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第108話 怨念

 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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 第108話 怨念

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 夏も終わりに近づいたある日のことだ、お婆様と一緒に昼食を摂っていたら爆弾が落ちた。


「トーマちゃんもそろそろ婚約者を決めないといけないわね!」

「ゲホッゴホッゴホッゴホッ」


 丁度肉を飲み込もうとしていた時だったので、喉につっかえて咳き込んでしまった。


「俺はまだ―――」

「来年になったら成人なのよ。婚約者の一人や二人いてもいいわよ」


 一人はともかく、二人はどうなの? 俺はハーレムなんて望んでないよ。


「あの人はわたくしが王女だったから、わたくし以外の女性を娶ることはなかったけど、トーマちゃんはそんなこと気にしなくていいのよ」


 女性に興味ないわけじゃないけど、今は女性よりも優先してやることがある。あの神使クズたちを引きずり下ろし、デウロ様を再び唯一神として皆に信奉されるようにするという大事なことがあるのだ。


「同じ年のラインハルト王子は婚約しているのよ」

「いや、ラインハルト君は王子だから」

「トーマちゃんは侯爵よ。正式な侯爵家の当主なのだから、遅いくらいだわ」


 お婆様が夢見る乙女のような目をしている……。

 俺のことはさておき、ラインハルト君は婚約した。三年前のことだ。その相手はなんとバイエルライン公爵家のローゼマリーだ。つまり、俺の従姉だね。

 ローゼマリーのほうが三歳年上だけど、姉さん女房のほうが家庭は上手くいくと国王は言っていた。その国王も姉さん女房をもらっている。今の王妃だ。


「俺はまだ未熟で、そんなことを考える時期じゃないから」

「トーマちゃんは自己評価が低すぎるわ!」

「ぇぇぇ……」


 お婆様が力説を始めてしまった。

 俺のことを思ってくれるのはありがたいけど、こっちは困惑しちゃうよ。


「全てわたくしに任せておきなさい! そこで、トーマちゃんの好みを聞かせてくれるかしら?」


 お婆様の圧がすごい。だが―――。


「相手は俺が見つけるか―――」

「もうお目当ての子がいるのね! どんな子なの!?」

「あ、いや……」


 結局色々聞かれてしどろもどろに答えることになった。


「トーマちゃんの好みの女性は、色白で文武両道で、しっかり者で、トーマちゃんと話が合って、できれば容姿端麗のほうがいいのね!」

「あ、はい……」

「全てわたくしに任せておきなさい! きっといい相手を見つけてみせるわ!」

「……よろしくお願いいたします」


 善意から仰っているから、断ることができない。とりあえず、のらりくらりと躱していくことにした。





 学園から帰ってくると、いつもは貴族の診断がある。懇意にしている人は年二回、定期的に診断するようにしているんだ。

 だが、今日は貴族服に着替えてお爺様と城に向かうことになっている。

 そう、国王の治療の許しが王妃から出たのだ。

 俺は見てないけど、国王が王妃にけちょんけちょんに言われて小さくなっていたらしい。お爺様はその光景を見ていたそうだ。どういう気持ちで見ていたのか……?


「トーマ! 待っていたぞ!」


 国王が抱きつこうとしたので、さっと避けた。国王は空振りした腕のいき場を考え込んでいる。放置しよう。

 お爺様と共に、ソファーに座っている王妃に挨拶する。

 もうね、国王に敬意とか不要だよ。公式の場以外ではね。


「ようきてくれたわね。座ってたもれ」


 俺とお爺様が王妃に促され座ると、国王はゴホンッと咳払いをして席についた。


「こんなことに時間を使うのはもったいないわ。さっそく国王あれを診てくりゃれ」


 この場は王妃が仕切っている。国王は小さくなって座っているだけだ。その国王を情報変換で見ると、やっぱり肝臓が弱っていた。


「後日薬を用意します。国王陛下は一カ月は禁酒です」

「なっ!?」

「その後は三日に一回、コップ一杯だけです」

「そんなーっ!?」

「何か文句があるというのかしら?」

「いえ、なんでもないです!」


 王妃がひと睨みすると、国王は従順な子羊になった。

 その後はお爺様と国王は密談をしに別室に、俺は王妃に連れられてドナドナ~。





 ▽▽▽ Side 三総大主教マッカラン ▽▽▽


 くそっ! なんでこうなった!?

 全ては王子と使徒と称するガキの拉致に失敗したことから始まることは理解している。だが、なぜこうも上手くいかぬのだ。

 クルディアの者どもが敵対してくるのは分かる。周辺国が全て敵に回ったのはどういうことだ!?


 思い通りにならぬことが多すぎて、最近は酒の量が増えている。それが分かっていても止められぬ。

 心が重いと体まで不調になるわ。最近は視力が落ち、あちこちの関節が痛くなり、倦怠感を感じるようになった。

 おかげでこの酒が手放せない。クルディアから密輸している酒だが、美味いのだ。


 酒はいい。だが、ゴリアテのヤツがデカい顔をしているのは許せん! 余の勢力をいつの間にか切り崩していきやがった。

 アーサーはそのことにさえ気づいていない莫迦だ。ゴリアテをこのままにしておいたら、余の地位が脅かされる。あいつは絶対に余を追い落とそうとしている。


「こうなったら……」


 殺るしかない。あいつが売ってきた喧嘩だ、殺されたとしても文句はないだろう。

 ゴリアテを殺し、クルディアらに目にものを見せてやる。そのために必要なのは戦力だ。


「そうだ、勇者を召喚すればいいのだ。勇者さえ味方にすれば、ゴリアテなどどうにでもなるわ! ククク」


 余を莫迦にしてくれたことを後悔させてうやる。そして余を裏切った者らに死を与えてやるわ!


「だが、勇者召喚には時間がかかる。間に合うか? いや、間に合わせるのだ! なんとしても間に合わせ、余を莫迦にしたゴリアテを屠ってくれる!」



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
 王酒が戦略物資になっている……密輸の皮を被ったボディーブロー。じわじわと。
あれ?この酒ってもしかして酒王?
善意の押し売りが一番厄介なんだよねえ。 断った方が悪者になっちゃうから。 ストーリーを強引に進める為には便利なんだけど。
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