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第93話 冷蔵庫納品

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 第93話 冷蔵庫納品

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 お爺様と共に王城へと向かう。どうしても冷蔵庫を設置してほしいという国王からの要望によるものだ。

 しかもプライベートルームと執務室に。仕事中に飲もうというのだろうか?

 冷蔵庫の用途はビールだけではない。ジュースを冷やすのも、肉や野菜を長期保存するにも使える。色々な用途があるから、仕事中に飲むのではないと信じよう。


「よくきてくれた。バイエルライン公爵、ロックスフォール侯爵」

「陛下におかれましてはご機嫌麗しいご様子、何よりにございます」


 冷蔵庫の設置を心待ちにしていたんだろうな……。

 まずは執務室に二立方メートルの冷蔵庫を設置する。スライム吸熱材がすでに入っているので、設置すればすぐに使える。

 スライム吸熱材は十年で機能が低下するため『八年を目途に交換が必要』だと明記してある。


「おおお、これが冷蔵庫か! たしかに中はかなり冷えておるな!」


 子供のようにはしゃぐ国王に、なんだかほっこりしてしまう。


「次は後宮に設置させていただきます」

「うむ。よろしく頼むぞ。ラインハルトを案内につける」


 いやいや、王子に案内だなんて恐れ多いですよ。


「バイエルライン公、トーマ君。こちらへ」


 今日もイケメンのラインハルト君が現れた。

 国王の執務室から後宮の入り口へは、歩いて十五分もかかった。長いよ。

 後宮の入り口の前には、国王の私室と王妃様の私室に二立方メートルの冷蔵庫を、それから厨房用に六立方メートルのものを納品する。

 さすがに六立方メートルの冷蔵庫は大きいため、現地で組み立てることになる。


 まずは国王の私室だ。広い部屋の一角に、冷蔵庫を設置した。

 執務室に置いたものもそうだが、国王が使うものだからかなり凝ったレリーフを施している。貴族用のさらに上位の冷蔵庫で、お値段も国王仕様である。機能は変わらないけど……。


 次に王妃様の部屋ではなく、その従者が控える隣の部屋に置く。王妃様の従者の部屋だけあってそれなりに広い。その一角に設置しようと運び込んだ。


「なぜ妾の部屋に置かぬのじゃ!」


 隣の王妃様の部屋からそんな声が聞こえてきた。

 無視するに限る。


「ええい、うるさい! 妾の部屋に置くのじゃ!」


 同時に、扉が開いた。豪華なドレスと宝石を身につけた気の強そうなオバサンが入ってきた。

 お爺様が敬礼をするので、俺も倣った。


「バイエルライン公、久しいな」

「はっ。王妃様に置かれましては―――」

「面倒な挨拶はよい、そなたがロックスフォール侯爵家のトーマ殿かの?」

「はい。トーマ・バルド・ロックスフォールと申します」

「トーマ殿。その冷蔵庫なるものを、妾の部屋に設置してたもれ」


 いいのかと、お爺様を見る。頷かれたので、職人に王妃様の部屋に冷蔵庫を設置するように指示する。

 王妃の部屋に国王以外の男性が入るのは、本来はいけないのだ。いけないのだけど、王妃の命令はね。(忖度)


「本当に冷たいのですね」


 冷たくなければ冷蔵庫ではない! とは言えないので、にっこり微笑んでおく。


「トーマ殿はどういったものをこの冷蔵庫で冷やしておるのか?」

「そうですね、ビールはもちろん、デザートなども冷たいほうが美味しいものが多いです」

「デザートというのは、ラインハルト王子が持ち込んでいるものかの?」

「おそらくそうかと」

「ところで、トーマ殿」

「はい」

「そのデザートなるものを妾は食したことがないと思うのだが?」


 なんで疑問形?

 これはあれか、催促ってやつか。ラインハルト君、王妃様にはお土産を食べさせてないんだね!


「こ、今度献上いたします」

「楽しみに待っておるからの」


 楽しみと言われたら、いいものをと思ってしまう。

 何がいいかなと、思考の海に溺れそうになったが、今は冷蔵庫の設置をしないといけないのだった。


 王妃様の部屋を辞して、ラインハルト君を見る。目を逸らすんじゃないよ。


「ラインハルト君」

「な、何かな?」

「王妃様にはお菓子を分けてないの?」

「恐れ多くて……」

「トーマ。ラインハルト王子は第七王子なのだ。王妃様とあまり親しくないのだろう」


 お爺様が間に入り、ラインハルト君は何度か頷いた。

 王族の中には、確執があるようだ。


 最後に厨房だ。厨房用の冷蔵庫は組み立てが必要だ。

 職人たちの組み立て風景を眺めていると、ラインハルト君が袖を引いてきた。


「何かな?」

「さっきのデザートのことだけど……」

「分かっているよ。ラインハルト君のところにもちゃんと持っていくよ」

「助かるよ」


 なんでそんなにホッとするのか。

 王族の確執はそんなに大きいのか? あまり関わり合いになりたくないな。


 冷蔵庫の組み立てが終わり、最後に皮手袋をつけた職人がスライム吸熱材を設置していく。

 スライム吸熱材はそのままだと非常に冷たい。ドライアイスとまで言わないが、マイナス六十度は危険なレベルだ。


「ラインハルト君。終わったよ」

「ありがとう。お父様には僕から報告しておくよ。バイエルライン公も今日はありがとう」


 今日のお仕事終わり。

 王妃様への献上デザートは何がいいかな。冷凍庫ならアイスクリームだけど、冷蔵庫ならやっぱりプリンが定番だろうか。

 よし、プリンにしよう!



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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トーマは王妃に気に入られたいの? なんで張りきっちゃうかな...
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