアを褒めてもらえてうれしい限りだ。力作だからね。


「わたくしが一番早かったのですね」

「じきに皆もやってくるでしょう」


 その後すぐにブルーノ君、ダニエル君、デボラ嬢がやってきて、少し空いてクラウディア嬢がやってきた。

 もちろん、クラウディア嬢の案内はベンにしてもらった。顔を真っ赤にしたベンが初々しいな。


 最後にラインハルト君がやってきて、全員揃った。やっぱりラインハルト君はキラキラしている。主役は違うぜ。


「今日は二種類のお茶を用意しました。皆さんのお口に合えばいいのですが」


 ウミャーのハーブティーは味もいいが、何よりも疲労回復効果がある。日頃勉学に勤しんでいる皆を癒してくれることだろう。


「いつも思うのですが、トーマ様のハーブティーは美味しいですわ」

「ウミャーの葉はアシュード領の南に広がるイクスタン大森林で採取できるのです」

「イクスタン大森林というと、魔境じゃないですか。そんなところにこんな美味しい葉があるなんて……」


 イクスタン大森林はブルーノ君が言うように魔境と言われている。お父様はそこのモンスターを毎年狩っていたので、レベルが非常に高かったのだろう。

 そんなお父様でも、イクスタン大森林の最深部にはいくことができない。冬に人里近くに出てくるモンスターを狩るだけで留めているのだ。


「トーマ君、この黒いお茶は何かな?」


 ラインハルト君がコーヒーの入ったカップを持ち上げて香を嗅いでいる。


「それはベスタ皇国から輸入されたカッフェン豆を使ったお茶だよ。俺はそれをコーヒーと名づけたんだ。ブラック(そのまま)でも美味しいと思うけど砂糖とミルクを入れて飲んでも美味しいよ」


 ブラックは大人の味だ。俺はそう思っているが、好きかどうかは意見が分かれるところか。


「苦味と酸味があり、後からフルーティーな香りがするね」

「ラインハルト君はコメントまでイケメンだね」

「え?」

「こっちの話だから気にしないで」

「そ、そう……」


 釈然としないようだね。俺もイケメン過ぎるラインハルト君に納得いかないんですけど。


「わたくしはこのコーヒーに砂糖とミルクを混ぜたものが好きですわ」

「わたくしはウミャーのハーブティーが好みですわ」

「そのままでもいけますわよ、このコーヒー」


 クラウディア嬢はミルクコーヒー、レーネ嬢はウミャー、デボラ嬢はブラックと女性陣は好みが分かれた。

 男性陣は三人ともミルクコーヒーだった。しかも砂糖をたくさん入れていた。見ていて胸焼けしそうだったよ。


 頃合いを見計らい、プリンアラモードが出てきた。


「これはプリンかい?」


 ラインハルト君はプリンを食べたことあるからね。でもアイスクリームは初めてだよね。


「そうだよ。プリンにアイスクリームと果物をトッピングしたもので、俺はそれをプリンアラモードと名づけたんだ」

「アイスクリーム……これのことかな?」


 アイスクリームをスプーンで掬ったラインハルト君は一口食べた。


「っ!? 美味しい! 何これ、とっても冷たいよ!」


 ラインハルト君の反応を見て、皆もアイスクリームを食べた。

 大騒ぎになった。


「常温では溶けてしまうから、冷凍庫がないと作れないんだ」

「冷凍庫はお父様が注文したと聞いてますわ」


 クールビューティーな感じのレーネ嬢がすごい食いつきだ。


「冷蔵庫も冷凍庫も生産が追いついていないのです。ご迷惑をおかけしております」

「これは持って帰ることはできないのですか!?」


 レーネ嬢はすごくアイスクリームが気に入ってくれたようだ。


「先ほども言ったけど、常温では溶けてしまうんだ。だから、今のところうちでしか食べられないかな」

「そ、そんな……」


 そんなにがっかりしなくても……。


「それなら、トーマ様が毎週お茶会を開いてくださればいいのですわ」


 クラウディア嬢がいい案だと言わんばかりの表情だけど、それは勘弁してほしい。


 そんなこんなでプリンアラモードは、皆に好評だった。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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神官に木工職人に貴族令息と三人揃って同じブルーノという名前を付けるのは、何かストーリー上の裏設定やこの世界での定番の名前とかだったり…? だとしてもせめて何か匂わせや多少の説明が欲しい所はありますね。…
貴族のブルーノ君と職人のブルーノさん… 現実世界なら同じ名前なんて珍しく無いですが、小説では登場人物の名前被りは出来ればやめて欲しいです。初登場時は良いですが、話数が空いて再登場した際に誰だか思い出す…
美味しそう!!
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