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9話 動き出す最強勇者

 その日の深夜――


「さて、行くとしよう」


 美雪たちが寝静まったのを確認したところで、隼人が動き出す。

 彼女たちに気づかれぬように、そっと家を抜け出した。


「ニュースでやってた殺人事件が、もしヴァンパイアの仕業だったとすれば、近い場所でまた同じようなことが起きるはずだ」


 そう呟きながら、隼人は殺人事件の現場の近くへ向かって歩き出す。


 もし異世界のモンスターの仕業であれば、勇者の自分が対処するしかない……。

 そう思っての行動だ。


 歩くことしばらく、殺人事件の現場付近へと隼人はたどり着いた。


「この気配、やっぱりモンスターが近くに潜んでいるな……」


 勇者としての鋭い直感で、隼人はそのことに気づく。

 まさかとは思っていたが、やはりモンスターがこの世界に出現したようだ。


(ぼくがこの世界に戻ってきたことと関係あるのか? ……いや、それよりも今はモンスターの討伐を優先しないと)


 頭の中に次々と疑問が湧くが、今はこれ以上被害が出ぬよう、モンスターを探し出し討伐することに意識を集中する。


「……こっちか」


 モンスターと思しき気配のする方に歩いていく隼人。


 すると――


「なんだ、この次元の歪みは……?」


 ――そんな言葉とともに隼人が立ち止まる。


 彼の視線の空間に、なんとも表しがたい歪みのようなものが発生していたからだ。


「この感じ、まさか〝ダンジョン〟の入り口か……?」


 言いながら歪みへと近づく隼人。


 ダンジョンとは異世界に存在する、モンスターが生息する特殊な空間の総称だ。

 そのほとんどが、中は迷路のような造りになっており、モンスターの他にも特殊なアイテムや財宝が見つかることで知られている。


(……ここからモンスターが現れて人を襲っているのか?)


 そんな疑問を抱きながら、隼人は《黒ノ魔剣》を召喚する。

 その切っ先を歪みに突き刺し、強引に抉じ開けた。


「……やっぱりダンジョンだったか」


 抉じ開けられた歪みの中を見ながら呟く隼人。


 歪みの先は岩肌で覆われた空間が広がっていた。

 中から漂ってくる独特の気配に、そこがダンジョンだと隼人は判断する。


「まったく、どうしてこの世界にダンジョンが……」


 そんな風にぼやきながら、ダンジョンの中へと足を踏み入れる隼人。

 地球に迷宮が現れるという不可思議な現象に疑問を抱きはするものの、そのしっかりとした足取りに恐れは一切感じられない。

 さすがは魔族の軍勢をたった一人で相手取り、ついには魔王の討滅に成功した最強の勇者である。


 ダンジョンの中を歩くこと少し、そんな勇者の前に一体の異形が現れた。


『ギギ……ッ!』


 そんな耳障りな声とともに現れた異形の名はレッサーヴァンパイア――。

 アンデッドモンスター、ヴァンパイア……その下級種だ。


「お前か? この世界の人を殺したのは……?」


 冷たい表情で魔剣の切っ先をレッサーヴァンパイアに向ける隼人。

 彼はまだ殺気を放っていないというのに、レッサーヴァンパイアは『ギ……ッ』と、怯えた様子で後ずさる……その刹那だった――


 スパンッッ!!


 ――そんな音が響き渡る。


 その直後、レッサーヴァンパイアの体から、ドパッ!! と鮮血が迸る。

 そしてその背後には魔剣を振り抜いた隼人の姿が――。


 そう、隼人は神速とも言える凄まじいスピードの踏み込みでレッサーヴァンパイアへと接近し、すれ違い様にその体を切り裂いたのだ。


『ギギ……ッ!?』


 何が起きたかわからない……! とでもいった様子で、レッサーヴァンパイア呻き声を漏らし……静かにその場に崩れ落ちた。

 敵が完全に沈黙したのを確認すると、隼人は魔剣に付着した血を、ビッ! と払う。


 モンスターを一体屠ったというのに、その表情は冷静そのもの。

 そして、あれだけの神業を放ったというのに、呼吸に一切の乱れはない。

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[一言] いつものオネショタものじゃない…だと!? 実家のような安心感から、別荘のようなワクワク感がある
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