第71話 登校初日終了
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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第71話 登校初日終了
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学園生活の初日が終わり、担任と副担任が教室を出ていく。
俺の陰口を言う生徒もいたが、特に波乱などない一日だった。
あとは帰るだけだ。と思って立ち上がろうとしたら、ラインハルト君が声をかけてきた。
「トーマ君。この後、お茶でもしないかい」
男からナンパされても嬉しくはないと、実感した。
「クラウディア嬢らも一緒なんだけどさ」
ラインハルト君の後ろにクラウディア嬢と男女四人が立っていた。
これ、知っている。派閥ってヤツだ。
現国王は九男六女と子だくさんで、次期国王の座を子供たちが争っている。
王座争いは、主に三人で行われている。
一人目は第一王子エーレンフリート、二十四歳。
長男が家を継ぐのは普通の流れだけど、王家はランクが高い人が国王になることが結構あるから、長男でも気は抜けない。
ただ、エーレンフリート様はランクAだから、決してランクが低いわけではない。
二人目が第四王女エリス、十三歳。
長子でもなければ、長女でもないエリス様が王位継承争いをしているのは、彼女がランクSだからだ。
そして三人目が第七王子のラインハルト、十一歳である。
目の前で貴公子スマイルをしている爽やか系イケメンである。
彼もランクはSで、第一王子よりもランクが高い。
この三人が王位継承争いを引っ張っているのである。
長男のエーレンフリート様のランクがAと、基本的には高いのだからそこまで揉めなくてもいいと思うのだけど、そういうわけにはいかないようだ。
こういった理由から、次期国王候補たちの派閥ができている。
ただ、この国の王位争いは、足の引っ張り合いではなく、いかに実力を見せるかということになる。
この国の初代国王は異世界から召喚された勇者だった。
他の王子・王女の足を引っ張って国王になっても、勇者の血がそれを受けつけないらしい。卑怯なことや悪辣なことをすると、子孫のランクに響くのだとか。
ライトスター家にも王家の血、つまり勇者の血が流れていたことで、御屋形様の悪行が子孫のランクに影響していた。
ジャイズがランクFの農民だったのは、そういった理由があったらしい。
そのおかげで、ジャイズに暴力を振るわれていた俺は、大怪我をせずに暮らせたのだから、お屋形様には感謝……なんかするわけがない。
あと、俺は例外だが、庶子はジャイズに比べるとランクが高い。庶子のほうがランク的には優秀なのに、あの家は優秀な人材を放逐し、低ランクたちで家を継承していく方向で動いていた。今回のことで家を潰さなくても、いずれ限界がきて崩壊したかもしれないね。
お爺様は勇者の血のことは秘密だと言っていたから、ライトスターの人たちはそのことを知らなかった可能性がある。
色々思考を巡らしたが、これを断ることはできるのか……。
「……喜んで」
俺は引き攣った笑みを浮かべ、そう答えた。
場所をサロンに移した。
「僕はデリンガー伯爵家三男のブルーノです。よろしくお願いします」
「俺はアイクホルスト伯爵家長男のダニエルだ、よろしくな」
「ごきげんよう、ホルツヴァート伯爵家三女のデボラですわ」
「わたくしはノイベルト侯爵家長女のレーネです。今後は親しくしてくださると、うれしいです」
ブルーノ君は細身で藍色の髪で、優しそうな青い目をした少年だ。
デリンガー伯爵は財務系の重鎮だったはずだ。
ダニエル君は茶髪茶目の大柄な少年で、口調が結構砕けている。
アイクホルスト伯爵家はクラウディア嬢のバルツァー伯爵同様、軍部の重鎮だったはず。
デボラ嬢は淡いピンクの髪で、クリクリで橙色の大きな目をしていて愛嬌がある。
ホルツヴァート伯爵は内務系の重鎮だったはず。
レーネ嬢はサラサラの銀髪と金色の瞳、凛とした佇まいが神々しく、近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
ノイベルト侯爵家は西部の雄だ。かなり大きな家でクルディア王国最高評議会の評議衆のはず。
どの家もお爺様から聞いていた、ラインハルト君の派閥で間違いない。
俺、無派閥でいたいのだけどなぁ。
「トーマ・バルド・ロックスフォール侯爵です。以後、お見知りおきください」
四人は初めて口をきく俺に挨拶をしたので、俺も礼儀として自己紹介をした。
「親睦を深めたことだし、お茶を飲んでくれたまえ」
今のは自己紹介や挨拶だよな? これで親睦が深まったのだろうか? ラインハルト君の基準ではそうなるのか?
お茶会での会話は、近況を話し合う感じだった。これこそ親睦を深める感じのお茶会だと思う。
「俺は昨年末から忙しくてダンジョンに入る暇もなかった感じですね」
「あら、トーマ様はダンジョンに入っているのですか?」
レーネ嬢が驚いた感じの質問をしてきた。
そういえば、皆はあまりレベルが高くなかったっけ。まだダンジョンを入っていないのかな。
「アシュード領にダンジョンができたのを機に、入っていますよ」
「俺も最近ダンジョンに入るようになったぜ!」
ダニエル君は力瘤を作るポーズをした。
「トーマ様はいつからダンジョンに入っているのですか?」
「えーっと……七歳の時からかな」
「まぁ!?」
レーネ嬢の質問に答えたら驚かれた。
なんで驚くのかと思ったが、ラインハルト君たちも驚いていた。
「七歳からだなんて、危険じゃなかったのですか?」
「ダンジョンはどこも危険ですよ。安全なダンジョンなんてないでしょ?」
「それはそうですが、七歳ですよ」
あー、それもそうか。七歳といえば、小一だもんな。モンスターと戦うのは早かったかもしれない。今さらだけど。
「アシュード領は危険なモンスターが多いので、ダンジョンの低層のほうがモンスターは弱いのです」
それに俺はレベルを上げるという明確な目標があるから、モンスター狩りをするのは当然と言えるだろう。
「アシュード領は、それほど危険な場所なのですか?」
レーネ嬢はさっきから質問が多いね。俺のことを探っているという感じかな。
「冬になると、メタルベアのような危険なモンスターが人里近くに現れますから、危険は多いと思います」
お父様が守っているから、俺がアシュード領にいた時はモンスターに襲われたことはないけど。
「あ”~~~づがれだ~~~」
馬車の中で伸びをして、気疲れを吐き出すように声を出した。
俺は社交的じゃないから、お茶会はとても疲れる。これからこういう機会は増えると思うから、慣れていかないといけないと思いつつ肩を揉む。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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