【デバフ師】追放される
「アラン、お前はもうこのパーティーには必要ない」
「……え? ザック、本気で言ってるのか?」
Sランクパーティー『銀翼の烙印』。俺はここで【デバフ師】として活動してきた。
相手や味方にデバフを与え、状況を有利に運ぶ職業だ。
「ああ。お前は何もしていないから当然だろう。他の皆もそう思うよな?」
「ええ。私も同感」
「君は何もしていないからね。遠くの方で適当に魔法を使っているだけじゃないか」
「リサ、カイルまで……」
仲間であった全員が俺のことを拒絶した。
あまりの現実に目眩がする。
俺は確かに弱い。【デバフ師】は外れ職業とも言われているのも事実だ。
けれど、自分なりに皆の役に立つ方法を確立してきたつもりだ。
自分で言うのもなんだが、俺が所属して以降『銀翼の烙印』はSランクにまで成り上がった。
必要……まではいかないものの、不要とはならないはずだ。
「特にお前が使える魔法はなんだ? デバフだけだろ?」
「そうそう。デバフって相手にかければそれなりだけど、味方にかけたらメリットなんて一ミリもないじゃん」
「その通り。君はなんなら味方に害を成す存在とも言えるわけだ」
「ちょっと待ってくれ! それは普通ならそうだけど、俺の場合は――」
反論しようとした瞬間、ザックが俺の足を踏みつけてきた。
痛みが走り、声が出た。
突然仲間に攻撃されるなんて思ってもいなくて、動揺してしまう。
「言い訳なんて惨めだと思わないか?」
「い、言い訳なんかじゃない……! デバフは確かに味方には弱い……だけど、俺はそれを克服している!」
俺は《反転》と言う魔法を使える。
これは『能力を反転』する魔法だ。
たとえば俺が味方に《攻撃弱体》のデバフをかけたとする。
そこで《反転》を発動すると、《攻撃強化》に切り替わるわけだ。
つまり、強いデバフをかけるほど能力は飛躍的に強化される。
「信じてくれ! 俺は何もしていないわけじゃない! 皆のために必死でやってきた!」
俺は叫ぶ。
これも全て仲間のことを信用しているからだ。
きっと、俺が必死の思いで真実を伝えたら信じてくれるはず。
俺はそう信じていた。
しかし現実は非情だった。
仲間たちは冷たい目で俺のことを見てきた。
「お、おい……もしかして本当に信じてくれないのか……?」
いや、仲間ではない。
仲間には決して向けないであろう視線を俺に彼らは向けていた。
「哀れだな」
「もう可哀想になってきたわ」
「諦めたらどうかね? 無能がどれだけ頑張っても無能だといい加減理解するのが大事だと思うよ」
「お、俺は……!」
反論しようとした。
だが、もう分かってしまった。
このパーティーに、俺の居場所はもうない。
誰も俺を求めていないのだ。
言葉を紡ごうとするが、もう何も出てこなかった。
彼らが言う通り『これ以上無駄』だということを理解してしまったからだ。
「分かった……俺は出ていくよ」
荷物をまとめ、宿から出ていく支度をする。
「やっと分かってくれたか。これだから無能は困るんだよ」
「そうそう。馬鹿はこれだから」
「まあいいじゃないか。やっと理解してくれたようだし」
ザックたちは楽しげに酒を飲み始めた。
俺をどうやら肴にしているらしい。
ニヤニヤと見ながら楽しそうに飲んでいる。
もうこんな場所にいたくない。
これ以上いたら自分が惨めで死にたくなってくる。
「それじゃあ……今までお世話になりました」
頭を下げるが、誰も反応しない。
もう俺は眼中にないようだった。
……それもそうだよな。
だって、俺は無能なんだから。
宿を出ると、外は雨が降っていた。
「世界も俺のことを歓迎していないらしいな」
マイナスな言葉がどんどん溢れてくる。
俺は雨に打たれながら街を歩いた。
これ以上――ターリ伯爵領にいるのも嫌だ。
俺は近くの馬車乗り場に行って遠くの方へ向かうことにした。
行き先は特にない。
御者には「適当に遠い場所に連れて行ってくれ」と言った。
走り出した馬車内は雨の音しか聞こえてこない。
全く……本当に惨めだ。
しばらく走った頃、急に馬車が止まった。
俺は眠い目をこするながら御者に声をかける。
「何かありましたか?」
「それが……この先にAランクの魔物が出たらしくてな……」
外を見ると、一人の冒険者が御者に声をかけていた。
俺に気がついたのか、こちらに駆け寄ってくる。
「これ以上先は危険だ。何故かドラゴンの群れが暴れていてな……」
「ドラゴンの群れ……?」
ドラゴンとなればAランク以上は確定だ。
そんな魔物が暴れているとなると、死人が出てもおかしくはない。
「だからここは退いて――」
「俺も手伝っていいですか」
「え……?」
馬車から降りて、体をほぐす。
せっかく死ぬのなら、誰かの役に立って俺は死にたい。
このまま惨めなまま死ぬのはごめんだ。
それに――もしかしたら俺ならどうにかすることができるかもしれない。
試したことがないことではあるが……試す価値はある。
「ちょ、ちょっと!?」
俺は剣を引き抜き、走った。
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