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第70話 一年A組

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 第70話 一年A組

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 俺は一年A組になった。

 ラインハルトとクラウディア嬢もA組だ。

 どうやらA組は上級貴族が集められているらしい。

 上級貴族は伯爵以上で、生徒の数は十五人だった。

 授業中、従者は教室の後方で待機をする。生徒の数より従者の数が多い……。


 教室はそれこそ二百人くらい入る広さがあり、従者が全員入ってもスカスカだ。





「私はアストリット・グーゲルです。一年間、皆さんの担任として指導をします」


 担任は三十歳くらいの赤毛の女性で、性格がきつそうという印象を受けた。


「副担任のフィリーネ・ハウスドルフです」


 副担任は二十二、三歳くらいの薄紫色の髪の女性で、おっとりした印象を受ける。


 クルディア王国では、平民に家名はない。だから、家名がある時点で、共に貴族家の出身なのが分かる。

 俺と取引がある宝石商のティファス・ブルガルさんには家名がある。彼は一代准爵だ。


 一代准爵というのは言い方は悪いけど、お金で爵位を買った人のことを言う。多くは商人だけど、お金持ちが爵位を買うこともある。

 その名の通り、爵位は子孫に継承されない一代限りの貴族ということだ。

 一代准爵でも貴族だから、その子供は貴族の子供になる。だから学園に通う際も貴族枠に入る。


「今日は初日ですから、学園内の注意事項をお伝えし、その後は皆さんに自己紹介をしてもらおうと思います。まずは注意事項です」


 グーゲル先生が注意事項を読み上げると、ハウスドルフ先生が黒板にそれを羅列していく。


 ・学園内では節度を持った行動をするように

 ・爵位によって立ち入ってはいけない場所がある

 ・爵位は授業や成績には適応されないが、学園全てに適応されないものではない


 簡単にはこんな感じになる。

 要は学園内で自分または親の爵位はしっかり守りなさいということだ。

 そして、爵位イコール成績ではないと。

 学園だから、爵位は関係ないということはないのだ。


「それでは、名前を呼ばれた生徒は、立って自己紹介をしてください。最初はラインハルト王子、お願いします」


 最初はラインハルト君だ。しかし、教師でも「王子」をつけるのか。

 彼はスッと立ち上がり、前に出た。美しい立ち姿だ。


「第七王子のラインハルト・クルディアだ。初めての生徒もいるが、これからよろしく頼み置く」


 威厳があり、簡潔な自己紹介だった。さすがは王子様だね。


「次はトーマ・バルド・ロックスフォール侯爵、お願いします」


 二番目に俺の名が呼ばれた。緊張する!


「トーマ・バルド・ロックスフォール侯爵です。よろしくお願いします」


 俺が自己紹介すると、ざわついた。

 最近侯爵になったから、そういう点で話題性はあると思う。

 ひそひそと聞こえてくる声に、「使徒」とか「成り上がり者」とか「奴隷の子」と聞こえてきた。

 使徒とか成り上がり者はその通りだけど、お母さんを「奴隷」と侮辱する奴は許さない。一歩間違ったらこいつらもそうなることを、思い知らしてやりたくなる。


 気分は悪いけど、席に戻った。

 その後も自己紹介は続いた。どうやら爵位の順で自己紹介をしているようだ。


「バルツァー伯爵家のクラウディアと申します。父は軍務卿を仰せつかっております。これから五年間、皆様と共に勉学に励みたいと思っております」


 王族一人、侯爵四人、伯爵十人という比率だ。

 クラウディア嬢は七人目で自己紹介をした。伯爵家の中では二人目だ。

 爵位が伯爵の中でも、父親の役職で順番が決まるようだ。


 生徒たちのレベルはあまり高くなかった。

 ラインハルト君がレベル四十三で一番上だ。

 しかも、ラインハルト君のランクはなんとSで、加護は迅雷の英雄だった。


 クラウディア嬢はランクA、加護は光の魔導師、レベルは三十八だった。

 その他の生徒もレベルは二十から四十だったが、ランクはDからAと幅広い。


 自己紹介後は各科の説明を聞いた。

 俺の教養二科は基礎学科の国語、算術、王国史を受ければいい。選択科目もあるが、それは個人で好きに選べばいい。基礎学科さえしておけば、教養二科は問題ない。

 騎士科と魔法科は五科目、教養一科は六科目が基礎学科になる。


 一応、この学園にも学年の首席という制度がある。各学年で最も成績がよかった生徒を毎年選ぶ制度だ。

 仮に俺が首席を取ろうとすると、全部で六科目を受講しないといけない。

 ただし、卒業するだけなら基礎学科だけで構わない。教養二科はそういう学科だ。首席など最初から狙わない人たちが教養二科を選択する。


 担任と副担任からの説明が終わると、今度は校内を実際に案内してもらうことになった。

 受講する科目ごとに教室が違う。国語、算術、王国史の教室は並んでいるから、簡単で助かる。


 その後、(無駄に)広い学園内を連れ回された。俺、最初のところで離脱で良かったのに……。


「ここは騎士科の訓練施設です」


 まるでコロッセオのような楕円形の訓練場は、各学年用がある。


「最後は魔法科の訓練施設です」


 魔法科用の訓練施設は、騎士科の訓練施設より大きかった。面積でいうと三倍くらいある。

 この訓練施設も各学年用があるのか……。無駄に金がかかっているな、この学園。


 さんざん連れ回されて、やっと教室に戻ってきた。

 同級生たちはすごいもので、まったく疲れた顔を見せない。

 俺は辟易してますよ。


「さて、今日の最後ですが、これから授業の時間割と選択科目の記入用紙を配ります。選択科目は三日以内に提出してください」


 もらった時間割を見たが、俺が受ける基礎学科は午前中に集中している。しかも火と風曜日にしかないのだ。


 この国では一週間は六日あって、火・風・水・土・光・闇曜日がある。

 世間では闇曜日は休日で、学園も闇曜日が休みになっている。だけど、俺は火曜日と風曜日の二日だけ学園にくれば、あとは登校する必要がない。

 週休四日……これでいいのだろうか。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
侯爵家当主に対して「奴隷の子」呼ばわりとか… その場で無礼討ちされてもおかしく無いレベルの蛮行なんだよなぁ 発言者が王族でも決闘の理由として成立する侮蔑だ
侯爵自身に奴隷の子って ヤバいやついるな 不敬罪だな
領地持ちの侯爵になったのに教養二科のままでいいの? 最初は弟に騎士爵の当主譲るつもりだったからそれでよかったかもしれないけど、もうその当時とは事情が変わってるわけで。 事実上親から独立した貴族になっ…
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