俺が英雄?
「アリシア! もうここは無理です!」
「分かっているわよドリス……! でもやるしかないでしょ!」
俺が戦場に向かうと、多くの冒険者たちが倒れていた。
唯一立っていたのが、アリシアとドリスという人物。
しかし、二人とも傷だらけで正直戦況は最悪だ。
倒れている冒険者に近づき、息を確かめる。
大丈夫。まだ生きている。
「援護しに来ました! 皆さん、一度体勢を立て直してください!」
俺が叫ぶと、二人は驚いた様子で俺のことを見る。
そして、すぐに叫んだ。
「危険です! あなたこそ退いてください!」
「どうしてここに人が入ってきてるのよ! 止められなかったの!?」
「無理やり入らせてもらった!」
「「ええ!?」
俺は剣を引き抜き、全力で走る。
目の前には三体のドラゴンの姿があった。
圧倒的な実力差を感じる。
こいつは俺が相手していいような魔物ではない。
だが……やるしかない。
「《攻撃弱体》《斬撃弱体》《加速弱体》」
俺はありとあらゆるデバフを発動する。
これでもかと発動し、相手を見る。
「デバフを自分にかけているのですか……!?」
「馬鹿! 死ぬ気なの!」
試してみたくなった。
自分の限界を。自分にも、この魔法を付与できるのかどうかを。
俺は全神経を集中させ、叫ぶ。
「《反転》ッッッ!!」
瞬間、体が急に軽くなった。
そして、力が湧いてくる。
「やった……自分にも付与することができた……!」
成功だ、デバフを《反転》することができた。
今まで試したことがなかった『自分にデバフをかける』
一発本番でやってみたが……成功した!
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《攻撃強化》《斬撃強化》《加速強化》
――『発動』
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俺は剣を構え、相手を見る。
ドラゴンは三体。仕留めるなら一発だ。
俺にできるのか?
いや、やるしかない。
――グシャァァァァァァァ!!
「やってやる!!」
地面を思い切り蹴飛ばすと、一気に景色が移ろいだ。
眩いほどの速度で加速し、一瞬で距離を詰める。
「何今の速度!?」
「何をやったんですか!?」
剣先がバフの効果によって光る。
ドラゴンを見据え、ニヤリと笑う。
「《斬撃波》」
一気に力を込めて剣を薙ぎ払う。
これは運ゲーだった。
勝てる見込みなんてほぼなかった。
だが……結末が『反転』した。
ドラゴンたちは一斉に斬り倒され、地面に落下する。
声も上げることなく絶命した。
俺は地面に着地し、ふうと息を吐く。
そして拳を握りしめた。
「俺が……本当にやったのか……!」
感動していると、背後から声をかけられた。
振り返ると、アリシアとドリスの姿があった。
「あなた、何者?」
「私たちと同じ人間さんですか?」
「え? 人間だけど……えっと、なんかしちゃった、よな?」
「「うん」」
俺は困り果てながら、頭をかいているとアリシアさんが声をかけてきた。
「あなたに興味があるわ。少し私たちと付き合ってくれないかしら」
「私もです。少しお話がしたいです」
「俺と?」
「ええ。あなたに興味があるの、英雄さん」
「私もです。英雄さんにお話したいことがあります」
「え、英雄? 俺が?」
「他に誰がいるのよ」
「そうですそうです」
二人に手を捕まれ、俺はされるがまま運ばれていく。
ちょ、ちょっと!? 俺は一体どこに連れて行かれるんだ!?




