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第88話 モンスター活用法

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 第88話 モンスター活用法

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 ある書状が届いた。

 差出人の名前に聞き覚えはない。すでに開封されているのは、封筒の中に毒などが仕込まれていないかの確認が行われているからだ。

 中級貴族以下の書状はこのような対策が行われている。開封は必ず執事が行い、その立ち合いに騎士が二人つく。そして上級貴族の場合は、開封に俺が立ち会うことになっている。


 書状を読んでみたらなんてことはない、以前俺やお母さんの入店を拒否したリルンフォーク・ザイドというレストランのオーナーからの詫び状だった。


 あの後、お爺様がそのことを知って、多くの貴族にリルンフォーク・ザイドでは会合を行わないことを通達した。

 この国でも指折りの大貴族であるバイエルライン公爵家から敵認定されたも同然のリルンフォーク・ザイドから貴族の足が遠のくのは当然のことだろう。


 また、神殿もシュザンナ隊長から報告を受けており、神官はあの店を使わなくなった。

 さらに、神殿経由で仕入れていたアッフェルポップがまったく入らなくなったらしい。


 俺はこうなったことに罪悪感を感じなかった。全席予約席だというなら、どんな客にもそう言って飛び込みをお断りすればいい。客を選ぶのなら、最初からそう言えばいいのだ。俺たちの服がみすぼらしいから入店をお断りしますと正直に言ってくれればムカつくけど納得はする。


 そういった意味で誠実な商売をしてなかったリルンフォーク・ザイドの現状はなるべくしてなった自業自得なものだと俺は思う。

 そんなわけで、この詫び状は無視することにした。が、あることが頭に浮かんだ。さっそく実行に移そう。





 今日も貴族の診察を行った。これまで何人も診てきたが、まったくの健康体の人は初めてだ。


「ゲルラッハ伯爵は健康です。現状、病気には罹っていませんよ」

「そうですか! 診ていただき、感謝します!」


 ゲルラッハ伯爵は四十歳の働き盛りで、多くの人がかかっている水虫や虫歯さえなかった。


「トーマ殿、感謝いたしますぞ!」

「いえいえ。このまま規則正しい食事と生活を心がけてください」


 ゲルラッハ伯爵はこの後お爺様と会談があると、部屋を出ていった。


 薬を創らなくてよくなったし、今日は時間が余った。

 お父様のアシュード領で造っている馬王、アッフェルポップ、そして薬膳三酒の販売は好調だと聞いている。以前から増産を繰り返しているが、それでも追いつかないらしい。

 そこでバルド領でも酒を造ろうと思ったのだが、そこで数カ月前のことを思い出した。


 バルド領は元々小麦の一大生産地だ。だが、ここ二十年ほどは小麦の生産量が徐々に落ちているとお爺様から聞いている。

 そこで調べてもらった報告書がここにある。それによれば、同じ畑で小麦を毎年作っていたのだ。これはおそらく連作障害だと思われる。

 畑を休ませずに小麦ばかり作っていると、病気が起こりやすくなり、収穫量が低下するのだ。

 お爺様には植える穀物を大麦と大豆に切り替えてほしいと頼んだ。だから、今年の収穫物は半分が大麦で半分は大豆になる。

 大豆は栄養価が高いし、豆料理もあるから手をつけない。問題は大麦だ。

 大麦は食料になるが、小麦ほどお金にならないのだ。食料としての価値がこの国では低いからだ。

 昔はバルド領でも小麦と大麦を二年間隔で交互に作付けしていたらしいが、あの御屋形様が小麦だけを生産しろと命じたらしい。本当にロクなことをしないな、あの人。


 幸いなことに、バルド領で生産される大麦を酒造りに使ったとしても、この国は食料不足にならない。

 元々穀物の自給率がかなり高い国なので、国全体が不作にならない限りはなんとでもなる。

 結構な量の穀物を輸出しているんだよね、この国。


 バルド領で小麦が収穫されないと領民が貧しくなるのだけど、それは減税で対応する。

 元々ライトスター家が治めていた時は、かなり領民から搾り取っていたようだから大麦の生産でも昨年よりはよくなるはずだ。


 ロックスフォール侯爵家の財政にとっては痛手だけど、俺は貧乏性で散財してないからなんとかなるだろう。


 今回は大麦を活かす酒を造ろうと思っているが、その前に肥料を作っておく。

 小麦を連作し力が衰えた土に少しでも力を戻すための肥料だ。


「お爺様。肥料をバルド領に送ってもらえますか」

「肥料か。任せなさい」


 お爺様は二つ返事で受けてくれた。ロックスフォール侯爵家とバイエルライン公爵家が所有する船をフル稼働させて肥料をバルド領へ輸送してくれたのだ。


 肥料はバルド領だけでなく、お爺様のアクセル領にも運ばれている。

 その効果があったようで、バルド領の大麦の生育は順調で今のところ病気も発生していない。アクセル領も同様で順調に育っているらしい。


 アシュード領にも少し運ばれたけど、元々アシュード領は穀物生産はほとんどない。それでもまったく作ってないわけではないので、少しでも生産量が増えればいいなと思っている。


 ・モンスターの一部(一キログラム)を万能肥料(十トン)に変換 : 消費マナ五百ポイント


 ・万能肥料 : デウロの使徒トーマが作った肥料 どんなに痩せこけた田畑でも地力を回復させる


 変換元の素材は、それこそ馬麦でも雑草でもいいが、一番よかったのがモンスターの素材だった。


 モンスターの素材はダンジョン探索で大量に手に入る。

 変換・レベル六で解放された、異空間倉庫で持ち帰るから荷物にもならない。

 持ち帰ったモンスターは、ベンとシャーミーと俺で三等分するため、三分の一は売らずに残っている。それを使っているのだ。


 侯爵ともなると、モンスターを売らなくてもお金に困ることはない。それに変換で創った宝石などを売っていることで、使い切れないほどのお金が手元にある。

 だから、モンスターの素材はずっと異空間倉庫に入っていた。

 モンスターの素材を変換元に使うと、マナ消費も抑えられるから大量生産に丁度いいんだ。

 それに異空間倉庫の在庫が減って、スタミナが回復するメリットもあるからね。


 さて、ダンジョン探索のほうだが、目的のアイテムはまだ見つかっていない。レベルは緩やかに上がっており、現在二百八十五になっている。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
店側に非あったか…?
あの店はどうでも良いんだけど、全席予約の店でも常連向けに優先席を用意してる店は普通にあるよね。 そもそも神殿騎士が護衛についてる人物を、みすぼらしいって理由で断るか? ってなると……
sometimes the protagonist so unreasonable
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