前世へ行く
5章
雨が降っている。あの店は開いているのだろうか?
その場所に行ってみた。普段はないのにまたあの
カフェがあった。私はカフェに入り寛樹と前世で会った事はないのか、会った事があるならその時代に行きたいと店員さんに頼んだ。店員さんはうーんと考えた後「それでは、このお飲み物をお飲み下さい」と
ビターキャラメルラテを差し出した。
私はそのビターキャラメルラテを飲みほすと目の前が真っ白になり、大昔ののどかな風景と変わった。
「伽耶姫さま」と誰かを探している下臣たちの声が聞こえる。伽耶姫は森の中にある川が流れる人が来ない様な所にいた。歳は16か17歳ぐらいで内側から放つオーラが美しく目が大きくて綺麗な顔立ちの娘だ。
この人が私の前世?
「わたくしも1人の時間がほしい、ここに来るとホッとする」と伽耶姫は川の流れをジッと見ていた。
その時、ガサッという音がした。振り向くとヘビが出てきた。伽耶姫はキャーっと大声で叫び怯えて動けなくなっていた。するとスッと青年が現れヘビを追い払った。「ありがとうございます。」伽耶姫がお礼を言うと青年は照れ臭そうに笑った。その瞬間、伽耶姫は恋に落ちた。2人は人に隠れて会う様になった。
彼は勝喜といい寛樹だった。勝喜は農民で伽耶姫とは全然位がちがう。だが2人は段々惹かれあっていった。そんな時、伽耶姫の18の生まれた日に婚礼がきまったのである。伽耶姫は勝喜に「一緒に逃げて下さい」と頼んだ。勝喜は悩んだ末に「次の満月の夜あの丘でまっています」と約束をした。
満月の夜、伽耶姫はそっと屋敷を出て約束の丘へ
走って辿りついた。だが、勝喜は来なかった。
伽耶姫は次の日もまた次の日もずっとずっと待ち続けた。「嘘つき」伽耶姫の瞳は涙でいっぱいになった。
騙されたのかひと時の夢だったのか…
伽耶姫は婚礼の日が来てしまい嫁ぐことになったのである。
その頃村では流行り病が広がっていた。
天然痘といって高熱が出てやがて顔や手足に発疹が出る恐ろしい病気だ。勝喜もその病にかかってしまったのだ。ジリジリと体が燃え盛る様に熱く火に炙られている状態で涙を浮かべながら「ごめん。寂しい思いをさせて」…と言い残しこの世を去った。
私は元の世界に戻った。そうか…
過去世からの思いを引きずっていたのか?
メニューを見ていると生まれる直前の世界と書いてあるものに目が止まった。チョコレートパフェガトーチョコラを頼んでみた。
食べ終わると辺りがザワザワとざわついており、閻魔大王の様な人に自分は生まれ変わったらこの様な試練に打ち勝ち魂を磨きます…と書いて提出しているようだ。しかし、閻魔大王は「このくらいじゃ魂は磨かれない。やり直し」とそう簡単には、承諾をしてくれない。私達は大きな試練をいくつもいくつも自分なら出来ると誓い両手にその願いを強く持ち生まれてくるんだ。立ちはだかった壁は偶然ではなく必然なのだ。
私は店を出て歩いていると急に胸に激痛が走り背中まで貫通した痛みに襲われ倒れた。救急車を呼ばれ、病院に運ばれた。10時間の手術を受けたが亡くなるかもしれないと医者に言われた。私は眠らされる薬をうたれ、15日間眠り続けた。亡くなるはずだった私は目を覚ました。体中が激痛で毎日拷問をされているかの様だった。座る事も出来ず横になる事も出来ず、苦痛が襲いかかった。まだ、こんなにも修行をしなくてはいけないのか?私の魂はこれで、もっと磨かれていく。私は魂の神に愛されている。
前は不平不満を並べて立ててばっかりだったが、座れる事の尊さ、ましてや自分でトイレをしたり食事をしたりお風呂に入ったり当たり前と思っていた事が幸せだったのだ。私は地道にリハビリを頑張り退院した。
そして、マッチングアプリを辞めた。
私は1人になるのが怖かった。でもこれからは、自分の足でちゃんと立って生きていきたい。
あと1枚あのカフェの件が余っていたな…
雨が降る日に行ってみた。
20年後に行ってみようかな…
ホットチョコレートを頼んで飲んだ。
近代化した世の中は高齢者が自分の好みのAIと腕を組んで散歩したり、食事をしたりしている。
もちろん、車もA Iが運転してくれる。
私はというと、自分好みのA Iを頼んでいるところだった。寛樹と一緒に…
完