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六人の住人  作者: 桐生甘太郎
2章 俺たちの生活
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最終話 それからのハッピーエンド

今回で最終話です。よろしくお願いします。





皆さま、お久しぶりです。時子です。いいえ、それは私の本名ではありません。ここに本名を書いて、皆さまにきちんとお礼を言えない事も、心苦しいです。


私は、助かったと思います。


あれから。「五樹としての私」を統合し、その私にくっつく形で、他の人格もすべて統合がなされてから。私の毎日は、生まれて初めて平穏を得ました。


何を思い出しても、悲しくなる事はほとんどなく、少しずつうつ状態も良くなってきています。最近では、知らない人があまり怖くなくなりました。


過去、毎日泣いてばかりで、自分を強く責め続け、母から与えられていた罰を自分でなぞり、友との別れを悔やみ続け、母から扱われているように人を怖がり続けていた、私。


辛い日々でした。本当に、生きていたのが不思議なくらいでした。


私は自分の人生を、「私は不幸に死ぬだろう。でも、誰にも迷惑はかけまい」と勝手に決め込んでいました。


「自分の不幸には自分で責任を負ったのだ」と、最期に思えればいい。そんな覚悟だけが、私の生きる支えでした。


でも、私の中に別の人格がバラバラに生まれて、抑えきれないはずの感情を凍りつかせていてくれたお陰で、私は守られていました。



「怒り」。それを、関係の無い人にぶつけないため。


「悲しみ」。それがために命を落としてしまわないように。


「さみしさ」。それを思い出して悲しまないように。


「気楽さ」。それが私の現実と違い過ぎる事に、私が傷つかないように。


「思い出」。そのあまりの強さに、私が耐えられなくなってしまわないように。


「冷静さ」。それをもって私を影から支えるために。



「みんなあなたを守るために生まれたんですよ」。そう言っていたカウンセラーさんの言葉の意味が、今なら分かります。


彼らは私の感情的記憶であり、私が揮う事の出来なかった才能であり、私の強いショックを凍結させた存在でした。


それぞれに主張の違う彼らは、いつも食い違っていましたが、それは、私が余りに大きな矛盾に苦しんでいたからなのです。


おそらく、「五樹としての私」は、別人格をもう一度元に戻すための体力を、私に付けようとして、あんなに私を休ませようとしてくれていたのではないでしょうか。


彼が「俺達は単なる過渡期にある」と口走っていたのを思い出します。いいえ、それも私の言葉なのですが。


でも、今でも「五樹」だった瞬間の事を思い出すと、あの頃、まるで他者と接しているように、自分の面倒を見ていた気持ちを思い出します。


主人格として、いくつもの記憶や考え方を失っていた私。


手が掛かり、子供っぽくて、悲しみやすい私。


「五樹としての私」は、毎日それに振り回される形で、愚痴を言っていました。


なんだか懐かしいな。



この小説は、「実録多重人格小説」と銘打っていました。そして、統合がなされて、私は今、自分の環境を素直に見つめ、少しずつ幸福を知り始めています。


夫が支えてくれている事。前から心配してくれていた親戚を、やっと安心させてあげられた事。私はもう、「死にたい」とは願っていない事。


これから私が、多重人格を引き起こす根っこになっていた、「PTSD」もすべて乗り越えられるかは分かりません。


現在もカウンセリングでは、トラウマを除く治療を続けています。


でも、私は日々に安心を覚え、もう嵐のような悲しみには晒されていません。


ですから、この小説を“ハッピーエンド”と言い切る事が出来ます。


もしかしたら、何かあればまた続きを書くかもしれませんが、今はここまでで、この小説は終わりにしたいと思います。


皆さま、ここまでお読み頂きまして、本当に有難うございました。


本当に、落ち込んだやさぐれ者の独り言のような小説をお読み頂きましたのは、有難い事です。


またいつか、どこかでお会い出来ますれば、光栄でございます。


それでは、これにて失礼致します。本当に、有難うございました。





End.

有難うございました。お世話になりました。

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