最悪だ(ザック視点・ざまあ)
「はぁ……どうにか帰ってこれたね」
カイルが汗を拭いながらギルド見渡して安堵する。
だが、ザックは違った。
「て、てめえ!!」
「ザック!?」
ザックはカイルの胸ぐらを掴み、思い切り殴った。
彼は焦っていたのだ。このパーティーの代表だから分かっていたのだ。
自分たちが依頼を失敗するということがどういう意味かを。
ザックと他のメンバーとでは考えの食い違えがあった。
カイルたちはとにかく生き残ることを優先していたが、ザックは依頼をクリアすることに命をかけていたのだ。
なぜなら、自分たちがSランクだからである。
ターリ伯爵からの信用もあった。
これで失敗したらどうなるか。ザックは一番理解していたのだ。
「依頼を失敗したらどうなるか分かっているんだろうな――っ!?」
ザックは痛む体を押さえる。
かなり傷が深いようだ。様子を見てか、受付嬢が慌てた様子で医療班を呼んでくれた。
治療を受けながらも、ザックは二人に叱責する。
「馬鹿野郎! どうして帰還した!」
「だって……」
「そ、それは……」
「俺たちなら勝てたはずなんだ! なのに!」
しかし、ザックはそこで言葉が詰まる。
理由は明白だった。
どうして自分たちが急に弱くなったのか。
少し心当たりがあったのだ。
他のメンバーも同じらしい。
「ねえ。アランがいなくなった途端これって……何かおかしくない?」
「リサ、何言ってんだ。俺たちが間違っていたって言っているのか?」
だが、信じたくなかった。
自分たちがアランを追放したことによって、今このような現状になっていることを。
「リサ。それはないよ。だって、僕たちはSランクなんだよ?」
「だって……オークすら倒せなかったんだよ?」
「リサ。お前さ、ちょっとこっち来いよ」
「どうしたのザック――」
ザックは医療班を払い除け、リサに殴ろうとした。
咄嗟にカイルが前に出てリサを守る。
「ザック! 仲間割れはよくない! とにかく状況を整理するべきだよ!」
「うるせえ! お前らこそ状況を理解していない!」
そう。彼らは状況を理解していない。
ザックは焦っていた。これからどうなるのか理解していたからだ。
「すみません、ザック様」
受付嬢がザックの方へと駆け寄ってくる。
ザックからは嫌な汗が滲んだ。
焦る。やっぱり来た。
こうなると分かっていた。
ここでようやくリサたちも理解したらしい。
自分たちが依頼を失敗することの重大さを。
「ターリ伯爵がお呼びです。今すぐに屋敷へと向かってください」
「あ、ああ……」
言葉が出てこない。
これから起こることを考えると目眩がした。
吐き気もする。最悪だ。
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