第118話 ゴリアテの陰謀
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第118話 ゴリアテの陰謀
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▽▽▽ Side カトリアス派三総大主教マッカラン ▽▽▽
おのれ、クルディア! おのれ、ロックスフォール!
余は総大主教だぞ! その余の思い通りにならぬことがあってはならぬのだ!? 何が使徒だ!? 悪魔ではないか!? 許さんぞ! 絶対に滅ぼしてくれるわ!
「ずいぶんと荒れているわね」
「ゴリアテか!?」
「少し落ち着きなさいよ」
「余は落ちついておるわ!」
「あっそ。じゃあ言うけど、あの計画を前倒ししなさい」
「あの……計画……なんのことだ?」
「あらあら、とぼけちゃって~。マッカランがこそこそやっていることくらい分かっているわ」
「……貴様が協力するというのか?」
「あら、話が早いわね。これを読んでちょうだい」
ゴリアテから書類を受け取り、読み進める。
ほう、これは面白い。
ゴリアテめ、よく調べておるではないか。
「どう? それなら、マッカランの気も晴れるんじゃないかしら?」
「貴様、このようなものを寄こして、何が目的だ?」
「あら、心外だわ~。今はこのカトリアス聖王国存亡の危機なのよ? あたしたち総大主教が手を取り合い、この苦難を乗り切らないといけないと思わない?」
こいつがそんな殊勝なことを考えるわけない。この裏には、必ず何かあるはずだ。
「ウフフフ。聖王様もそろそろお年だから、次の聖王にはリプトン様をと思っているわけ。どうかしら?」
リプトンはゴリアテの血族だったな。次の聖王に就けるために、余に協力を求めるわけか。
「いいだろう。次期聖王はリプトンでいい」
「ウフフフ。聞き分けがいい子は嫌いじゃないわ」
ふん。貴様などに嫌われておろうが、構わんわ。だが、ゴリアテの協力があれば、計画を進めることができる。
待っておれよ、ロックスフォール! 貴様らに目にものを見せてやるわ!
▽▽▽ Side ベン・フレイムバルク ▽▽▽
暇だ! せっかく戦えると思ったのに、暇すぎる!
なんで俺が後方待機なんだよ!
バルツァーのオヤジ殿は主席幕僚として総司令部に詰めているらしい。なんとか俺を前に出してもらえないか、頼みにいこう!
「おいトーマ」
「なんだ?」
「総司令部に伝令とかないか?」
「……お前、自分だけで前線に出ようと直談判するつもりだな?」
「そ、そんなことはないぞ!」
「目が泳いでいる。まったく……はぁ~。今、伯父上と軍務卿に書状を書くからちょっと待て」
「本当か!?」
「だけど、あまりエーレンフリート殿下に失礼なことをするなよ」
「おう、任せておけ!」
書状を受け取った俺は、部隊を率いて総司令部へと向かった。
「あぁん!? 俺がこんなところで書類仕事してるのに、お前だけ前に出るだと?」
「オヤジ殿は軍務卿なんだから書類仕事は当然だろ? 俺は下っ端だぜ? なんでオヤジ殿よりも後ろなんだよ!?」
「うっせーよ! 俺より前に出るなら、俺を倒してからいけ!」
「よし、ぶっ飛ばす!」
「やってやろーじゃねぇか!?」
「止めんか!」
アレクサンデル・アクセル・バイエルライン公爵だ。トーマの伯父だから、よく顔を合わすオッサンだ。
「二人ともここをどこと心得るか!? カトリアス聖王国侵攻軍総司令官であられるエーレンフリート王子の御前だぞ! いい加減にしろ!」
「「ちっ」」
だから内密でって言ったのに! なんでこんな場所で会うとか言うんだよ!?
「ベン・フレイムバルク騎士爵。貴殿はロックスフォール侯爵の麾下であろう。自分の職務を全うするべきではないか?」
今度は王子かよ。
「書類仕事はそこにいる舅よりも苦手な俺じゃなかった某には、後方待機でできることはありません!」
ドヤッ!?
「威張って言うことか……。まったく……」
「殿下、申しわけございません。ロックスフォール侯爵にはしっかり手綱を握るように申し伝えますので、ここは穏便にお願いしたします」
「よいよい。力が有り余っているのだろう……。フレイムバルク卿、私が許す。ラインハルトの軍に加わるがいい」
「マジっすか!?」
「こら、ベンッ!? 殿下になんという口を利くか!?」
「すみません。殿下、感謝します! では、俺はこれで!」
殿下の気が変わらないうちに早足で出ていこうとしたら、襟首を掴まれた。
「お前だけ前線に出るのは許さん!」
「オヤジ殿。俺には総司令官たる殿下のお許しがあるんだぜ? いくらオヤジ殿でも、俺を止めることはできねぇぜ!」
「ぐっ……。殿下、某も!」
「却下」
「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
まあ、がんばれや。オヤジ殿。
しかし、殿下もいいヤツじゃないか。こうなったら、カトリアスのヤツらをぶちのめして恩返ししないとな!
「おい、フレイムバルク卿」
またバイエルライン公爵だ。
「なんすか?」
「お前はラインハルト殿下の第三軍団に所属するロックスフォール男爵の麾下に加われ。ロックスフォール男爵の指示にはしっかり従うんだぞ」
「アイアイサー!」
「これは命令書だ。持っていけ」
「ありがとうございます!」
いやー、言ってみるもんだな!
バイエルライン公爵は疲れた顔をしているが、書類仕事が大変なんだろうな!? 俺にはできないことだから、がんばってくれ!




