第37話 集光ランプ
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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第37話 集光ランプ
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屋敷の自室でスライムゲルを桶に入れ、そこにショウク石と言われる紫色の石の粉を混ぜる。
よくかき混ぜたゲルを、木のコップに入れる。半分くらい入れたら、そこに小さな魔石を入れ、さらにゲルを入れる。
固まるまでしばらく待ち、木のコップを逆さにして取り出すつもりだったが、落ちてこない。
仕方ないので、コップを真っ二つにカットして取り出した。
あとはこれに飾りをつける。飾りは俺の変換で鉄製のものを創る。
「よしできた!」
・集光ランプ : 昼に光を取り込み、夜に光を放出する
これは太陽光を浴びて蓄魔(魔力を蓄えること)し、夜にランプのように光る魔道具だ。
スライムゲルと魔石はダンジョンで手に入るし、ショウク石はうちの旧坑道で採取できるものだ。
ショウク石は紫色の石だけど、濁った色だから宝石にはならない。今までは使い道がなく、採掘もされていないもので坑道内にたくさん転がっている。
スライムゲルとショウク石の粉を混ぜると、鮮やかな紫色になる。それが固まると、やや紫色が残っているものの、ほぼ無色透明になるのだ。
この状態になると光を取り込む特性があるのだが、ここに魔石を組み込むことで、蓄電池のような役割をして集光ランプになるのだ。
極めて簡単な魔道具なので、俺でなくても作ることができるものだ。
ちなみに、集光ランプを変換で直接創ることはできないから、手作業で作ることになる。飾りも別途作るが、こちらは変換が可能だ。飾りの素材は鉄だ。残念ながら貴金属の変換はできない。金と銀が変換できれば、それだけでお金になるのにね。あと、銅はちょっとマナ消費が多いけど、変換できた。
集光ランプを三個作った。一個は最初に作ったもので、部屋用の集光ランプだ。あとの二個はシャンデリアのような豪華な集光ランプにした。
夕食の後、お父様とお母さんに集光ランプを見せる。
「まあ、綺麗だわ!」
お母さんがシャンデリア型の集光ランプをうっとりと見つめる。
「これには蝋燭は使われてないようだが……?」
「はい。これは集光ランプです。この部分が昼の光を溜め、夜になったら光を放つのです」
「そんなものをどうしたのだ?」
「作りました」
「作ったって……まあ、トーマだからな……」
え、なんで俺だからと納得するの?
「これはお客様が立ち入るような場所用です。それでこちらが部屋用の集光ランプですね」
部屋用の集光ランプは、飾りはあるけどそこまで華美ではない。華美なのはシャンデリア型の集光ランプのほうだ。これでもかとガラスを使ってみたから、同等のものはまずないだろう。
「これを村のメインストリートと、主要施設の周りに設置すれば、夜でも明るくなります」
「それはすごいな。酒工房に賊が入ったのも、夜は真っ暗で人の目が届かなかったからだ。今は兵士を配置して警備させているが、松明は薪が必要だし、火事にならないように気をつけなければならぬからな」
さすがはお父様だ、簡単な説明でこの集光ランプの使い方を把握しちゃったよ。
「これは使えるぞ! 量産は可能か?」
「集光ランプ自体の素材は全てこのアシュード領で揃います。でもこういった飾りは専門家の腕が要ると思います」
「ふむ……ボーマンでは難しいか?」
「ボーマンさんでもできるとは思いますが、どちらかというと細工師や彫金師の範疇だと思います」
「細工師と彫金師か。共に我が領にはいない職だな」
「とりあえず、街灯はボーマンさんでも作れると思いますので、お願いしてみましょうか」
「こういったシャンデリアはどうだ?」
「無理でしょう。そもそもガラスが俺しか作れませんので」
「ならば、バイエルライン公爵家に贈るシャンデリアを、できるだけ豪華なやつを作ってくれないか」
「構いませんよ」
寄らば大樹の陰というしね。ロックスフォール家はすでにライトスター家と縁を切っている。バイエルライン公爵家とできる限り良い関係を築くのは大事だ。この程度の贈り物で良い関係が築けるのであれば、安いものだ。
その翌日、件のバイエルライン公爵家の使者がやってきた。
お父様とお母さん、そして俺は使者を迎えるために玄関で待った。
「こ、これは、アレクサンデル様!」
公爵家ともなると、使者でもすごく豪華な馬車に乗っていると思ったら、なんと次期公爵であるアレクサンデル様が降りてきた。一応、バイエルライン公爵家の家族構成は学んでいるので、アレクサンデルと聞いた瞬間、身を硬くしてしまった。
俺は緊張して最敬礼しているので、早く声をかけてほしい。まげている腰を中心にプルプルする。
ちらりと上目遣いしてみたら、アレクサンデル様は何かとても驚いているようで、呆然と立ち尽くしている。どうした?
「アレクサンデル様。お声を」
老執事さんがアレクサンデル様にこっそりそう声をかけ、やっと動き出した。
「あ、ああ……すまぬ、ロックスフォール卿。少し気分が悪くてな」
「長旅でお疲れなのでしょう。粗末な部屋ではありますが、用意いたしますのでそちらでお休みください」
どうやら車酔いをしたようだ。顔が真っ青になっていた。うちで倒れられたら、バイエルライン公爵家との間に溝ができかねない。大事ないといいのだが。
しかし、次期公爵のアレクサンデル様がなんで使者なんだ? もっと下の人に任せればいいのに。
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