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第3話です それが運命?

 後日登校しますと、一年の全クラス中がある話題で持ちきりになっていました。

 

「すーちゃん! マジ?」


 小学校時代からの大親友、河井(かわい)ふゆ、通称ふーちゃんは教室に入って来た私を捕まえて、階段横のスペースに拉致しました。


「マジ、とは?」


「すーちゃんが名鳥くんをふったって今朝から持ちきりなんよ。それ本当?」


「たった一日足らずでどうしてそこまで、話が広がっているんですか……。誰から聞いたんですか?」


「誰からって、みんな言ってるよ」


 出ました、みんな。

 誰が発信源なのか辿るのは難しい、都市伝説の知り合いの知り合い的なあれです。

 人の口には戸が立てられません。

 

「まあ、ふったというよりは、やんわりとお断りさせていただいたのです」


「同じ意味じゃん……」


「違いますよ。『ふる』では強い感じになりますが、『やんわりとお断りした』だと柔らかい感じになるじゃないですか」


「じゃあマジなんだ。へ~、すーちゃん昔らかそうだったけど、やっぱりどこかおかしいよね。普通の女子だったら大喜びだよ」


「おかしいですか?」


「たぶんだけど。サバサバしているっていうのかな? そういう女子がモテるのかなぁー。やっぱり」


「はあ……」


「何で断ったの。お似合いだと思うけどね」


「恋愛対象として見ていなかったので」


 ふーちゃんは頭に手を置いて「は~……」と大きなため息をつきました。


「大抵の人がそうだと思うけどね。付き合っている内に良いところを見つけるもんなんちゃうかな」


「そうなんですか」


「たぶんそうちゃうかな。だってすべての異性を吟味していたら、相方を見つけられずに年老いちゃうじゃん。一番近くにいる人で、妥協しなきゃいけないの。それが運命の人なの」


 ふーちゃんは、いったいどのような人生をくぐって来たのでしょうか……?


「花の命は短いの。できるだけ沢山の異性と付き合って、一番気が合う人と結婚するのが普通だよ。そんなんじゃ、すーちゃんすぐに年取って誰にも見向きされなくなるんだから……」


「はあ……」


「男は若い女が好きなんだから。女子高生なんて大好物なんよ。今が一番モテるの! 手当たり次第に付き合えばいいんだよ」


「はあ……。最近の若い人はそういう考えなのですね……」


「『最近の若い人』って……。なにババくさいこと言ってんの……。すーちゃんだってぴちぴちの女子高生じゃない。だけどもったいないな。名鳥くん女子に人気あるのに。付き合っているだけでステータスとんでもないよ」


「そんな目的で付き合いたくはないものですね……。ですが……お断りしたことで酷い目に遭わされないでしょうか……?」


 一番危惧しているのはそのことなのです。


「酷いことって? 名鳥くんに?」


「違います。彼はそんなこと絶対にしません。名鳥くんのことが好きだった女子たちにトイレに連れ込まれて冷水をかけられたり、体育館裏とか人目のないところに連れ込まれて、ああいうことやこういうことなどされないか……です」


 私の頭の中には任侠映画もビックリな色々なシチュエーションの酷いことが浮かんでいました。

 ふーちゃんは私の頭上に浮かぶモクモクを振り払って、「ないない」と一蹴しました。


「本当ですか……。だって物語とかではよくありますよ……」


 私の押しにふーちゃんは一歩後下がりして苦笑い。


「確かにあるあるだけど、ふったんだったらまずないでしょ。それにどんなバイオレンスな想像してるん? そこまではさすがにできないって。本の読み過ぎだよ。フィクションと現実を一緒にしちゃあいけないぜ、すーちゃん」


 そう言って、ふーちゃんはいたずらっぽく八重歯を覗かせて、「そう考えると付き合っていた方がヤバかったかもね。女子はそういうところ怖いから」と私を怖がらせます。


「どうしてそういう心理になるのでしょうね?」


「もしすーちゃんに好きな人がいたとして、その人が違う女子のこと好きになったら嫉妬するでしょ」


「理論的にはそういうものなのでしょうけれど、実感が湧きませんね……。ふーちゃんはそういう経験したことがあるんですか?」


 ふーちゃんはちょっと悲しい表情になって「あるよ」と答えた。


「おー! 本当ですか。大人ですねふーちゃん! 誰を好きになったんですか? もしよろしければ教えてくださいよ」


 ワクワクドキドキ。


「好きな漫画のヒロインが主人公にとられちまったときさあね!」


 私は目を点にして間の抜けた声で訊き返しました。


「漫画のヒロイン、ですか……?」


「うちの嫁を奪った奴だけはぜってえ許せねえぇ……」


 ふーちゃんは憎しみに声を震わせながら、ブツブツブツブツと呪いの呪文のような言葉を唱えています。

 こ、これが憎しみと、嫉妬のオーラ……。

 フィクションと現実を一緒にしているのはどっちですか……。

 

「今まで知りませんでしたが、ふーちゃんは女性が恋愛対象だったのですね」


「いや、うちはどっちでもいけるんよ。すーちゃんも男を恋愛対象に見れないんなら、こちら側の人間かも知れへんな。もし女子が良かったら、うちがいつでもお付き合いしたるからな!」


 ふーちゃんは嘘か本当かわからないどっちつかずで、どちらにも取れる感じでグッチョブをしました。

 私は苦笑いをしてその場を誤魔化すしかありません。


「ぁははは……。ありがとうございます。良い相手がもし見つからなかったときは、ふーちゃんにお嫁にもらってもらいましょうか」


「ええよ。うちがお嫁にもらったる!」


 丁度そのときチャイムが鳴りました。

 

「ヤバ……」


 話しに夢中になるあまり、すっかり忘れていました……。

 私たちは慌てて教室に駆け込みましたが当然、先生はもう来ていて注意を受けてしまいました――。

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