第55話 入学試験
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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第55話 入学試験
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入試当日になった。
学園の正式名称は王立イサム・カナデ学園、王都の南東側の一角にある広大な学び舎だ。
ロックスフォール屋敷は貴族街の北西にあり、学園は南東にある。馬車で二時間もかかるため、朝早くに屋敷を出た。結構遠い。
学園に近づくにつれ、馬車が多くなっていく。
この学園は貴族だけでなく、一般人も受験できる。貴族の入試が終わった二日後に一般枠の入試は行われるそうだ。
だから今日は貴族ばかりだ。
「ロックスフォール騎士爵家のトーマです」
「はい……この番号札を胸につけて下級貴族用の赤い矢印に従って試験会場へ進んでください」
受付で『三七五六四』と書かれた番号札をもらった。縁起でもない……。
それよりも受付からも格差社会を思い知らされる。
上級貴族用、中級貴族用、そして下級貴族用の受付がある。
上級貴族用と中級貴族用の受付はほぼ並ぶことなく受付がされるけど、下級貴族用の受付には多くの受験生が並んでいるのだ。
上級貴族用の受付は十人、中級貴族用も六人いる。
それに対して下級貴族の受付は三人しかいない。そもそも受験生は下級貴族が一番多いのにだ。
人員配分が間違っていますよー!
上級貴族は青色の矢印、中級貴族は緑色の矢印、下級貴族は赤色の矢印、これに沿って進んでいき、教室に入った。
「従者の方は後方へ」
今日はシュザンナ隊長が護衛としてついている。
「それでは後方で待機しております」
学園内に従者を連れてくるのは問題ないが、下級貴族は一人しか連れてこれない。
中級貴族は三人、上級貴族はなんと六人もぞろぞろと連れてあるいているから、遠目でも分かる。
君子、危うきに近寄らず。ってね。
「受験番号『三七五六四』ね。えーっとロックスフォール騎士爵家のトーマ君かな」
「はい。トーマです」
「ステータスを確認するから見せて」
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【個体名】 トーマ・ロックスフォール
【種 族】 ヒューマン
【情 報】 男 10歳 健康
【称 号】 デウロの使徒
【ランク】 S
【属 性】 無
【加 護】 神酒の杜氏
【レベル】 199
【スキル】 酒造の心得・レベル5 品質向上・レベル5 器用・レベル4 見極め・レベル4
【ライフ】 11,032
【スタミナ】 11,144
【マ ナ】 11,441
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「し、使徒!? ランクS!? レベル百九十九!?」
ステータス確認した教師(?)が、大声で叫んだ。
いくらこの国に個人情報保護法がないからといって、叫ぶのはどうかと思うよ。
「はっ!? ご、ゴホンッ」
あ、取り繕ったよ、この先生。
「ば、受験番号の席に座って待っていたまえ」
「はい」
目が泳いでいるけど、まあいいや。
席に着こうと向きを変えたら、教室中の視線が集まっていた。
さっきの叫び声を皆が聞いたようだね。はぁ……。
自分の席に座って待っていると、席が埋まった。
それからさらに時間が過ぎて筆記試験が始まった。
たしかに簡単な試験だ。
何点取ったら合格かはしらないけど、不合格になることはないと思う。
ただ、この問題だと全体的に点がいいと、油断はできない。
別に学園に通いたいとは思っていないけど、お父様の顔に泥を塗ることはできない。全力で点数を取りにいこうと思う。
ふー、やり切った。気合入れてやったよ。
見直しもちゃんとやったし、名前も受験番号も書いた。
「はい、それまで。騎士科と魔法科と教養一科を受験している人は、矢印に沿って訓練場へ向かってください。教養二科を受験した人は、これで帰って構いません。結果は十日後に出ます」
学園には騎士科、魔法科、教養一科、教養二科がある。
騎士科は将来騎士として国や貴族に仕えたい子供が受験する。
魔法科は魔法使いとして国や貴族に仕えたい子供が受験する。
教養一科は俗に貴族科と言われており、領地経営全般が学べるから領地持ち貴族の嫡子が受験する。
教養二科は俗に文官科と言われており、国や貴族に仕えたい子供が受験する。
俺は教養二科を選択して受験している。
騎士にも魔法使いにもなる気はないし、魔法はそもそも使えない。
家は弟のジークヴァルトが継いでくれればいいので、教養一科は除外。
残ったのが教養二科だったわけだ。
騎士科や魔法科、それに教養一科は実技もあるためこれからまだ実技試験があるけど、俺はここで試験終了だ。
シュザンナ隊長と合流して、帰ることにした。
「本当に教養二科をお受けになったのですね」
俺が教養二科を受けると言った時から、シュザンナ隊長や皆はそれを信じてなかった。
皆は騎士科か教養一科を受ければいいと言ったけど、騎士にも領主にもなる気はないのだ。
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