任務の終わり
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《魔力強化》《防御強化》《一撃強化》《斬撃強化》《攻撃強化》
――『発動』
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「アリシア、ドリスに付与する!」
俺が叫ぶと、眩い光りがアリシアたちを包み込む。
この様子だと成功したっぽいな!
「すごい……めちゃくちゃ力が湧いてきた!」
「これが……アランの力ですか……」
俺の秘策。なんならこれが俺本来の戦い方。
味方のステータスの大幅強化。
俺だけじゃなく周囲の実力すらも『逆転』させる。
まだまだ手に入れてから謎が多い魔法――《反転》。
あの日、手に入れてからずっと謎のままだが――ありがたく使わせていただく!
「行くぞ! アリシア、ドリス!」
「「了解!!」」
俺が合図を送ったと同時に、ドリスが魔法をオーガに向かって放つ。
遥かに強化された魔法は、赤い目をしたオーガすらも凌駕する。
轟音とともに爆裂し、辺りに暴風が吹き荒れた。
「すごい力……私も!」
アリシアが剣を引き抜き、地面をえぐりながら走り抜ける。
一閃。
アリシアが与えた一撃はオーガの右腕を斬り落とした。
傷だらけのオーガはうめき声を上げながら俺の方を見る。
俺が全員に能力を付与していることを見抜いているのか。
「本当、何者だよこのオーガ」
魔物とは思えない知性だ。
赤い目や傷だらけの皮膚。
やはり何かありそうだな。
だが、今は今だ。
俺はこいつを倒すまでである。
「《暁斬り》」
地面を蹴り飛ばし、跳躍する。
剣を引き――そして放つ。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺が放った一撃はオーガに見事ヒットし、声すら上げることもなく倒れた。
ふう……これで任務完了だな。
剣を鞘に収めて着地し、オーガの死体を確認する。
さすがに怪しいからな。
何か……ってなんだこれ。
「宝石、ですかね?」
「真っ赤な宝石ね」
オーガからは通常、ドロップしないものである。
というか、宝石なんて普通の魔物が持っていることなんてない。
「これ、なんかありそうだな」
ひとまず持ち帰ってみるか。
そんで考えることにしよう。
「あ、あの」
「す、すみません」
「んあ?」
振り返ると、赤髪パーティーが俺のことを申し訳無さそうに見てくる。
「本当っにありがとうございました!」
「助かりました! 私、死ぬかと思って」
「おいおい、別に頭なんか下げなくてもいいからさ」
「いや、僕はあなたたちに大変失礼なことをしてしまいました! せめて謝罪をさせてください!」
「ごめんなさい!」
俺は頭をかきながら、アリシアたちを見て肩を竦める。
「だってよ。アリシア、ドリス」
「ええ!? 私に振らないでよ!」
「ええと、許します。でいいんですかね?」
「アリシアとドリス次第だな」
思い切り投げてしまったが、これくらい許してくれ。
アリシアたちは困りながら、あわあわと前に出る。
「私たちは気にしていないわよ。それよりも、みんなが無事でよかった」
「そうです。無事なのが一番です」
「「せ、先輩……!」」
「「先輩!?」」
赤髪パーティーがアリシアたちに抱きつき、わーわー言っているのを眺めながら俺は笑う。
まあ、ひとまず無事に終わってよかった。
彼女たちも楽しそうだし、俺は十分役立てたかなっと。
「この宝石……王都なら資料があるかもな」
その最中、俺は赤い宝石を見ながらそんなことを呟いた。
考えることはまだまだある。
成り上がりだったり、《反転》の謎だったり。
更に宝石の謎まで追加されてしまった。
「考えることいっぱいあるなぁ……」
「アラン! 助けてよ!」
「助けてくださいー!」
「はいはい」
ま、とりあえず二人を助けることにするか。
さすがに暑苦しいだろうしな。




