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第47話 待ち伏せ

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 第47話 待ち伏せ

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 夏も終わりになる頃、俺はなんとか一人で馬に乗れるようになった。毎日忙しくしているおかげで、時間があっという間に過ぎていく。剣の稽古、乗馬の稽古、酒の面倒、ダンジョンに入ってレベル上げ、マジで忙しい。

 そして今日は毎月一回のお婆様詣でに出発した。

 お婆様は毎日リハビリをしていて、体力が少しずつ回復してきている。今回はもっと元気になっていることだろう。楽しみだ。

 これまでは馬車に乗ってアクセル領へと向かっていたが、今日は馬に乗って移動している。

 周囲にはお父様がつけてくれた領軍の兵士が五人と、シュザンナさんを含めた神殿騎士が五人、他に斥候に出ている神殿騎士が二人いて、俺を含めて合計十三人での旅になっている。今回は全員が馬に乗っているので、馬車より早く移動できている。

 せっかく改造した馬車のことは言わないで……。

「トーマ様。お疲れではありませんか?」

「大丈夫ですよ、アルバートさん」

 アルバートさん(三十三歳)は領軍の副隊長で、ランクはCだけど、レベルは脅威の三百!

 領軍ではお父様と隊長のダニエルさん(四十五歳)についで三番目の立場だけど、個人の戦闘力はお父様に次ぐ二番目になる。

 隊長のダニエルさんもレベル二百八十と決して低くないけど、お父様とアルバートさんが異常なんだろう。

 ちなみに、神殿騎士のシュザンナさんはランクBでレベルは百七十になる。

 うちの領軍の一番若い十九歳で二年目のジーモンさんでもレベルは百五十あるので、ロックスフォール領軍がいかに実戦をこなしているかが分かるだろう。

 斥候の一人が戻ってきた。

「この先に盗賊が三十人ほど伏せております」

「盗賊だと?」

 アルバートさんが首を捻った。

「この辺りに盗賊などいなかったのですが、どこからか流れてきたのでしょう」

 これまで何度かこの道を往復したけど、盗賊に出遭うのは初めてだ。

「トーマ様の安全が優先されます。迂回しましょう」

 シュザンナさんの提案はありがたいが、ここはまだアシュード領だ。こんなところで盗賊を放置したら、うちの領内を荒されかねない。

「いえ、討伐しましょう」

「しかし……」

「俺は大丈夫です。それにアルバートさんたちなら、盗賊くらいなんとかなるでしょ?」

「トーマ様に期待されて、応えないわけにはいきませんな。コールラウシュ殿シュザンナのこと、トーマ様の護衛をお任せしますぞ」

「相手は三十人もいるのですよ」

「我らロックスフォール領軍は、常に自分たちより数で上回るものを打ち倒してきました。盗賊ごときに遅れはとりませぬ」

 イケメンアルバートさんのスマイルは破壊力満点だな。俺が女なら惚れていたかも。シュザンナさんも頬を染めているよ。

「我に続け!」

「「「応!」」」

 アルバートさんたちが馬を走らせる。蹄が地面を抉る重低音が、お腹に響く。

 しばらくして、盗賊の悲鳴が聞こえてきた。

 以前、お父様の話を聞いて俺が受けた印象は、アルバートさんは戦闘民族だ。相手が人間でも魔物でも血に飢えた獣のように一切の容赦せずにしとめるのだとか。他の領兵も甘い考えの人はいないだろう。だから、心配する必要はない。

 斥候が戦闘終了を告げると、俺たちも戦闘現場へと馬を進めた。

 血の臭いがする。首が三つ転がっている。まさに蹂躙だったのだろう。二十体以上の死体がそこにあったのだ。

「トーマ様。捕縛した者らにございます」

「アルバートさん、お疲れ様です。何か吐きましたか?」

「いえ、こいつらは何も吐きません。ですが、皆訓練された兵士のようでした」

「盗賊じゃないのですか?」

 死体も捕縛された五人も、見窄らしく汚い恰好をしている。盗賊と言われたらしっくりくるけど、とても正規兵には思えない。

「口を割らせますので、少しだけお時間をもらえますか」

 時間を食ってしまうが、放置はできない。俺はアルバートさんに頷いた。

 あ、でも情報変換で確認したら分かるんじゃないかな?

 あー、なるほど……。うん。納得だ。こいつら、ライトスター家の兵士だ。俺を殺そうとしてライトスターに命令されたのだろう。

 その後、五分で捕虜は口を割った。指を一本一本切り落とされて、耳と鼻を削がれていく仲間の姿を見ていた人がガクブルで口を割ったのだ。

 俺もその光景を見ていたけど、特に何も感じなかった。前世では俺も酷い扱いを受けてきたから、こんなことでやられる精神ではなかったようだ。内臓を撒き散らしている死体を見ても平気だったし。

「ライトスター侯爵が差し向けた者たちだったとは……」

 シュザンナさんは唖然としている。アルバートさんもこの可能性は考えていたようで、驚いてはいなかった。

 ロックスフォール家はライトスター家の傘下から抜けたから、その意趣返しの可能性は高い。馬王のような酒を造った俺を殺せば、ロックスフォール家にダメージを与えられると考えたようだ。

 寄親だったライトスター侯爵家に絶縁状を送って、バイエルライン公爵家に乗り換えたからライトスターが怒っているのは理解している。ただ、こんなに簡単にライトスターのことを吐く質の悪い兵士を送り込んでくることが信じられなかった。

「このことはダルデール様に報告します。この者らをロックスフォール様の屋敷へ移送するため、二人の配下を分けたいと思いますが、よろしいでしょうか」

「ええ、構いませんよ」

 神殿騎士の二人は屋敷に捕虜を届けたら、急いで合流するようにシュザンナさんに命じられた。

 ちょっとやそっとの敵ではアルバートさんたち領軍の精鋭たちを倒せないから、そこまで急がなくてもいいのに。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
転移できるのは忘れてないよね(一回領地に戻ってるから覚えてるはずだけど)馬車よりも転移で移動しないことを突っ込んだ方がいいのでは、時間を無駄にしてまで身内に秘密にする意味あるのか 飛行機で移動すればい…
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