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第53話 王都へ

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 第53話 王都へ

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 十歳の秋。

 俺はアシュード湊から船に乗ってアクセル領へ向かった。

 今回のアクセル行きは、俺、お父様、お母さん、次男のジークヴァルトの四人で向かっている。


「トーマ! ジークヴァルト!」

「トーマちゃん、ジークちゃん」


 祖父のバイエルライン公爵と祖母の公爵夫人が湊で出迎えてくれた。


「お爺様、お婆様。お久しぶりです」

「ジージ、バーバ」


 お婆様は自分の足で立って歩いている。しっかりした足取りで、長年寝込んでいたことなど微塵も感じさせなかった。

 挨拶をすると、俺とジークヴァルトはお婆様に抱きしめられた。


 お爺様が羨ましそうな目でこちらを見ているが、我慢してもらおう。

 その代わりジークヴァルトは抱っこしていいよ。


「重たくなったな、ジーク!」

「あーい」


 赤ん坊の時のジークヴァルトはお爺様に抱かれると泣いていたが、今は楽しそうに抱かれている。

 愛おしさから、きつく抱いていたのがよくなかったと気づいたのだとか。


 バイエルライン公爵のアクセル領は、国内屈指の大都市だ。最近では王都より栄えていると聞こえてくる。

 俺たちはアクセル領のバイエルライン公爵家の屋敷で二泊した。


 そして今度は王都に向かって船旅をする。ライバー川を下っていけば、王都があるのだ。

 この旅には公爵夫妻も同行することになっており、船は公爵家の御座船だ。

 周囲にはロックスフォール家の船と、御座船を護衛する護衛艦が二隻もいる一団になっている。


 このクルディア王国では、貴族の子供が十一歳になると学園に通うことになる。

 その前の十歳の秋になると、入学試験がある。ある程度の学力がないと入学できないが、最低限の教養があれば問題なく合格するらしい。


 今回の旅は俺が入学試験を受けるためのもので、両親やジークヴァルト、公爵夫妻はその付き添いだ。

 大げさだけど、心強いよ。


 ライバー川には川賊という海賊のような無頼の者たちがいると聞いたけど、護衛艦に守られたこの一団を襲うことはなかった。

 王都の湊は歴史がありそうだけど、雑多な感じがした。

 アクセル領のバゼル湊は、計画的に整備された機能的な湊だったので、そのギャップに驚いた。


 貴族用の箱馬車に俺と公爵夫妻とお母さんとジークヴァルトが乗り込み、お父様は馬に乗った。

 騎士爵のお父様が公爵夫妻と同乗するのを遠慮したのではなく、王都内のルールがあるのだ。


 貴族の位階には、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵、准爵がある。

 伯爵以上が上級貴族で、国の重職に就くことができる。子爵と男爵は中級貴族、騎士爵と准爵は下級貴族と分けられている。

 騎士爵と准爵も立派な貴族だけど、王都内では馬車に乗ってはいけないのだ。王都内限定だけど、これを守ってないと罰せられるから気をつける必要がある。


 さらに、馬車といってもいくつか種類があって、貴族馬車、箱馬車、荷馬車、戦車がある。

 貴族馬車と箱馬車は屋根があるものだけど、貴族馬車には各家の家紋を掲げる必要がある。

 また、箱馬車は貴族以外の平民が乗る馬車だけど、華美な装飾を施してはならないのだ。

 荷馬車は屋根のない、または幌つきの、主に荷物を運ぶ馬車になる。

 そして戦車は戦の時に使うもので、重装甲のものや、ローマ帝国の戦車みたいなものがある。

 あと、馬車ではないけど、大八車のように人が牽く車もある。


 さて、騎士爵と准爵が馬車に乗っていけないというのは、身分の差を明確にするためだ。

 上級貴族の貴族馬車は金箔を使ってもいいが、中級貴族は銀箔、下級貴族は馬に乗ることが定められているのだ。

 馬に乗れない下級貴族は歩いているのかというと、それは違う。馬に乗れない人は江戸時代にあるような籠に乗っているのだ。

 籠に乗る下級貴族は、主に文官系の家の人が多い。ロックスフォール家はバリバリの武闘派貴族なので、王都内では馬に乗ることになる。


 王都もアクセル領のように人が多い町だった。

 アクセル領で慣れてしまったせいか、そこまで感動はない。

 馬車は人が歩く速度で進んでいる。これも王都内だけは決められていることだ。

 もし、速度を出していて事故を起こしたら、相手が平民でも罰せられることになる。

 公爵家といえども、そこはしっかり守らないといけないのだ。


 平民街から貴族街へと入る際は、検問がある。

 王都は王城を中心に貴族街が取り囲んでおり、その外側に平民街が広がっているのだ。

 平民街と貴族街は防壁で隔てられていて、貴族街に入るには門を通る。その際に検問が行われるのだ。


「バイエルライン公爵ご夫妻とロックスフォール騎士爵ご一家であらせられる!」

 検問といっても貴族の荷物が検められることはない。貴族証を検めるだけだ。

 門番たちが敬礼して俺たちを見送る。


 そのまま俺たちはバイエルライン公爵家の屋敷に入った。

 バイエルライン公爵屋敷は王城に近い場所にある。

 爵位が上ほど王城に近い場所に屋敷を持っているし、二つ三つ屋敷を持っている貴族もいる。

 もちろん、ロックスフォール騎士爵家は貴族街の外側の一角に小さな屋敷があるだけだよ。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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リアルの英国の制度に有る、一代貴族の男爵(世襲は出来ないが貴族扱い)や、準男爵(世襲出来るが貴族扱いされない)と言うのは無いのですね。 元は低い身分で、実力で登用されている官僚や軍人や女官や侍女(高位…
貴族馬車と箱馬車を家紋の有無で区別しているけど、貴族馬車もつまりは箱馬車なのでちょっとややこしい。 つぶあんを特別扱いしてあんこを下に置いてるような…。 粒があろうがなかろうが同じあんこや!みたいな……
その国の爵位持っている人限定の法なのかな。そうでないと乳母や世話をする侍女や看護用の医者、護衛の騎士が乗れないのも問題だけど他国や宗教関連とかあってややこしそうですもの。あと、貢ぎ物とか税の物資とかの…
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