ザックたちの勘違い(ザック視点・ざまあ)
「あの……何度も言っていますが……」
シスターは困り顔でザックたちを見ていた。
この人たちをどう説得しようかと悩んでいる様子である。
「だからさ、デバフを解いてくれって言っているんだ!」
「だから、デバフなんてかかっていませんって……」
「はぁ? もしかして俺たちが間違っているって言いたいのか?」
ザックはシスターに反論する。
先程からシスターが自分たちのことを否定してくるのだ。
デバフなんてかかっていない。
呪いなんて一つも見つからないと。
そんなわけがない。
自分たちはアランによって能力が低下している。
今すぐに解かないと不味い状況になるのだ。
「疑っているわけではありません! 私は真実を言っているだけで――」
「お金ですか? 僕たちが出すお金に不満があるのですか?」
「いえ、そういうわけではないのです。何度も言っていますが、デバフなんてかかっていないのです!」
「はぁ……ザック、カイル。多分このシスター、お金に不満があるのよ。もっと出してあげましょ」
「だから――」
シスターが何度も否定しようとするが、ザックたちは聞かない。
なんなら文句を言ってくるシスターに腹が立っていた。
「なら分かった。100ゴールド出そう。一ヶ月は遊んで暮らせる金額だ、文句はないだろ?」
「……お金を受け取ってデバフを解除する体ですれば満足してくれるんですか?」
やっと理解してくれたのか、とザックは嘆息する。
首肯して、シスターにお金が入った麻袋を投げ渡した。
シスターは渋々受け取り、ため息を吐きながらデバフ解除の儀式を執り行った。
「これで終了です。満足していただけましたか?」
「それでいいんだよ。よし、んじゃ俺たちはドレイク狩りにでも行くか!」
「そうだね! デバフも解除されたし、私たちに敵なんてないよ!」
「ああ! やってやろうじゃないか!」
そう言いながら三人は教会から去っていく。
シスターはお金が入った麻袋を見て、再度ため息を吐いた。
「あの人たちがSランクパーティーですか……本当、大丈夫なのでしょうか」
シスターには、あのパーティーが到底Sランクには思えなかった。
行動や言動、全てが低ランクのそれであった。
「ターリ伯爵が支持をしているんでしたっけ。なんであのような方たちを支持しているのでしょうか」
『銀翼の烙印』の行動一つ一つがSランクに傷をつけていく。
これから彼らは更に己に傷をつけていくのだが、まだ気がついていない。
後悔する頃にはもう手遅れなのだ。
◆
「ドレイクまで残り一キロ。木々のせいで見えないけど、少ししたら接敵するよ」
「ありがとうカイル。さっさと済ませて物好きな令嬢にアイテムを届けようぜ」
「そうね。今の私たちならこれくらい余裕だわ」
ザックたちは令嬢の依頼であるドレイクの討伐に挑んでいた。
森を走りながら、ドレイクまでの距離を確認する。
あと少しで接敵だ。
ザックは鞘に手を置いて、いつでも引き抜ける準備をする。
「見えた! ザック、僕が怯ませるから攻撃の準備をして!」
「そんなの不要だ! 今の俺なら楽勝だぜ!」
ザックはドレイクに向かって走り、剣を引き抜く。
「喰らえ――」
――ギシャァァァァァ!!
ドレイクの咆哮。
それと同時にザックは木々の方へと吹き飛ばされていた。
あまりにも一瞬の出来事で、パーティー全員が口を開ける。
「ど、どうして!? と、とにかく私も!!」
リサは援護をするために弓矢を放つ。
もちろん魔力を付与して高威力にしたものをだ。
パシュンと放たれた一矢であったが、簡単に薙ぎ払われてしまった。
ザックはどうにか立ち上がり、前方を見据える。
どうしてだ。どうして、デバフを解除したはずなのに自分たちのパーティーがドレイク如きに苦戦しているんだ。
「意味が分からない、デバフは解除されたはずなのに……僕の何が間違っていたんだ――」
動揺していたからだろう。
カイルはドレイクの攻撃に反応することができず、重い一撃を喰らってしまう。
吹き飛ばされ、土煙が上がった。
「カイルまで!? やばい、やばすぎるって――」
戦闘中、一度隙を見せてしまったら一気に崩れるものだ。
リサもドレイクの攻撃を受け、戦闘不能になる。
「ど、どうして……どうしてだ……」
意識が遠くなる。
歯を食いしばるが、ザックたちの意識はそこで途切れた。
◆
「まだ息がありますね。さて、どういう処遇にしましょうか」
ターリ伯爵令嬢は倒れたザックたちを見ながら嘆息する。
「アランが抜けてから……この方たちは勘違いをされているようですね。ともあれ、皆さんこの人たちを回収してください。死ぬ前にすぐに処置を。死んで償った、てことにされるのは嫌ですから」




