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第89話 ビール造りと冷蔵庫

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 第89話 ビール造りと冷蔵庫

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 本題の前段階の話が長くなったが、これから大麦で酒を造ろうと思う。

 もちろん、バルド領の産業にするつもりだ。

 前世で大麦の酒というと、なんだろうか? 未成年の俺でも思い浮かべるのはビールとウイスキーくらいか。

 ウイスキーに似た酒はあるようだが、ビールはない。最低でもこの国にはない。だから、ビールを造ってもいいはずだ。

 まあ、俺のような酒のことを知らない素人が造るものだから、全て酒麹にお任せ状態だけどね。いや、ビールは酵母だったか?


 そんなわけで、毎度お世話になっております、馬麦さん。


 ・馬麦(十キログラム)を大麦発泡酒用酵母(一キログラム)に変換 : 消費マナ四百ポイント


 ・大麦発泡酒用酵母 : デウロの使徒トーマが作った大麦発泡酒用酵母 粉砕した大麦に混ぜ発酵させ、ルップを加えることで香り豊かなビールが造れる また、ライツを加えることで深みのある味のビールが造れる 


 そういえば、ビールってホップがいるんだよな? それはルップやライツで代用するということか。

 ルップやライツの木は、南部の山林で多く見られる植物で、実や葉を食べる風習はない。

 異世界で前世と同じ造り方をする必要はないし、同じものがあるとは限らない。こういったもので代用できるのが分かるだけでも、変換はすごいスキルだ。


 ロックスフォール侯爵家の王都屋敷の敷地には、いくつか倉庫がある。

 その中で一番小さな倉庫を開けてもらい、そこでビール造りを開始した。

 大麦を粉砕するのが面倒だけど、産業化するときには水車を造ればいいだろう。


 最初は四斗樽が四つ(ルップの実用二つ、ライツの実用二つ)。

 粉砕した大麦と大麦発泡酒用酵母を投入して、数日待つ。

 五日後に確認したら、大麦はドロドロに溶けていた。それを攪拌し、ルップとライツの実を加え数日待つ。

 さらに五日が過ぎ、かなり液体に近くなっていたので、ここでも攪拌。それからは毎日攪拌し、五日が過ぎた。

 ここまで十五日、茶色い液体で泡がブクブクしている。あとは放置でいいらしい。

 そして二十日目、ビールは出来上がった。

 馬王よりも短い期間で造れるのがいいね。


「ビールはキンキンに冷えていたほうが美味しいと聞いたことがあるけど、本当だろうか?」


 飲んだことがないからよく分からない。

 とりあえず、一リットルの素焼きの容器に移して栓をして冷やそう。

 そういえば、素焼きの容器にもスライムゲルが使われていると言ったことあったかな?

 粘土質の土にスライムゲルを混ぜて焼くと、非常に使い勝手のいい素焼きの容器が出来上がるんだ。

 アッフェルポップや薬膳酒に使われている容器も同じものが使われている。どこにでもある土と大量に手に入りやすいスライムゲルだから、大量生産も簡単だ。

 おかげでアシュード領では、この素焼きの容器を作る産業も興っている。


 話を戻そう。以前創った冷蔵庫に、三本のビールを収納して冷えるのを待つ。


「お爺様。このお酒を飲んでみてもらえますか」


 お父様がいたらよかったのだが、アシュード領に帰ってしまった。

 今回はお爺様だけにビールの試飲をしてもらう。


「馬王か?」

「いえ、ビールという酒です」

「聞いたことがない酒だな」

「大麦を原料に造ってみました」

「なるほど、秋に大量に収穫できる大麦を原料にしたのか。さすがはトーマだ!」


 ジョッキはガラスで創り、ビール同様キンキンに冷やしておいた。

 ボトルからジョッキに注ぐとあの独特の泡の層ができていく。


「ほう、泡か。アッフェルポップとは違う厚い泡だな。それに茶色いぞ」


 その見ためにお爺様が興味を惹かれたようだ。


「冷たいな」


 ジョッキを持ったお爺様が呟く。


「冷蔵庫で冷やしておきましたので。肴には枝豆をどうぞ」


 大豆は普通に作られているから、枝豆を入手するのは簡単だ。


「枝豆?」

「大豆を青いうちに収穫し、湯がいて塩を振ったものです」

「ほう……ほんのり甘く、塩が利いて美味いな!」

「枝豆はビールと相性がいいですよ」

「では、ビールを……っ!?」


 お爺様が目をカッと見開いた。


「美味い! 苦いがこの泡のクリーミーな喉越しと苦味がいい感じに絡み合っているぞ!」


 上々の反応でよかった。

 お爺様はビールジョッキを一気に傾けた。

 一気飲みは駄目ですよ。と言ってもしたくなるものらしい。


「これはいい! だが、このように冷やすのは、難しいであろう」


 以前、俺が作った冷蔵庫は断熱性の高い素材で造った箱に、氷を入れて冷やすものだ。

 俺は変換で簡単に氷を創れるけど、氷が作れる魔法使いは少ない。

 水属性系の魔法使いなら、氷を作ることが可能だ。だけど、氷が作れるようになるレベルはそこそこ高いのだ。


「そこで魔道具を作ってみました」

「魔道具を?」

「はい。うちにある冷蔵庫を魔道具化したものです」

「ほう、それは誰でも作れるものなのか」

「職人なら作れると思います」


 魔道具化した冷蔵庫に一番大事なのは、スライムゲルだ。

 ここでも登場のスライムゲル!

 なんとスライムゲルにアイシックルという鉱石と魔石の粉末を混ぜると、吸熱効果のある素材になるのだ。


 ・スライムゲル(五百グラム)とアイシックル粉(五百グラム)と魔石粉(三十グラム)をスライム吸熱材(一キログラム)に変換 : 消費マナ百ポイント


 一キログラムのスライム吸熱材は、三立方メートルを五度まで冷やせる。また、一立方メートルだと、マイナス五度まで冷却できるものだ。

 スライム吸熱材を増やせば、最大でマイナス六十度まで冷やすことが可能なので、業務用冷凍庫も造れる。

 これはしっかりと断熱した箱の中という条件がつくけどね。


「それはいい。アイシックルはバルド領で産出する鉱石だったはずだ。これまではなんの役にも立たぬアイシックルだが、これでバルド領に工業の産業が興せるぞ」


 アイシックル鉱石は用途がなく、クズ鉱石としてこれまでは売れなかった。アイシックルに限らず、有用な鉱石だけど用途が明確でないため開発されてない鉱山は多い。そういったものを使うことで産業が興せるのは、いいことだ。

 あとは公害や事故がないように気を遣えばいいだろう。


「しかし、スライムは色々な用途があるのだな」

「スライムは万能素材ですよ、お爺様」


 他にも色々使えるけど、徐々に出していけばいいだろう。

 まずは職人に冷蔵庫と冷凍庫の生産をしてもらおう。


「お爺様。冷蔵庫も冷凍庫もスライム吸熱材が肝です。信用できる職人を手配したいと思うのですが」

「すぐにバルドの代官に連絡しよう」


 そんなわけで、うちにも大きな冷凍庫と冷蔵庫を設置した。

 冷凍庫はマグロが山積みになっている倉庫のように広いもので、スライム吸熱材をふんだんに使ってマイナス六十度の温度を維持している。

 あと、冷蔵庫に関しては、家臣や使用人たちの居住スペースにも設置した。一立方メートルなら、そこまで大きくないから個室にも設置できた。

 福利厚生は大事だよね!


 一応、十年経過するとスライム吸熱材の効果が低下していくから、交換しやすい構造になっている。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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 重箱の隅を楊枝でほじくるみたいで嫌なのですが、ビールのくだり、ビールじゃなくてエールだと思うのですが・・・  エールとビール、材料は一緒ですが、別物です。発酵のさせ方が違います。  エールは常温発酵…
酵母の効能にバルド領のみ有効をつけてないのはなぜ? 酵母を盗まれたら今度こそ色々なところで作られちゃうけど。
>ウイスキーに似た酒はあるようだが、ビールはない。 あれ?蒸留酒はないって話では…
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