第100話 デウロ神殿の運営メンバー
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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第100話 デウロ神殿の運営メンバー
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今日は船で総本山へやってきた。
神官たちが総出で歓迎してくれる。大げさな歓迎に引きながら、手を振って歩く。なんだか元の世界の皇族みたいだと思いながら、神殿の中へ。
今日も最初はデウロ様の像に祈りを捧げる。今回はお声をかけてくださらなかった。残念。
立ち上がって振り返ると、神官たちがデウロ様の像に祈っていた。
こうやって見てみると、デウロ信徒が増えていることが実感できる。フフフ、このままもっと増えていってほしいものだ。
教皇の部屋に入ると、座り心地のよいソファーに体を預ける。
「お久しぶりです、教皇猊下」
「こちらこそご無沙汰しております。使徒トーマ様。この老体ゆえ、なかなかご機嫌伺いもできず、申しわけなく思うております」
教皇がご機嫌伺いとか止めて!
絶対大騒動になるからね。
「そろそろ教皇の座を次代の者に引き継ごうと思うております」
「まだまだお元気ではないですか」
「体が動くうちに身を引いたほうが、混乱なく引き継げると思うているのです」
「混乱するのはよくないですね。そうだ、これを飲んでみてください。元気が出ると思いますよ」
俺は異空間倉庫から一本のガラス瓶を取り出した。
これは馬王の蒸留酒に漢方を混ぜた薬膳酒の一種になる。ただ、一般販売している三種類とは別物だ。
「これは?」
「薬膳酒になりますが、いささか生産が難しいものなので、一般販売はされていません。ですが、飲んでいただければ、少しは元気になりますよ」
「そんな貴重なものをよろしいのですか?」
「貴重なものでも、使わなければ意味がないのです」
これは長活酒という薬膳酒になる。長く活き活きと暮らせるという意味だ。
お爺様とお婆様、ダルデール卿と教皇用に造ったもので、製法が結構面倒で漢方もとても手に入れにくいものだから量産はできていない。
「それに、教皇猊下には要望を聞き入れてくださり、感謝しています。そのお礼です」
バルド領に建設中の神殿を、《《デウロ様だけ》》を祀る神殿にすることを認めてくれたお礼だ。
「一日一回、寝る前にこの小さなコップに一杯だけ飲んでください。それ以上を飲んでも意味がありませんので、かならず一杯で収めてくださいね」
「承知いたしました」
さて、本題に移りましょうか。
今日は教皇にお礼しにきたのもあるけど、新しい神殿の面倒を見てもらう人たちとの面会が最大の目的だ。厳選に厳選を重ねた結果、このような人たちになった。
枢機卿が一人、大司教が三人、司教が五人、司祭が十人、副司祭が二十人、助祭が二十人、副助祭が五十人。神殿長は枢機卿が就任する予定である。
俺はこの人選が妥当かを確認することになる。
こちらの選定は予め神殿で行なわれており、全員のステータスを確認していると聞く。
それなのに、デウロ信徒ではない人が紛れ込んでいる。
「そこの神官さん、名前を聞いてもいいですか?」
「わたくしめはサーギ・シダンと申します」
慇懃に礼をしたサーギ・シダンに、前に出るように促す。
「確認します。あなたはデウロ様を心から信奉されていますか?」
「もちろんにございます」
「もう一度聞きます。これが最後です。あなたはデウロ様の信者ですか?」
「はい。私はデウロ様のし……あがっ……うっ」
サーギ・シダンは苦しそうに膝をついた。
「な、何を……?」
「あなたのステータスを見せてください」
「………」
(ステータスは偽装してあるが、偽装している感覚が切れてしまった。おそらく今は偽装されてないだろう。だが、偽装し直せば……何っ、偽装が使えないだと!? なぜだ、俺の偽装がなぜ発動しないんだ!? 完璧な偽装だったはずだ、見破られることなど万が一にも……まさか、本当に使徒なのか? そんな莫迦な! このガキも俺と同じ詐欺師に違いないんだ!)
神官は焦っているのか、瞳孔が開きっぱなしだ。
「ステータスを見せることができませんか?」
「そ、それは……」
「俺の前でデウロ様に関する嘘は通じませんよ」
「うっ……」
サーギ・シダンは膝立ちだったが、腰が床についた。諦めたのかな?
「トーマ様。この者がいかがされたのでしょうか?」
「ステータスを見ればわかりますよ、教皇猊下」
「サーギ・シダンよ。ステータスを見せよ。……見せぬというのであれば、仕方がない。ダルデール卿よ、確認を」
「はい。お任せください」
「光の大神ライトルイド様に祈りを捧げます。ステータス・ディスクロージャー」
通常、ステータスを表示するのは本人の意志によってのみ行われるが、光魔法のステータス・ディスクロージャーは強制的にステータスを見ることが可能になる魔法だ。
光魔法のステータス・ディスクロージャーはシャーミーも使えるが、ランクAの加護・聖光の魔導師のシャーミーでもレベル二百五十になった際に覚えた。
ダルデール卿はランクBなのでレベル三百くらいで覚えるはずだ。
つまり、ダルデール卿もレベル三百を超えるほんの一握りの人物ということである。
「この者はデウロ信徒ではございません。教皇猊下」
「どういうことであるか? ステータスをしっかり確認したはずではなかったのか?」
「おそらく偽装のようなスキルを持っていたのでしょう。ですが、使徒であらせられるトーマ様の前でデウロ様に関する嘘をついたことで神罰が下り、ランクがFまで下がってスキルがなくなったと思われます」
「そ、そんな……俺は……ああああああああランクがランクがっ!?」
「神を謀る者はこうなるのです」
「うわぁぁぁぁっ、俺のランクを返せ! ランクを!」
サーギ・シダンは跳びかかってきた。
ランクFの村人の動きはまるでスローモーションだ。だが、俺の前にシュザンナ隊長が立ちはだかり、サーギ・シダンを蹴り飛ばした。
「ギャーッ」
シュザンナ隊長がいくら手加減しても、かなりのダメージを負うことだろう。ステータスを見たら脇腹の骨が三本折れていた。
「この者を捕縛せよ」
シュザンナ隊長の凛とした声が響き渡ると、神殿騎士がサーギ・シダンを押さえ込んだ。
「使徒トーマ様、申しわけございません」
「いえ、教皇猊下の責任ではありません。こういう輩はどこにでもいますから」
「トーマ様の寛大さに感謝を」
教皇が頭を下げるので、慌てて上げるように言う。人前で教皇が頭を下げるのは勘弁してほしい。
「さて、他に俺に言うことがある人は手を挙げてくれるか」
居並ぶ神官たちに鋭い視線を向けると、数人の顔色が変わった。
そう、ここにはまだデウロ信徒でない人が三人も混ざっている。
「自己申告してくれれば、デウロ様は寛大なお心で許してくださると思うよ」
「使徒トーマ様、まだステータスを偽っている者がいると仰るのですか?」
「デウロ様への信仰は、俺にも感じるのです」
これは嘘ではない。ステータスを情報変換で見なくても、なんとなくデウロ信徒かそうでないかは分かる。親近感みたいな感覚があるからだ。
「これが最後だ。今すぐ手を挙げろ」
二人が手を挙げた。
そして手を挙げなかった一人が、その場に崩れ落ちた。
ランクがワンランク落ちるだけで、結構な脱力感があるらしい。それがツーランクやスリーランクになればかなりのものだ。
日頃武術などで体を鍛えている人はまだいいが、そうでない人はそれだけで気絶しそうになるほどらしい。
「教皇猊下。この四人を除いた方々に、デウロ様の神殿をお任せしたいと思います。それでよろしいですか」
「もちろんです。使徒トーマ様の仰るようにいたします」
「ありがとうございます」
今回偽デウロ信徒の四人は、司教が一人、司祭が一人、副司祭が二人だ。
よって、デウロ神殿の運営は枢機卿が一人、大司教が三人、司教が四人、司祭が九人、副司祭が十八人、助祭が二十人、副助祭が五十人になる。
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