第25話 探索者と商人
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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第25話 探索者と商人
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俺とベンは順調にダンジョンを探索した。途中、何度か探索者に出逢ったが、気の良い人たちだった。
俺たちがダンジョンを出ると、兵士が無事でよかったと満面の笑みを浮かべてくれた。アシュード領の人たちは、本当に気の良い人たちばかりだ。アシュード領にやってきて、本当に良かったと思える。
ベンと屋敷そばの河原に向かった。この河原はダンジョンが発見されてから、常設の解体台がいくつも置かれ、探索者たちが自由に使えるように整備されている。
俺たちが狩ってきたモンスターを解体していると、探索者たちもやってきた。
「お、坊主たちも解体か? なかなかの獲物じゃないか」
ダンジョンの中で出逢った探索者のコズミさんだ。年は三十二歳でランク・B、属性・戦、加護・戦場の勇士、レベル・二百二十、戦斧を使う。結構強面だけど、喋ると気さくでいい人だった。しかし、レベル二百二十か。うちの兵士並みにレベルが高いな。
ロックスフォール騎士爵家は武闘派で名が通っていて、兵士の平均レベルは二百三十くらいだ。
冬になるとお父様を含めて何度も山籠もり(モンスターの間引き)をするから、レベルがグングンと上がるのだ。
レベル三百二十を超えたお父様の狩りにつき合うのだから、レベルが上がるのは早いのだろう。
「コズミさんは大物ですね」
「こんなもの、大物の内に入らないぜ」
そう言いながらもまんざらじゃないのか、胸を張っている。
コズミさんは同年代の四人と組んでダンジョンに入っている。そんなコズミさんが狩ってきたのは、レッドボアという魔獣だ。肉を燻製にすると、美味しいとベンが涎を垂らしていたのは記憶に新しい。
「このレッドボアの皮は火に強いんだ。だからいい値で売れるんだぜ」
「レッドボアはダンジョンのどこまでいくといるのですか?」
「三層にいるぜ。だがな、危険だから坊主たちはいくんじゃないぞ」
「「はい」」
俺たちは一層を探索して帰ってきたけど、コズミさんは三層で狩りをして帰ってきたのか。
レッドボアは肉よりも皮のほうが価値が高い。理由はさっきコズミさんが言ったように火に強いからだ。体長二メートルくらいのレッドボアの皮が二千Gで売れるのに対し、肉は五百Gくらいでしかない。
このクルディア王国の貨幣は一G銭貨・十G銭貨・五十G銭貨・百G鉄貨・五百G鉄貨・一千G銅貨・五千G銅貨・一万G銀貨・五万G銀貨・十万G金貨がある。
俺の感覚だと、一Gで十円くらいの価値があると思っている。
俺が造った馬王は一斗樽(十八リットル)を六千Gで商人に卸している。最近は馬王の需要がかなり高く、生産が追いつかない。
だから、本来は村人が安く買えるジンさんとラムさんが造った馬麦酒の半分を販売することになった。半分は村人用に格安販売を維持している。
俺の馬王を特級酒、ジンさんとラムさんの造ったもので出来がよいものを一級酒、出来の悪いものを二級酒と明記し、特級酒を六千G、一級酒を四千G、二級酒を三千Gで販売している。
一般的に流通しているワインの一斗樽が二千五百Gから三千五百Gだから、二級酒相当になる。でも、高級ワインは一万G以上するから、特級酒のほうが安い。
酒精(アルコール度)はワインが八から十五パーセントくらいに対し、馬王の二級酒で二十パーセント、一級酒で三十パーセント、そして特級酒だと五十五パーセントある。
話は逸れたが、解体を済ませた俺とベンは、素材を商人のところに持ち込んだ。肉はベンが食べるというので、俺も屋敷に持って帰ることにした。
「ロングラビットの毛皮が五枚だね」
ダンジョンの一層にはスライムもいるけど、スライムは売れない。だからロングラビットの毛皮を持ち込んだ。
「一枚二百Gで、五枚だから一千Gになるよ」
「ベンはこれでいいか?」
「俺は構わないぜ」
「それ―――」
「おいおい、子供相手に阿漕なことをしてんじゃねぇよ」
頭の上からした声は、コズミさんのものだった。
「それだけ状態がいい毛皮なら四百はするはずだぜ。そんなことしていると、悪い噂が立つぞ」
「これはコズミ様。はぁー、敵いませんなぁー。分かりました、一枚四百の五枚で二千Gでお引き取りします。それでよろしいですね」
「おう。次からはちゃんとした価格で引き取ってやれよ」
どうやら俺たちは商人にカモられていたようだ。商人から二千Gを受け取り、ベンと分け合う。
「コズミさん、ありがとうございます」
「おっちゃん、ありがとうな」
「おう。次は今の商人じゃなく、あそこの角の商人にしな。あそこは口は悪いが、買い叩くようなことはしないからよ」
「はい。そうします。ありがとうございました」
商人が違うと、買い取り価格も違うということを理解した。勉強になりました。
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