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第69話 初登校日

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 第69話 初登校日

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 さっそく冷蔵庫を作ってみた。

 断熱性が高い入れ物に氷を入れるだけの簡単な構造のものだ。昔の冷蔵庫のようなものだね。

 プリンを冷やしたけど、いい感じだ。

 なんでこんな簡単に造れるものが、この世界にはないのだろうか。と思うかもしれないが、俺は変換で簡単に氷を創れるけど氷魔法を使える魔法使いが極端に少ないのが原因だと思っている。


「冷蔵庫には腐りやすいものを入れておくと、少し長持ちするようになりますよ」


 冷蔵庫の説明をしていて思い出してしまった。

 アイスクリームが食べたい!

 バニラビーンズは手に入らないが、創ろうと思えば変換で簡単に創れるはずだ。創らないけどね。


「出来てしまった……」


 美味しそうなアイスクリーム!


「シャーミー。これを食べてみて」

「これは何?」

「アイスクリームっていう甘味だよ」


 バニラビーンズは使ってないけど、立派なアイスクリームだ。


「甘味なのね……っ!? これ、美味しい! とっても冷たいけど、この甘さと冷たさがすごく合ってるわ!」

「おい、俺にもくれよ」

「ベンの分もあるよ、はい」

「どれどれ……おおおおお! これ、いいな! いくらでも食えそうだ!」

「「「トーマ様!」」」


 はいはい、料理人たちも食べたいんだね。どーぞ。


「「「美味い!」」」


 その後、メイドたちもやってきて、皆でアイスクリームを食べた。

 メイドたちはシャーミーと一緒になってキャピキャピしていた。女子は甘いものが好きなのがよく分かる光景だったよ。


「トーマ。お母さんにはないのかしら?」

「もちろん、お母さんとジークヴァルトの分もあるよ」


 二人はアイスクリームを食べた。


「おいちい!」


 ジークヴァルトの口の周りについたアイスクリームを拭いてあげる。


「これから毎日このアイスクリームを食べたいわ」

「毎日食べたら、太りますよ」

「う……」


 そんなに落ち込まないでくださいよ。





 さて、今日は学園の初登校日だ。

 入学式はない。そういった習慣はないようだ。


 ロックスフォール屋敷はかなり遠かったけど、この屋敷は貴族街の南側にあるため、学園にかなり近くなった。


「トーマ。いってらっしゃい」

「はい。いってきます。お母さん」


 お母さんはアシュード領に帰らず、このまま王都で子供を産むことになっている。産み月は五月らしい。

 お父様は単身赴任……は言い方がおかしいか、一人でアシュード領に帰っている。


 王都にはお婆様もいるから、安心して子供が産めるというのが理由だ。本当はお婆様がどうしてもとお願いしていたけど。

 お婆様は俺とジークヴァルトの産まれる時に立ち会えていない。今度の子は立ち会いたいと言っていた。


「トーマちゃん。気をつけてね」

「はい。お婆様」


 お婆様はこの屋敷で過ごすことが多い。週の半分をうちで過ごし、身重のお母さんの代わりに屋敷の中のことを仕切ってくれているのだ。


「にーに」

「いってくるよ、ジークヴァルト」

「あーい」


 ジークヴァルトは可愛いな。ほっぺがムニムニだ。


 貴族馬車にシャーミーとメイドのララと共に乗り込む。

 ララはお母さんが王都にやってくる時に、一緒にやってきた。今は俺のところで専属メイドをしてくれている。

 最初に会ったのは彼女が十歳の時だったか。あの頃は可愛い少女だったけど、今年で十五歳のララはかなり大人びている。


 周囲には護衛のシュザンナ隊長以下神殿騎士たち、ロックスフォール侯爵家の騎士たち、そしてベンが固める。

 これは護衛ということもあるが、上位貴族の侯爵家には従者枠が六人あるから、その人員も含まれている。


 正直言って、従者はいなくてもと思う。それを言うとお爺様にもダルデール卿にも駄目出しされるけど……。


 従者はベンとシャーミーとララ、あとは神殿騎士が二人、ロックスフォール侯爵家から一人になる。

 そもそもベンとシャーミーもロックスフォール侯爵家の騎士なんだから、比率としては侯爵家のほうが多い。


 ガタゴトとゆっくり王都内を進むと、学園が見えてきた。

 ここら辺にくると、通学用の馬車が多くなる。


 学園内で馬車を止める場所も、身分によって違う。

 門を入ってすぐに平民用、その先に下級貴族用、さらに中級貴族用、そして上級貴族用の降車場は最も奥になる。しかも広い。


 学園には上級貴族用のサロンがある。

 まだ少し時間があるので、ララにハーブティーを淹れてもらい飲んでから教室に向かおうと思う。なんと優雅な時間なのか。


「やあ、トーマ君」


 声をかけてきたのは、ラインハルト王子だ。


「ラインハルト王子。ご無沙汰しております」

「王子じゃなくて、君づけって約束だったよね」

「……分かったよ、ラインハルト君」

「うんうん。それより、僕たちは友達なんだから、城に遊びにきてくれていいんだよ」


 いつから友達になった? 俺の記憶が飛んでいるのかな?


「勘弁して」

「そんな冷たいことを言わずに、本当に遊びにきてくれないか」

「謹んでご辞退いたします」


 城の王族が暮らすエリアになんかいく気はない。


「ラインハルト王子、それにトーマ様でしたわね」

「やあ、クラウディア嬢」

「ご無沙汰しております、クラウディア嬢」

「トーマ様、そんなにあらたまらなくてもよろしいのですよ。爵位はロックスフォール侯爵家のほうが上ですし、トーマ様は当主なのですから」

「それなら、少し砕けた口調にするよ」

「ええ、それでお願いしますわ」


 そこで二人が俺の手元を見た。そういえば、ティーカップを持ったままだった。


「お二人もどうですか? 特別にブレンドしたハーブティーです」

「いただこう」

「わたくしもいただきますわ」


 二人がそういうと、それぞれの従者が前に出た。


 えーっと……ああ、毒見か!

 毒なんか入れないよ。そんなことするくらいなら、ランクを下げてやるから。


「控えろ。ここは学園だ」

「そうよ、友人とお茶を楽しむ邪魔をするのはいただけないわ」


 従者を下げてハーブティーを一口飲んだ二人は美味しいと言ってくれた。

 そこにララが栗羊羹を切り分けて二人の前に置いた。

 この世界では見ない黒いお菓子に、二人は目を白黒している。

 俺は栗羊羹をフォークで切って口に運んだ。羊羹の甘さと栗の香りが絶妙なハーモニーを奏でている。


「ほう、これは美味しいな」

「ええ、とても美味しいですわ」


 喜んでくれて何よりだ。


「トーマ君。このお菓子はどこで売っているのかな?」

「それはうちで作ったものです。売り物ではありません」

「む、そうか。母上にも食べさせてあげたかったが、残念だ」

「わたくしもお母様に食べていただきたかったわ」

「それなら今度作ってプレゼントしますよ」

「いいのか」

「嬉しいわ」



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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