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第29話 デウロの使徒

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 第29話 デウロの使徒

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 レベル百になり、俺は創生神デウロ様とお会いすることができた。

 デウロ様は今も闇の世界に囚われているようで、そのお顔は拝見することはできなかった。それでも神殿の神像が元通りになったことで、デウロ様の顔は心に焼きつけることができた。

「それで、何があったんだ?」

 デウロ様の像が元通りになったことで、神官と村民たちが大騒ぎしたため、俺はお父様をはじめとした村の主要人物たちに囲まれている。

 俺のことをどう話したらいいのか、考えた俺はある程度素直に話すことにした。そしてステータスも見せよう。ただし素直に見せるのは避けておこう。

「お父様。俺はデウロ様に導かれ神殿で祈りました」

「デウロ様? それがあの神の名か?」

 神官が激しく頷いた。

 台座にはちゃんとデウロとあった。ただし、なぜか創生神の文字はなかった。それはいい、どうせ『創生の神』は隠す予定だったのだ。

「私は見ておりませんが、村人たちがデウロ様の神像が光ったのを見ております。その光りが消えたら、顔とお名前が復元していたのです」

 神官は興奮してまくし立てた。

「トーマはそれを見たのか?」

「光ったところは見ていません。俺が祈り終えて目を開けたら、復元していたのです」

「ふむ。で、さっき導かれてと言ったな? それはどういう意味だ?」


 = ・ = ・ = ・ = ・ = ・ = ・ = ・ =

【個体名】 トーマ・ロックスフォール

【種 族】 ヒューマン

【情 報】 男 7歳 健康

【称 号】 デウロの使徒

【ランク】 S

【属 性】 無

【加 護】 至上の名匠

【レベル】 100

【スキル】 物作りの心得・レベル3 品質向上・レベル2 器用・レベル2

【ライフ】 200(600)

【スタミナ】 280(840)

【マ ナ】 300(900)

 = ・ = ・ = ・ = ・ = ・ = ・ = ・ =


 俺のランクは本来Gだけど、GはFの下のGではない。以前も触れたが、ランクの下限はFだけど、上限はティライア(クズ)が言っていたSではないのだ。ランクSの上には、SS、SSS、H(英雄)L(伝説)、そしてG(神)がある。

 デウロ様の使徒なのだから、低いランクではいけないが、さすがにSS以上にするわけにもいかない。だから今回はランクSにしておいた。

 あとは加護とスキルを物作り関係のものにしておけば、俺が酒造りに長けていても問題ないと皆に思っていただけるはずだ。

「な……これは、すごいな」

「こ、これは!?」

 お父様は驚いたようだが冷静だ。対して神官は悲鳴のような声を出した。

「ご領主様。この称号にある『デウロの使徒』というのは、まさに神の遣いの証にございます」

 神官がうるさい。神官はオトルソ・ダイゴという六十二歳の白髪の老人で、日頃はとても物静かなんだけど、こんな一面があったんだと新鮮な驚きを覚えた。

「神官殿。これはどうすればいいのだろうか?」

「このことは国と総本山に報告することになります。その後はおそらくですが、トーマ様を総本山へお連れすることになるかと」

 国には報告だけで、何かをするわけではないのか。つまり使徒の扱いは神殿がイニシアティブを持っているってことかな。

 だが、俺は総本山にいく気はない。俺はここでやるべきことがあるのだ。総本山などで遊んでいる暇はないのだ。

 それにデウロ様の部下でしかなかった裏切り者を主神や大神と祀るヤツらに用はない。

「あの」

「どうかしましたか?」

「俺は当分はこのアシュード領から離れることはできないのです」

「どういうことですか?」

「俺にはお酒を造る使命があります。デウロ様は物作りの神様であり、俺がお酒を造れるように導いてくださいました。その酒を広めるのがデウロ様から与えられた俺の使命です。ですから、長期でこのアシュード領を離れることはできません」

 神官は困った顔をしたが、そういった理由なら仕方がないと、そのように報告にはつけ加えると約束してくれた。

 俺はせっかく人気になった酒を使ってデウロ様の名を広め、信仰を集めようと考えた。使徒というのがそれにプラスになるかマイナスになるかは博打のところがあるけど、それを上手くいくようにするのが俺の役目だと思う。


「トーマが神の使徒……すごいわ! トーマはきっと大物になると思っていたけど、まさか神様の使徒だなんて! ああ、トーマ!」

 お母さんが抱きついてきた。いい匂いがする。こうやって俺のことで喜んでくれると、俺も嬉しい。

「あうあー」

「あら、ジークちゃんもお兄ちゃんがすごいと言っているわ」

 いや、それは子煩悩がすぎますよ、お母さん。

「しかし困ったぞ」

 お父様が急に困った顔をする。

「皆にはまだ話してなかったが、当家はライトスター家と縁を切ることにしたのだ」

 以前からライトスターと揉めていたようだけど、そこまで話が拗れていたのか。

「年が明けたら、バイエルライン公爵に新年の挨拶をしにいくのだが、トーマも連れていこうと思っていたんだが……」

 お父様が言うには、バイエルライン公爵が新しい寄親になり、お母さんはジークヴァルトがいるから共に留守番だけど、俺は挨拶に同行させようと思っていたらしい。寄子になって初めての挨拶は、家族ぐるみでお伺いするのが礼儀なんだとか。

 神官に長期に領地を離れることができないと言った手前、往復で十日くらい離れるのは微妙なラインだ。総本山にいくと、それこそ一カ月以上はかかる。それを考えると短いように思えるが、十日というと二回の仕込み分になるし、その間は酒の面倒もみられない。ジンさんとラムさんが安定的に特級酒を造れるようになれば、十日くらいはいいのだけどね。

「申しわけありません」

 神殿から文句を言われると面倒だから、ここはアシュード領で大人しく酒造りをするに限る。

「仕方がない。トーマには使命があるのだ。それを放置はできないからな」

 嘘をついていることに、心が痛む。だが、今はこれが一番いいと判断した。嘘をつき通すんだ、俺!



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] 酒の神より物作りの神の方がさらにそれっぽくなりそうですね
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