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第83話 デウロ教の興り

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 第83話 デウロ教の興り

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 バルド領から薬物中毒者が送られてきた。

 酷い有様だ。自分の領民をこんなにするなんて、ライトスターというのは本当にどうしようもない家だったのが分かる。潰して正解だ。


 ・ベッケナン(十キログラム)を麻薬解毒薬(十キログラム)に変換 : 消費マナ八百ポイント


 ・麻薬解毒薬 : デウロの使徒トーマが作った神薬 全ての麻薬の毒素を解毒する 重症者は三十グラムを、軽症者は十グラムを服用させることで完全に解毒する


「さすがはデウロ神! さすがはトーマだ!」

「デウロ神様とトーマ様のおかげで、この者らの人生は再び光を浴びることができることでしょう」


 重症の薬物中毒者に三十グラムの麻薬解毒薬を服用させたら、説明通り一日で完全に解毒された。

 ステータスから重度の薬物依存症の表記が消えているのを確認したお爺様とダルデール卿はまさに歓喜した。


「これはまさに神薬です! 素晴らしい! デウロ神様とトーマ様の奇跡に感謝を!」


 ダルデール卿は祈り出してしまった。デウロ様に感謝の祈りだったらいくらでもしてください。


「この神薬をすぐにバルド領に送る手配をする。すまないが、一万人分を作ってもらえるか」

「はい。すぐに用意します」

「バルド領の民はデウロ神とトーマを敬い崇めることだろう!」


 崇めるのはデウロ様だけでいいんですけどね。デウロ様と俺はセットのようなものらしいから、仕方がないか。





 覇天のビシュノウと戦ったことで、レベル二百七十七まで上がった。さすがはレベル三百オーバーだ。感謝はしないが、経験値はしっかりもらっておこう。


 その数日後、お母さんが産気づき無事に女の子を産んだ。

 お父様もアシュード領から王都入りしており、妹にエルゼと名づけた。


「あばばば~」

 まだ産まれたばかりで目も見えないと思われるエルゼに、お爺様はデレデレしながら顔芸を見せている。


「あなた、エルゼが疲れてしまいますよ」

「む、そうか……」


 名残惜しそうにお爺様はエルゼから離れた。

 エルゼの頬っぺたはとても柔らかそうだ。俺がお兄ちゃんだぞ。ツンツン。


 ジークヴァルトを抱っこして、エルゼを見せてあげる。


「ぼくのいもうと?」

「俺とジークヴァルトの可愛い妹だぞ」

「うん。かわ《《いいいいいい》》もうと!」


 なんか「い」が多いけど、可愛いから問題なしだ!






 今日はリッテンハイム男爵の屋敷にお邪魔している。

 養女になっているタリアもあの時の騒動で、怪我をした。といっても、彼女の場合は逃げる時に転んでしまい、擦り傷程度で済んでいる。不幸中の幸いだ。


「トーマ!」


 タリアは相変わらずタックルのように抱きついてくる。

 騒動や怪我の影響はなさそうで、よかった。


「今日のお菓子は何!?」

「タリア! はしたないわよ」

「えー、トーマのお菓子は美味しいんだものー」

「まったく貴方は……」


 ルイスさんが困り果てている。タリアはいくつになってもタリアだな。変わらずにいてくれて俺は嬉しいけどね。


「今日はレアチーズケーキだよ」

「まあ、チーズのケーキなの!? どんな味がするのかしら!?」


 お父様はリッテンハイム男爵と話があるので、俺はタリアとルイスさんと共に中庭へ向かった。


 お茶をもらい、持ってきたレアチーズケーキを出すと、タリアが目をキラキラさせる。


「美味しい! チーズの風味と酸味、そして甘過ぎない甘味がいいわ!」


 それはよかった。二個食べていいからね。

 タリアは栗鼠のように頬を膨らませてレアチーズケーキを食べた。

 その光景に、ルイスさんは頭を抱えていた。


「アリューシャさんと赤ちゃんは元気?」

「はい。産後の肥立ちもよく、エルゼもしっかりお乳を飲んでいます」

「それはよかったわ。落ちついたら遊びにいくと伝えておいてね」

「はい。お母さんも喜ぶと思います」





 屋敷内のとある部屋。デウロ様の像が安置されているこの部屋に、五人の人に集まってもらった。


 一人は神殿騎士団員シュザンナ・コールラウシュ(二十六歳)。誰もが知っている俺の護衛隊長だ。


 一人は神官ブルーノ・バルリング(二十九歳)。彼はうちの屋敷につめている神官で、回復の腕は一級品だ。


 一人はロックスフォール侯爵家騎士団員マイエンヌ・エルグリード(二十五歳)。バイエルライン公爵家から移籍してきた若き騎士で、俺がアクセル領に滞在した時に娘さんが高熱を出して倒れた際に変換で創った薬をあげてからのつき合いになる。

 娘さんはもちろん無事で、うちの兵士用の長屋で元気に暮らしている。


 一人はバイエルライン公爵家騎士団員バラス・シュターデン(三十三歳)。彼も俺がアクセル領にいた時に知り合った騎士だ。

 お婆様の護衛なので、お婆様がうちの屋敷で過ごしているため滞在している。彼は酒好きで、馬王をたまに贈っていたら、デウロ様の信徒になっていたのだ。


 一人はバイエルライン公爵家暗部ジョー(年齢不詳)。ジョーとは初めて会ったけど、なぜかデウロ様の信徒になっていた。彼に何があったかは不明だが、デウロ様の信徒なのだから悪い人ではない(確信)。


「皆さん、集まってくださり感謝します」


 俺は感謝の言葉から入った。


「ここに集まってもらった皆さんは、デウロ様を信仰する仲間だと思っています。それに間違いはないですか」

「「「「「間違いありません!」」」」」

「その言葉、デウロ様もお慶びのことでしょう」


 覇天事件の直後、俺はお爺様とダルデール卿にデウロ神を崇める人を集めてほしいと頼んだ。

 そして集められた人の中に、この五人がいた。


 彼ら彼女らの称号には、しっかりとデウロ神の信徒とある。

 そんな彼らには、これからデウロ神の信徒を増やしてもらうのと、カトリアス聖王国への嫌がらせをしてもらうつもりだ。


「これからデウロ様から恩寵をいただきます。目を閉じ、一心にデウロ様に祈ってください」


 五人は俺の言葉を聞き、目を閉じて祈り出した。

 そこで俺は変換で五人のランクを一段階引き上げた。


 シュザンナ隊長はランクBからランクAになり、加護が神罰騎士に変化した。


 神官ブルーノはランクAからランクSになり、加護が神意の聖者に変化した。


 ロックスフォール侯爵家騎士団員マイエンヌはランクBからランクAになり、加護が護国騎士に変化した。


 バイエルライン公爵家騎士団員バラスはランクAからランクSになり、加護が光明の剣聖に変化した。


 バイエルライン公爵家暗部ジョーはランクBからランクAになり、加護が無音のゆがみに変化した。


「新しい力を得た貴方たちは、デウロ様のためにその命を捧げてもらいます」

「「「「「はっ!」」」」」

「まずはデウロ様の威光をあまねく者に教え広げるために、食事の前と後に『デウロ様に感謝を』と言葉にするように教え導くのです」


 俺はもう躊躇しないと決めた。

 デウロ様の信仰心を増やすために、神の奇跡ランクアップを五人に与えた。これによってデウロ様の名が広く伝わることだろう。


 そのためにちょっとしたことから、デウロ様に感謝することを覚えさせる。

 俺は多くの食料を変換で創った。バルド領やアシュード領、アクセル領で貧しい人に治水や開墾などの仕事を与え、食料を報酬として与える。これをすることで、デウロ様を信仰する人が現れるだろう。さらに、食事の前後に『デウロ様に感謝を』と言葉にするのだ。そうすれば、また仕事と食料をもらえると思わせる。

 欲からくる信仰心でもいいのだ。とにかくデウロ様を敬い、ニルグニード教から信仰心を奪うことができればいいのだから。


「そして、デウロ様に仇するカトリアス聖王国のその地盤を崩すのです」

「「「「「お任せください!」」」」」


 そして、お母さんを貶めたカトリアス聖王国は必ず潰す。何年かかっても、元クラスメイトたちが召喚されようとも、必ず潰す。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
今までが温すぎたからね。 勇者召喚までに勇者の地位や権威を地に落とし、連中が自由に出来なくする。 そのうえで救いたいクラスメイトと潰したい奴を選別し、クズ国と一緒に滅ぼす。 これくらいやっとかないと目…
元クラスメイトたちが召喚されようとも、必ず潰す。 ここが大事ですね。 特定のためには手段を選んでるようでは達成できませんからな。
この調子でクラスメートが召喚される頃には聖王国がクソザコ弱小国になっていたら草
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