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第75話 三次予選突破

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 第75話 三次予選突破

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 魔法大会の三次予選の日になった。

 お母さんのお腹もかなり大きくなっており、もうすぐ生まれそうだ。

 魔法大会に出ている間に、赤ちゃんが生まれたらどうするんだよと思ってしまう。

 だから、早く終わらせてお母さんについていてあげるんだ!


 さて、俺の出番は三番目だ。

 試合前には、魔道具のチェックが行われる。

 魔道具は認められているが、マナ量を補強するようなものは禁止だ。魔道具は使用者のマナを消費するものしか使ってはいけない。これが魔法大会のルールである。

 身体検査を受け、持ってきた魔道具のチェックが行われ、問題なしと判断をいただいた。


 三次予選は六十四人で行われ、二回勝てば本戦出場になる。

 もちろん、上級貴族は潰し合わないように忖度された組み合わせになっているし、二次予選を勝ち上がってきた生徒の中にいる中級貴族も一回目はできるだけ上級貴族と対戦しないようになっている。


 組み合わせ表を見ると、俺の相手は下級貴族の男子生徒だ。中級貴族に勝って三次予選に上がってきたのだから、かなりの鍛錬を積んでいると考えていい。


 俺の出番になり、会場に入っていく。

 観客席は生徒で埋まっていた。ちょっと意外だった。


「トーマー!」


 タリアが観戦にきていた。二年生の試合を観なくていいのか?

 とりあえず、手を振っておく。これをしておかないと、後で何を言われるか分からない。

 上級生が結構混ざっている。サークル活動があるらしいから、一年生を物色しているのかな。


「これより一年A組トーマ・バルド・ロックスフォール侯爵対一年J組アーレント准爵子息エクムントの対戦を行う。両者開始位置へ」


 審判教師の指示に従い、十メートルくらい離れた場所に移動した。

 エクムント君は純粋な魔法使いらしく、制服の上にマントを羽織り、三十センチくらいの扱いやすい杖を装備している。

 対する俺は制服と自重の弓というものである。舐めているわけではないが、さすがに自重三装備をフル装備するのはどうかと思った。


「勝利条件は、相手を競技場から落とすか、戦闘不能にするか、私が戦闘継続不可能と判断するか、砂時計が落ちきった時に優勢だった生徒である。また、私が試合終了を宣言した後の攻撃は反則とする。お互いによいな」


 闘技場は直径二十五メートルの円形だ。俺もエクムント君も頷いて了承する。


「私の合図で開始とする。両者構え!」


 エクムント君が杖を俺に向けてくる。

 俺も自重の弓を地面と平行に構える。


「はじめぇっ!」


 エクムント君は開始の合図と共に、詠唱を始めた。


 「火の大神フレイアス様に祈りを捧げます。ファイアアロー!」


 炎の矢が放たれた。俺は一歩左に移動し、ファイアアローを躱す。


 「火の大神フレイアス様に祈りを捧げます。ファイアアロー!」


 ファイアアローはシャーミーのライトアローよりも速度が遅い。

 スローモーションのように見えることから、当たることはないだろう。


 八回目のファイアアローを躱したところで、エクムント君の表情が変わった。

 マナの使いすぎで倦怠感が彼を襲っているのだろう。


 俺の実体験だが、マナは二割を切ると倦怠感を感じるようになる。そして一割を切ると動きを阻害するくらいの怠さがある。

 俺は赤ん坊の頃からマナを使い切っていたから、そういう耐性のようなものがついたので大丈夫だが、彼はそうじゃないらしい。


 彼はまだ諦めていない目をしている。俺もその目に応えよう。

 自重の弓を引く。この自重の弓にも弦はないが、引けば矢が現れる。


「くっ、ま、負けない! 火の大神フレイアス様に祈りを捧げます。ファイアアロー!」


 雷の矢がファイアアローを迎え撃つ。

 ファイアアローは飛散したが、雷の矢は貫通してエクムント君に命中した。

 自重の弓の効果で、エクムント君はアバババと感電して麻痺した。


 変換でエクムント君のライフを見ていたが、ライフは一ポイントも減ってない。

 髪の毛がパンクになって、頭から煙を立ち昇らせ倒れたのにライフが減らない怪。


 審判の教師が、倒れたエクムント君の状態を確認する。


「勝者トーマ・バルド・ロックスフォール侯爵!」


 歓声が上がり、その中にタリアの声が聞こえてきた。


「キャーッ、トーマーッ!」


 タリアお姉ちゃん、隣の男子生徒の頭をバンバンッ叩くのはやりすぎだよ……。




 三次予選の二回戦も勝ったので、早速屋敷に帰った。


「お婆様、お母さん、ジークヴァルト、ただ今帰りました」

「お帰りなさい、トーマ」

「試合はどうだった?」

「にーにー」


 ジークヴァルトを抱っこして、本戦出場を決めたことを報告した。


「トーマだから心配してなかったわ」

「さすがは私のトーマだわ!」

「にーにー」


 本戦は明後日に行われる。十六人が出場し、そこで決勝出場者の二名が決まる。つまり、勝ち上がると三回戦うということだ。


 そして最終日に三位決定戦と決勝戦が行われ、準優勝、三位、四位がここで決まることになる。


 また、武術大会と魔法大会で優勝した生徒同士でエキシビションマッチが行われるのだ。




 ▽▽▽ Side カール・アクセル・バイエルライン公爵 ▽▽▽


 覇天が動いているのは掴んでいるのだが、目的が分からぬ。

 当初は学園が標的かと思うたが、王城にも潜入を試みている。他にも役所なども狙われている可能性がある。

 こうなると、的が絞れない。暗部は無限にいるわけではない。できるだけ増員しているが、的がしぼれぬといかんともしがたい。

 この三十年ほどは覇天にやられっぱなしだ。忸怩たる思いだが、暗部の増員は簡単にできるものではない。今の人員でやりくりしなければならぬのだ。


 十六、七年ほど前はかなり盛り返したが、その後に大打撃を受けた。

 覇天との闘争は我が暗部の負担になっているが、こればかりは引くわけにもいかぬわ。


「優秀な者をもっと増やせれば……」


 ないものねだりだな。

 暗部の者には、特殊な属性や加護が必要だ。増員が簡単でない理由がここにあるのだ。


 愚痴っても仕方がない。密度は薄くなるが、今は全てをカバーするように配置するしかない。

 暗部の強化を急がねば……。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
タリアが可愛い
自重の弓 初登場の時は話の流れから「じちょう」と読めたが、 自重トレーニングに興味があるため、どうしても 「じじゅう」と読んでしまうので、 自分の重さの弓?となってしまう。
作者様!題名即落ち、止めろー(笑) 「突破」まで書くなー(笑)
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