第58話 総本山にいこう!
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
■■■■■■■■■■
第58話 総本山にいこう!
■■■■■■■■■■
入試の合格発表当日。
掲示板に『三七五六四』があった。合格だ。
ゴロが悪い受験番号だったけど、合格してよかった。これでお父様の顔を潰さずに済んだよ。
入学の手続きをするために、下級貴族用の受付に並ぶ。相変わらず上級貴族と中級貴族は待ち時間なしだ。
ただし、今日は下級貴族の列よりも長い列がある。平民用の受付だ。
平民の合格者はそれほど多くないけど、一人しか受付にいないから時間がかかっている。
そこで欠伸をしている上級貴族用の受付の人を下級貴族や平民用の受付に回せと思ってしまう。
「受験番号『三七五六四』のトーマ・ロックフォールです」
「『三七五六四』……はい、合格おめでとうございます」
無事に受付を済ませると、入学のしおりをもらった。
それにそって必要なものを揃えろということだ。
制服に教科書、その他色々な備品が記載されており、購入できる店のことも載っている。
「トーマ、おめでとう!」
「おめでとう、トーマ」
「ダーダー」
お父様、お母さん、ジークヴァルトが祝ってくれた。
そこにお爺様とお婆様がやってきて、お祝いしてくれた。
翌日は各店を回って必要なものを買い集めた。制服だけは後日取りにいくことになったが、それ以外は問題なく揃った。
「トーマは馬でいくのか? 我らと馬車に乗ればいいではないか」
「騎士爵家の男として、馬に慣れておきたいのです」
「そうか……」
今日はお父様とお母さんとジークヴァルトがアシュード領に帰る日だ。
三人は湊から船で帰るけど、俺はこのまま王都に残るからそれを見送る。
お爺様はお母さんとジークヴァルトが帰ってしまうので、残念そうにしている。
お父様は優しく俺の頭を撫でてくれた。
ゆっくりと進み、貴族街を出て平民街を通る。
今日も王都は雑多な賑わいを見せていた。
「トーマ、気をつけていくのだぞ」
「はい、お父様」
「体にはくれぐれも気をつけるのよ」
「分かっているよ、お母さん」
「ダーダー」
「お利口にしているんだぞ、ジークヴァルト」
皆にしばしの別れをし、船を見送った。
「それではお婆様、俺もいきます」
「気をつけていくのですよ」
「はい」
家族を見送った俺は、神殿の総本山へ向かう。
お婆様に見送られ、俺とお爺様は総本山を目指した。
今回総本山へいくにあたって、お爺様がどうしても付き添うと言うのできてもらった。俺もお爺様が一緒なら頼もしいからね。
お爺様が乗る貴族馬車を守るのは、バイエルライン公爵家の騎士団員が百人だ。
さらに俺の周囲にはベンとシャーミー、そして三十人の神殿騎士がいる。
王都を出ると俺たちは速度を上げる。
お爺様の馬車の速度に合わせ、およそ時速十キロほどの速度で進んだ。
王都から総本山まではそれほど遠くない。この速度なら二時間もかからないのだとか。
これだけの騎士と神殿騎士に守られた俺たちを襲う野盗もモンスターもいない。
そもそも王都・総本山間は警邏隊がしっかり警邏しているため野盗は近づかないし、モンスターはすぐに狩られる。
「トーマ様。総本山が見えました」
シュザンナ隊長が指差すほうを見ると、白い尖塔が見えた。
「あれが神殿の総本山か。串のようだな」
ベンの感想に脱力しそうになった。
なんでも食べ物に紐づけるのは止めてほしい。
「ベン。神殿の総本山にそんなこと言っちゃダメよ」
「へいへい」
シャーミーに窘められたけど、反省はしてないようだ。
総本山は中央に百メートルはある尖塔、東西南北にそれぞれ五十メートルの尖塔があるシンメトリーな造りになっていた。壁は全て白色で、屋根は真っ青なコバルトブルー。観光名所になりそうな趣がある。
門の前に二百人くらいの神殿騎士が左右二列ずつで並んでいる。
「使徒様にーーー敬礼!」
神殿騎士が胸の前で両手に持った抜き身の剣先を天に掲げた。貴人を迎える騎士用の儀礼だ。
シュザンナ隊長を先頭にし、ベンとシャーミー、神殿騎士に囲まれた俺はその間を進んでいく。
門をくぐると、今度は神官たちが整列していた。
「うへー、人がいっぱいだな」
ベンが言うように、神官たちが整列している後ろには、総本山参りをしていたと思われる信者の人たちがたくさんいた。
「こんな仰々しいのは勘弁してほしいんだけど……」
「神殿の威信をかけて歓待するみたいね」
シャーミーは神殿の思惑に気づいていた。彼女は光魔法の使い手だから、ダンジョンに入らない時は、神殿で魔法の練習をしたり、怪我人や病人の治療を行っていたせいか、神殿のことをよく知っているんだよな。
神官の中からダルデール卿が進み出てきて、俺はその前で馬から降りた。
お爺様も馬車から降りてきて、俺の横に立った。
「使徒トーマ様。バイエルライン公爵閣下。ようこそおいでくださいました」
「お世話になります」
「ずいぶんと仰々しいな」
「使徒様をお迎えするのです。皆でお出迎えをするのは当然です」
お爺様はフンッと鼻を鳴らして、周囲を眺めた。
そこから神官たちの挨拶が始まった。
神官は、副助祭、助祭、副司祭、司祭、副司教、司教、大司教、枢機卿、そして教皇という位階がある。
挨拶を受けたのは、大司教が二十人と枢機卿が十五人だった。
位階の他に、ちゃんと役職もある。神殿騎士や退魔師などだ。
シュザンナ隊長がアシュード領にやってきた時は司祭だったけど、今は副司教に昇格したと言っていた。
あと神殿騎士としても分隊長から小隊長に昇進している。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
気に入った! もっと読みたい! と思いましたら評価してください。
『ブックマーク』『いいね』『評価』『レビュー』をよろしくです。