表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

2

いつもありがとうございます。

短編ですが、あと何話か連載します。

どうぞお付き合いください!

 明は知っていた。主の娘である美祈が、自分に思いを寄せてくれていることを。最初知った時は、正直驚いた。と同時に、どうしたらいいのか、困惑した。理由は二つ。このことが主の耳に入れば、自分の身がただでは済まないこと。そしてもう一つは、自分も美祈を愛していたからだ。

 美祈は天真爛漫な妹姫の未花と違って、書物を楽しんだり、一人空を眺めて微笑むような、大人しい姫君だった。しかし、そんな美祈が、はにかんだ笑顔で話しかけてくれたり、時々手ずから菓子を焼いて、仕事部屋へ持ってきてくれるのが、心から嬉しかった。正直、必死で平静を保ちながら、菓子を受け取ってはいるが、本当はどきどきして眠れない程幸せだった。そして、受け取った菓子は大切に何日もかけて少しずつ食べた。まだ主には言っていないが、いつか美祈が王族に后として嫁ぐ時には、お供して永遠に傍に仕えたいと本気で思っていた。しかし、影と名乗る女が侍女として離宮に来てから、美祈は変わってしまった。

自分に対する態度も何だか少しよそよそしくなり、菓子を持って来てくれる回数も減った。しかも、一番気になるのは、美祈が時折する表情だ。今までは大人しくても、月の執の姫君として堂々としていたのに、何者かに怯えたような表情をすることが次第に増えていったのだ。

 あの女は…まさか美祈様に良からぬことをしているのでは?証拠も何もないけれど、明は何となく嫌な胸騒ぎがしていた。

 が、そんなある日、ついに決定的な場面を偶然見てしまう。

何と、影は美祈をたった一人で離宮の端の部屋に連れて行き、怪しい行いをしている様子だった。鍵をかけた部屋から聞こえる、美祈の時折悲鳴の交じるあられもない声に、明は思わず目を見開く。

 家令とは言え貴族である自分でさえ、遠慮して手出しをせずにいた美祈を、平凡な民でしかないあの女が好き勝手に踏みにじっている。

 許せぬ、と明は怒りに震えた。

美祈様は、あのような下賤な女が手を出していい方ではない。月の王族で王家の次に身分の高い執の姫君だ。

これは何としても、止めに入らねば。

明は一瞬で覚悟を決めると、躊躇なく部屋の扉を蹴破った。するとそこには、柱に縛りつけられた美祈を囲むように、影と十数人の顔を隠した男達が、汚い欲に満ちた気配を漂わせて立っていた。

「美祈様…これは!!」

思わず明が声を上げると、美祈は恐怖と涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、縋るように明を見る。

「明、助けて…!!!」

やっとの思いで叫んだ美祈の口に、影は容赦なく布切れを押し込む。

「過ぎるおしゃべりは身のためになりませんよ。さあ、切り刻んだ体で、この男達を楽しませてください」

「影!!」

明は美祈の前に立つ影に近寄り、その頬を力いっぱい殴りつけた。しかし影は、ぐらっと自らの体の輪郭を歪めると、何事も無かったかのように立ったまま明に微笑む。

「これは明様。よろしかったらこの男達と一緒にお楽しみになりますか?」

「ふざけるな!美祈様は執の姫君だぞ!!こんなことをして、真様が知ったら、どうなるか分かっているのか?」

「分かっておりますよ。でも平気でございます。どなたも私を罰することはできませんので」

「いい加減にしろ!!」

明は腰の刀に手をかけ、影を睨む。しかし影が不適な笑みを浮かべたまま、明を睨むと、いつの間にか体が動かなくなり、十数人の女達に囲まれていた。

「…どけ!!」

声だけで必死に抵抗する明に、影はおかしそうに高笑いする。

「明様も、私が用意した女達とどうぞお楽しみください。美祈様の泣き叫ぶ美しい声をお聞きになりながらね」

影が合図すると、女達は一斉に明に襲いかかった。

完全に体の動きを封じられた明は、なす術もなくただ悔し涙を流しながら、美祈の痛みと屈辱に満ちた絶望の叫びを、聞き続けた。





読んでくださいまして、本当にありがとうございます。

次話もどうぞよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ