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〜僕の初恋は〜

あの日は今日のように日差しが強い快晴だった。


小学3年生の頃だ。人との付き合いが分からず、今日も1人砂場で遊んでいた。

「ねぇ何してるの?」

後ろを向くと、日本人には珍しい白髪の女の子が立っていた。

「…砂、遊び」

「楽しそうだね、私も入れてよ」

年上だろうか、身長は僕より高くて見上げないといけなかった。

「うん、いいよ。」

僕は目線を下に落とし、そう言った。人と遊ぶのはやけに緊張するからあまり好きではないが、この子もどうせすぐに僕の元を離れてしまうんだ。

「名前は?」

「遥斗。そっちは?」

「陽向」

僕たちは何気ない会話を交わしながら、砂場で遊んでいた。陽向は僕と話しる時何度も笑ってくれた。僕の胸は高なった。陽向の笑顔は太陽のように眩しくて取り込まれてしまいそうだったから。


日が落ち始めた頃、やっと砂山が完成した。2人とも砂だらけになっていたが達成感のあまり、何度も手を叩きあった。

「できたね!」

陽向が微笑みながらそう言った。

「う、うん!」

僕は嬉しさと陽向のことを知りたいという気持ちで自然と脈が早くなる。

「ねぇ陽向」

「遥斗!帰るわよ」

僕が陽向に話しかけたと同時に親の声が聞こえた。僕は母親の元に走った。また会える。きっとあえる。

「遥斗!またね」

そう言って、満面の笑みで手をぶんぶんとふってくれた。

「うん!陽向!またね!」

僕は母親に今日のことを何度も何度も繰り返し話した。


次の日僕は急いで公園に行った。陽向に会いたい。早く。1秒でも早く。陽向__

「陽向!」

僕は公園に向かってそう叫んだ。陽向はいない。まるで時間が止まったかのように僕の頭はぐちゃぐちゃになった。

何時間も待った。陽向は一向に来なかった。また1人砂場で遊ぶ。

「やっぱり離れていくんだ。」

僕は1人絶望の下を歩いていた。


「…嫌な夢」

17回目の春、今日から高校2年生だ。目覚めは最悪。今まで思い出すのも苦かった夢を見てしまった。

「くそ…」

目元が隠れるような前髪を垂らしてだらしない真っ黒な髪を2、3回ブラシでとく。朝食を食べに1階におりると、トーストが1枚皿の上に置いてある。急いで口に入れ、僕は家をでた。


今日は1年生の入学式があるからと、僕たち2年生と先輩は準備があるからと、早くから学校に行かなければならなかった。みんな「めんどくさい」と不服な声を上げていた。正直いって僕もできるなら行きたくなかった。そうこう考えてる間に学校に到着していた。「入学式」と書いてある看板にを他所に校舎に入った。


教室には誰1人いなかった。「入学おめでとう」そう書いてある黒板を見る。どこの教室に入っても祝えるように…きっとそういうことだろう。僕はゆっくり教室に入り、窓際の僕の席に腰を下ろす。僕は陰キャだ。

鞄からいかにも怪しげなブックカバーのついた小説を手にして、読み始める。

5分…10分…15分…1時間

流石におかしい…1時間経っても人が来ないのだ。1度教室をでると、扉上に『1ー3』そう書いてあった。僕は焦り、廊下を走った。よく聞くと、入学式のような声が聞こえる。僕は足を早めた。

ドンッ

僕は尻もちをついてしまった。こんな少女漫画みたいな状況になっている場合ではなかった。

「すみません!!」

僕は顔も知らない誰かに謝ってそそくさと走った。入学式はちょうど終わったのか1年生達が体育館からでてきた。

それを見ると、諦めるしかかなかった。

息を整え、目立たぬように体育館に入って、椅子に座る。出席番号で並べられた椅子は苗字のおかげで1番後ろ。人に気付かれず入ることが出来た。


無事に入学式も終わり、1年生〜3年生全員が午前中に帰ることになっていたため、1年生の姿をチラチラと見ながら、帰った。

校門を抜ける頃だった。

「すみません」

そう声が聞こえた。少し低い声で男かと思ったら女だ。僕よりも小さい背丈で、花ピンが胸元についていた。

「これ机の中に入れっぱなしでしたよ」

そう言いながら、彼女はブックカバーのついた本を差し出した。

1年の教室に忘れたものだった。

「あ、!ありがとう…」

僕は本を手にする。

「あの…もしかして、遥斗…さん?」

彼女は大きな瞳で上目遣いをしながら僕に聞いた。

「え、うん」

「よかった…僕陽向だよ…わかる、かな」

ヘラりと微笑むと、すぐにわかった。

「え!?ま、待って!3年生の頃遊んだ?!」

「うん!そうだよ、」

照れくさそうに陽向は言った。

「あの日以降会えなかったね…」

昔を懐かしむような瞳で陽向は言った。

「一緒に遊んだ次の日…なんで来なかったの?」

ずっと聞きたかったことを口にすると、陽向は困ったような表情を浮かべて言った。

「あ、それは…」

ゴクリと息を飲んだ。なんて言われるんだろうか。

そんな期待が胸を締め付けた。

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