第99話 神殿を巡るあれこれ
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
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第99話 神殿を巡るあれこれ
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▽▽▽ Side サーギ・シダン ▽▽▽
「新しい神殿の話を聞いたか?」
「ああ、聞いたぞ。なんでもデウロ神殿にするんだってな」
「ヒヒヒ。金の臭いがするぜ」
仲間の三人がアッフェルポップを飲みながら陽気に話をしている。
俺たちは詐欺師やペテン師などの集まり、カイジン団だ。そして俺はカイジン団のリーダーをしている。
結成は二十年も前になるか。今は神殿に紛れ込んでいる。神殿というものは、金の生る木だとつくづく実感するぜ。ヘヘヘ。
「この利権に絡まないわけにはいかないな。何せ今回は使徒様に関するものだ。その利権は膨大な金を産むぜ」
「だが、総本山を放置するわけにはいかない。半分をデウロ神殿に回すか」
「ああ、それでいこう」
俺の提案で総本山に五人が残り、デウロ神殿に四人を回すことが決まった。俺もデウロ神殿に移籍する神官に紛れ込むことになった。
デウロ神殿へはデウロ信徒のみが移籍できると聞いた。
さっそくステータスを偽装してデウロ信徒にした。これまで俺の偽装は誰にもバレなかった。俺は最高の詐欺師さ。
▽▽▽ Side 総大主教ゴリアテ ▽▽▽
「容易ならざる事態である」
「まさか覇天がこうも脆いとはな」
クルディア王国に派遣していた覇天が全滅したわ。あの国には覇天の五割以上の人員を割いていたのに、連絡が完全に途絶えたの。
これには少し予定が狂ってしまったわ。でも、悪いことばかりじゃないのよね。
クルディア王国へは、マッカランとアーサーが覇天を送っていたの。特にマッカランは長であったビシュノウを従えていた関係で、ビシュノウが失敗して支配下にあった覇天の全てをクルディア王国に向かわせたわ。その覇天が壊滅したのよ。今のマッカランは丸裸ね。
元々覇天内の勢力は、マッカラン五割、あたしが三割、アーサーが二割だった。
それが今では、私の勢力が八割、アーサーが一割、マッカランが一割ね。アーサーもクルディア王国に覇天を派遣し、かなり配下を減らしたの。
つまり、国内の情報はあたしが握っているということ。ウフフフ。
このカトリアス聖王国は、その名の通り聖王がトップにいる。でもね、聖王に実権はないわ。実権を持っているのは、あたしたち三総大主教なの。
今回の覇天の勢力変化はいい機会ね。総大主教は一人いればいいの。マッカランもアーサーも要らないわ。
すでに二人の派閥の切り崩しはしているのよね。覇天が壊滅状態になったマッカランのところは動揺が大きいわ。そこにつけこんで、あたしの派閥に引き込んでいるのよ。
アーサーのほうは元々脳筋が多かったから、ちょっと厄介だわ。でも、全員が脳筋というわけではないから、そこら辺から切り崩し工作を行っているの。
マッカランもアーサーもお莫迦さんだから、助かったわ。ウフフフ。
▽▽▽ Side ダルデール卿 ▽▽▽
この数年、体の調子がいい。長年悩まされていた冷え性も肩凝りもかなり収まった。これもトーマ様がお造りになられた薬膳酒を飲んでいたおかげでしょう。
トーマ様とアシュード領で初めてお会いしてから、もう四年が経過したのですね。あっとういう間の四年でした。
私ももう七十を超え七十一歳になってしまった。そろそろこのお役目を辞すべき時期にきているのかもしれない。
教皇様も退位をお考えになっておられることですし、私もそれに合わせて職を辞すことにしましょう。
今の教皇様はとても素晴らしいお方です。ですが、次代の教皇が素晴らしい方とは限りません。
教皇は世襲ではありません。枢機卿の中から選ばれるのです。その教皇選挙は、枢機卿のみが投票権を持っています。
問題は有力な教皇候補がいないということでしょうね。枢機卿の半数は公明正大であり清廉潔白な方たちです。ですが、残りの半分は悪い噂を聞くこともある人たちです。できれば前者の方が次の教皇になっていただきたいものです。
今回、トーマ様がバルド領に入られる前に、総本山へお越しになります。新しく建設中の神殿をデウロ様のみを祀るデウロ神殿にするという決定が下されたことへのお礼という名目です。
ですが、本当は別の目的があります。私もトーマ様につき従い、総本山へ参ります。体調は以前よりいいものの、長旅は少し堪えますね。
ですが、トーマ様の偉業に少しでも関われたことは、私の長い人生の中でも最大の喜びです。不謹慎かもしれませんが、とても楽しいのです。もう少しだけトーマ様のそばでお仕えいたしたいですね。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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