第64話 宝石売買
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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第64話 宝石売買
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懸念していた暗殺者は、あれ以来現れていない。
アリラック・ダンジョンに集中的に入っている俺は、二十層のボスを倒して二十一層に至っている。
レベルも上がっている。
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【個体名】 トーマ・ロックスフォール
【種 族】 半神(ヒューマン・神族)
【情 報】 男 10歳 健康
【称 号】 創生神デウロの使徒
【ランク】 G
【属 性】 神
【加 護】 変換の神
【レベル】 245
【スキル】 変換・レベル5
【ライフ】 70,950
【スタミナ】 71,503
【マ ナ】 72,986
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最近はレベルアップ時のライフ・スタミナ・マナの上がり具合がすごい。
レベル二百の頃は三万五千くらいだったのが、今では倍くらいの数値になっている。
それと俺の能力は明らかに高い。レベル三百二十を超えるお父様でも三千を超える数値なのに、俺は現時点で七万を超えている。
お父様と同じレベルになったら、どれほどの能力値になるのだろうか……?
お父様のことを考えていたら、思い出してしまった……。
冬は狩りの季節だから、お父様は今日も大量にモンスターを狩っているのかな。
アシュード領では肉祭りが行われているんだろうな。肉を食べるだけの祭りだけど、大人たちは毎年酒を飲んで酔い潰れていた。
真冬の寒い季節だけど、アシュード領は比較的暖かい地域だし、焚火もあるから凍死する人はいない。
ただ、最近は人が増えたおかげで、祭りの様相が変化してきた。
前世の祭りのように露店が出て商売が行われているのだ。それでも楽しく皆が騒げる肉祭りは楽しい。
「アシュード領のチーズが食べたいな」
「俺もだぜ! 肉にチーズを乗せてパンで挟んで食べるとうめーんだ!」
俺の呟きにベンが反応した。
「王都はなんでもあるけど、水が美味しくないからアシュード領の水が飲みたいわ」
シャーミーの意見に俺とベンも同意する。
王都の水はあまり美味しくない。ライトスター家のバルド領もあまり美味しくなかった。
そう考えると、アシュード領の水はとても美味しいもので、それだけで宝と言えるものだと思う。
十二月に入った。王都はたまに雪がちらつくが、今は積もっていない。
そんな中、お爺様とお婆様が来訪した。
同時にダルデール卿もやってきた。
何かあるのかな?
「十日後にファイアット子爵とライトスター侯爵の裁判が行われる。トーマも証人として呼ばれることになった」
酒の毒のことで、利益を得ていた二家が被告として裁判が行われることになったらしい。
「俺もですか?」
未成年ですよ。
「私が共に出廷する。任せておけ」
「私も出廷しますので、細かいところはお任せください」
お爺様とダルデール卿も出廷するのか。
お爺様は俺の後見人だし、ダルデール卿は神殿の代表かな。
「トーマちゃん。今日は一緒にお買い物にいきましょう」
お婆様のそんな一言で、俺の今日の日程が決まった。
お婆様に着せ替え人形のように服をとっかえひっかえされた。
ダンジョンを歩き続け、戦闘をするよりも疲れるのは何故だろうか?
「お昼は……リルンフォーク・ザイドがいいかしら」
「リルンフォーク・ザイド……ああ、あの店か」
「トーマちゃんもいったことあるのかしら?」
「いきましたが、全席予約席だと断られました。あのレストランは客を選ぶようですね」
「まあ! トーマちゃんを追い返すなんて、失礼な店ね! いいわ、別のレストランにしましょう」
お婆様がちょっと怒です。
あの店には二度といきたくない。それに比べ、ダンボロのレストランは庶民的な店だけど、美味しかった。むしろ庶民的な料理のほうが俺の口には合う。
別のレストランで食事を摂り、今度はジュエリーの店にいった。
そういえば、俺の部屋の箱の中に、宝石が色々放り込んであったな。あれを処分したいかな。
「これはこれは、バイエルライン公爵夫人。ようこそおいでくださいました」
「今日は孫のトーマちゃんを連れてきたわ。衛護系の宝石はあるかしら」
「はい。もちろんでございます。こちらにお掛けになり、お待ちください。すぐにお持ちいたします」
衛護系の宝石というのは、攻撃を受けた際に身を守ってくれるものになる。簡単に言うと、魔道具だ。
宝石にダメージを軽減したり、毒を防いだりと色々な効果を付与したものになる。
もちろん、かなり高額だ。
断ってもお婆様は引かないだろうから、素直に好意を受け取ることにした。
毒無効の衛護宝石が嵌ったネックレスを買ってもらった。紫色の宝石は、アメジストだと店員が言っていた。
ただでさえ宝石なのに、それが魔道具化されているので目が飛び出すくらい高額だった。
帰る際に、俺が持っている宝石類を引き取ってもらえないかと聞いてみた。
「それでしたら、後日お屋敷にお伺いいたします」
わざわざきてくれるのは申しわけないと断ろうとしたけど、お婆様に止められた。
結局、三日後にロックスフォール屋敷にきてもらうことになった。
そして三日後、宝石商ティファス・ブルガルが屋敷にやってきた。
「バイエルライン公爵家の屋敷に比べ、小さくて驚かれたことでしょう」
「いえいえ、そのようなことはございません」
社交辞令だと分かっているけど、ティファスさんの言葉に厭味は感じなかった。
さっそく変換で創ったジュエリーをテーブルの上に並べていく。
「こ、これは!?」
どうしたのかな?
「手に取ってもよろしいでしょうか」
「もちろんです」
ティファスさんはルーペを持ち出した。
ガラスは貴重で宝石くらいの値段がするけど、ルーペはあるようだ。
「ほう……これは……むむむ……」
ブツブツ言いながら宝石を鑑定していくティファスさんの目は接客時の優しいものではない。まるで獲物を狙う鷹のような鋭い目だ。
「トーマ様! これらのジュエリーを私どもにお売りいただけるのですね!?」
テンションが高いけど、どれもありふれた宝石だよ?
「ええ、そうです」
「ありがとう存じます。どれも傷もムラもない極めて透明度の高い宝石ばかり! できるだけの値段をつけさせていただきます!」
お、おぅ……。
ティファスさんは全てのジュエリーを引き取ってくれた。そして俺は大金を手にいれたのだった。
その数日後、お婆様がやってきた。
「トーマちゃん。宝石はまだあるのかしら?」
「え?」
「わたくしにも見せてくれるかしら」
ウフフフと笑っているけど、目が笑ってない!?
どうやら、ティファスさんから俺の宝石のことを聞いたらしい。
あの後に変換したいくつかをお婆様に見せたら、全部買い取ると言われた。
「お婆様にはいつもお世話になっていますので、こんなものでよければ、プレゼントします」
「それは駄目よ。ちゃんとお金を払うわ」
「孫からのプレゼントです。受け取ってください」
「もう、トーマちゃんたら……分かったわ。ありがたくいただくわ。ありがとうね、トーマちゃん」
後から聞いたことだけど、俺がティファスさんに譲った宝石は、新しいデザインの指輪やネックレスなどにつけられて販売されたらしい。
しかもとても効果の高い衛護宝石だったらしい。
宝石は傷やムラが多いほど衛護付与の効果が薄れるらしい。だから、傷やムラがまったくない俺が変換した宝石は、衛護付与に最適だったらしい。
また、宝石としても傷やムラがないということは、価値が高くなるそうだ。
「宝石、ヤバッ」
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