第59話 教皇と面会
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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第59話 教皇と面会
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高位神官の挨拶が終わり、神殿の中に入った。
そういえば、アシュード領の神殿以外に入ったことないや。
アクセル領では、バイエルライン屋敷内にある祭壇に祈りを捧げていたし、あっちこっちにデウロ様の像があるので神殿にいくことはなかった。
丁度レベルも二百になったことだし、デウロ様の像に祈りを捧げよう。
「ダルデール卿。デウロ様の像に祈りを捧げたいので、少し時間をください」
「承知しました」
総本山のデウロ様の像も、顔と名前が削られていた。総本山でこれとは……。
しまったな……。この分だとアクセル領の神殿にあるデウロ様の像も、顔と名前が削られているんじゃないか。
俺の行動範囲内にあるデウロ様の像がこの状態というのは、俺の気が回らなかったためだ。これは絶対に改善しないといけない!
デウロ様やっとレベル二百になりました。
ゆっくり左膝をついて目を閉じ頭を垂れる。そして手を合わせた。
浮遊感を感じた。レベル百の時と同じだ。
そして、一面の闇。これも同じだ。
【久しぶりだな、我が眷属よ】
お久しぶりです。またお会いできて、嬉しいです。
【トーマのおかげで我を信仰する者が増えた。よくやった】
は、はい!
【だが、まだ足りぬ。もっと我の名を広めるのだ】
もちろんです!
もっともっとデウロ様の名を広めてみせます!
【頼もしい限りだ。そこでトーマによい情報を与えよう】
はい、よろしくお願いします。
【ダンジョンからアイテムが手に入るのは知っているな】
はい。知っています。
【便利なアイテムが手に入るダンジョンが、王都にある】
王都にはいくつかのダンジョンがあると聞いている。
【アリラック・ダンジョンにいくがいい】
アリラック・ダンジョンに便利なアイテムが……。そのアイテムはどういったものでしょうか?
【手に入れたら分かる。ただし、容易に手に入ると思わぬことだ。心して向かうがいい】
分かりました。俺はアリラック・ダンジョンでアイテムを探します。
【そのアイテムを手に入れたら、我を呼ぶがいい】
はい! アイテムを見つけ出し、デウロ様に会いに伺います!
【期待しているぞ、トーマ】
闇の世界から神殿に戻り、デウロ様の像を見上げる。
デウロ様の像の顔があり、台座の名前も読めるようになっていた。
「おおお、神の奇跡です!」
「「「神よ!」」」
振り返ると、ダルデール卿以下神官たちが涙を流し跪いていた。
「トーマ……」
お爺様の声が掠れている。
「これが神の奇跡なのか?」
「デウロ様は俺の進む道を示してくださいました」
「トーマが進む道だと?」
「アリラック・ダンジョンでアイテムを探すようにと」
「そのアイテムとは?」
「分かりません。でも、発見したら分かると仰っていました」
「そうか……」
お爺様は顎に手を当てて黙り込んでしまった。
神官のほうは、神に必死に祈る人や泣きじゃくっている人が多すぎる。
待っていても収拾がつきそうにないので、ダルデール卿に声をかけた。
「申しわけございません。この者らはしばらく無理そうですので、先にお部屋へご案内いたします」
ダルデール卿についてきた神官はごくわずかだった。皆、デウロ様の像の前に留まっていた。
部屋に案内してもらうだけだから、ダルデール卿一人がいればこと足りるからね。
「しかし、おったまげたな。神像がピカッてひかったら、立っていられなかったぜ」
デウロ様のご威光で、ベンは膝をついたらしい。
「なんか心が温かくなったわ。あれが神様の温かみなのね」
デウロ様はとても優しい神様だぞ!
部屋のソファーに体を預けている。
今日は結構長く馬に乗っていたから、内腿が筋肉痛だ。
お爺様とお喋りしながら寛いでいると、ダルデール卿がやってきた。
「教皇猊下との謁見の準備が整いました」
「まさか《《うちのトーマ》》を教皇の風下に立たせようというのではないであろうな?」
「そのようなこといたしません」
「そもそも使徒というのは、神殿にとってどんなポジションなのだ?」
「使徒様は勇者様、聖女様と並ぶ地位になりますね」
勇者と聖女は異世界から召喚された人しかなれないらしい。
俺の元クラスメイトたちの中に勇者と聖女がいた。
たしか安房犬尾が闇の勇者でランクはA、相模雄太が聖光の勇者でランクはS+、そして桂美麗さんが慈愛の聖女でランクはSだったはずだ。
デウロ様は元クラスメイトの多くが敵になると言っていた。
それまでにもっと力をつけないといけない。俺はもう二度とあいつらに虐げられるつもりはない。
教皇との謁見は円卓に座って行われた。
円卓には上座も下座もない、そういった意味があるらしい。
勇者、聖女、そして使徒はある意味教皇以上の存在だから、教皇でも礼をもって接するのだとか。
教皇は七十七歳の爺ちゃんだった。名前はパウロ十八世、薄くなった白髪にゲルジという聖職者用の帽子を被っていて、優しそうな青い目をしている。
終始笑みを浮かべ、よくきてくれたと感謝していた。
「使徒殿の行動の自由は教皇の名において保証します。どうぞ、神の意志をあまねく者たちにお示しくだされ」
「ありがとうございます。早速ですが、ダルデール卿から頼まれております奇病について対応したいと思います」
教皇は優しく笑い、頷いた。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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