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第22話 意味深な話

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 第22話 意味深な話

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 ▽▽▽ Side カール・アクセル・バイエルライン公爵 ▽▽▽


 新しい年に入った際、新年の挨拶にやってきたロックスフォール騎士爵から、酒を贈られた。

 その銘は『馬王』。なんとも剛毅な銘であろうかと、笑ったのを覚えている。

 ロックスフォール騎士爵といえば、先代もそうだが現当主も豪の者と名が売れている。

 ロックスフォール騎士爵家が治めるアシュード領は、強力なモンスターの生息地に近いこともあり、レベル上げにはもってこいだ。だが、それだけ危険が伴なう場所でもある。

 話を戻すが、夏も近づいたある日、私は馬王のことをふと思い出した。そうなると飲みたくなるのが人の性だ。さっそく、馬王を用意させた。

「なっ!?」

 これは美味い! なんというまろやかな酒だ。酒精が強いのに飲みやすく、旨味が口の中に広がるのだ。

「たしか、アシュード領で造った酒だと聞いた。あの土地は穀物がほとんど取れないと聞いたが、わざわざ外から材料を購入して酒を造っているのだろうか?」

 あの時はあまり興味がなかったが、こんなことなら聞いておけばよかったわ。

「父上が昼間から酒とは珍しいですね」

 息子のアレクサンデルである。親の贔屓目もあるだろうが、アレクサンデルはとても優秀な子だ。日頃は王都の屋敷に詰めており、私の代理として政務を行っている。容姿は私に似ており、青い髪にエメラルドグリーンの瞳も同じだ。

 私には他に二人の息子と、娘が一人いた。だが、娘は十一年前に誘拐されて行方不明になった。犯人たちは追い詰めて捕縛したが、主犯格の男は抵抗したので殺してしまったのだ。その主犯格の男しか娘の居場所を知らず、それ以来行方不明になっている。

 だから、余計にアレクサンデルが可愛くてしょうがないのだろう。可哀想な娘の分までアレクサンデルを慈しむようになったことは自覚している。

 だが、娘のことを諦めたわけではない。死んでいるのなら、せめて遺骨を連れ帰ってやり、懇ろに弔ってあげたい。生きているなら、この腕で抱きしめてやりたい。娘がどのような境遇にあろうとも、私は決して見捨てたりはしないだろう。

「お前も飲むか」

「それでは一杯いただきましょうか」

 執事のセバスが酒を注ぎ、息子に渡す。

「ほう。これは初めて飲む酒ですね」

「うむ。喉越しもいいし、旨味もしっかりしている。よい酒だ」

「これは……マオウ? 馬王とは、なんとも面白い銘ですね」

「ロックスフォール騎士爵からの贈り物だ」

「ロックスフォール……あの豪の者のロックスフォールですか」

「うむ。アシュード領でこの酒を造り始めたそうだ」

「なんと! これは面白いことになりそうですね」

 息子が言うように、面白いことになるやもしれぬ。ロックスフォール騎士爵は、腐れ貴族のライトスターの寄子だ。ライトスターは最近代替わりをしたが、新しい当主も強欲な男だ。そんなライトスターが、これほど美味い酒を放っておくわけがない。上手くいけばライトスターの派閥を混乱させ、寄子らをこちらに引き入れる機会があるやもしれぬ。

 当家は王家の一員として、影を従えている。国内外問わず、多くの情報が入ってくる。前ライトスター侯爵家当主はクズだったが、寄子をまとめ上げる手腕はあった。だが、今のライトスター侯爵は本当にロクでもないと聞いている。おかげで幾人かのライトスター侯爵家の寄子が当家に接触してきている。ロックスフォール騎士爵もその一人だ。

 おそらく、現ライトスター侯爵は寄子たちが危機に瀕しても支援しないだろう。そういった信頼は大事だ。それがなければ、寄親・寄子制度は成り立たないのだから。

「父上。とりあえず、この酒を大量に購入しましょう。それでロックスフォール騎士爵に恩を売っておけば、いざという時はこちらに引き入れやすいでしょう」

「うむ。そうするか」

 派閥云々がなくても、この酒は美味いから購入するのは決定事項だ。

「セバスよ。出入りの商人を向かわせ、この酒を買えるだけ買い込み、今後も定期的に購入するように手配いたせ。値段はロックスフォール騎士爵が言う値に上乗せしてやるようにするのだ」

「承知いたしましてございます」


 酒の手配をしてしばらくした頃だった。ロックスフォール騎士爵のアシュード領にダンジョンができたという情報が舞い込んできた。

「まだ出来たばかりのダンジョンか。ロックスフォール騎士爵は当たりを引いたな」

「ダンジョンは富をもたらします。ですが、果たしてロックスフォール騎士爵家にとって、これが当たりになるでしょうか」

 息子のアレクサンデルが疑問を呈したのは、ライトスターのことだろう。強欲の悪魔が人間の皮を被っているような男だ。ロックスフォール騎士爵家から馬王やダンジョンを奪おうと、画策していることだろう。

「手の者を入れておくか」

「それがよろしいでしょう。ついでにロックスフォール騎士爵にも父上の書状を送ってください。内容はなんでも構いません。こちらがロックスフォール騎士爵を気にしているという印象を持たせる感じでお願いします」

 我が息子ながら、本当に優秀であるな。

「分かった。書状を送っておこう」

「セバス。馬王の件はどうなった?」

「一斗樽で二十樽を購入いたしました。今後も定期的に購入することで合意しております。若様」

 高級ワインよりは安いが、それでも一般的に流通しているワインよりは高い値段である。ロックスフォール騎士爵家はいい収入源を得たということだな。

 しかもダンジョンまで手に入れたのだ、これからアシュード領は発展していくことだろう。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
 行方不明の娘さんって、もしかして奴隷になって売られた先は……あの家?
これ誰でもママさんって分かるような書き方にあえてしてるよね。後で判明したときに安直とかバレバレだとか言って得意気になってる奴いたら笑うわ。
行方不明の娘さんは。。。(´;ω;`)
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