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8話 不可解に思う最強勇者

 帰宅後――


「あら? 隼人くん、出かけてたのね」


 隼人がリビングのドアを開けると、そんな声とともに美雪が出迎える。

 どうやら朝食の準備をしていたようだ。


「た、ただいま、母さん」


 昨日のこともあり、少々ぎこちなく挨拶する隼人。

 そんな彼に対し、美雪は――


「隼人くん、昨日はごめんなさいね? 私ったらすっかり酔っぱらっちゃってたみたいで……。とんでもないことをしてたって春菜たちから聞いたの……」


 ――申し訳なさそうな表情で、謝罪の言葉を口にする。

 どうやら酒のせいで自分が昨日何をしたかも覚えていないようだ。


(なんだ、本当に酔っぱらってただけだったのか……)


 美雪の言葉を聞き、隼人は少しホッとする。


「大丈夫だよ、母さん。でも、お酒は程々にね……?」


 苦笑しながら、隼人は美雪を許してやる。


「ありがとう、隼人くん。……さて、ちょうどご飯の支度もできたことだし、春菜たちを呼んできてくれる?」


「わかったよ、母さん」


 笑顔で返事をすると、隼人は春菜たちを呼びに二階へと上がっていく。


「ふふっ、今度はもっとゆっくり、母子の絆を深めましょうね……♡」


 リビングで一人、美雪が頬を染めて呟く。


 ◆


 その日の夕方――


「うわ、また事件が起きたんだ……」


 飲み物を飲もうと、隼人がリビングへと降りてくると、そんな声が聞こえてきた。

 声のした方を見ると、夏実がソファーに座りテレビを見ていた。


「事件? なんのこと?」


 事件という単語が気になり、夏実に声をかける隼人。


「兄さ――隼人さん!? 急に声をかけないで、びっくりするでしょ!」


 テレビに夢中になっていたのか、驚いた声を上げる夏実。

 そんな彼女に「ごめんごめん」と謝りながら、その隣に腰かけテレビを見る隼人。


「これは……」


 テレビに映し出される内容を見て、隼人は瞳を鋭く細める。


「一昨日からこんな事件が立て続けに起きてるみたいなの」


 少し不安げな表情を浮かべながら、呟く夏実。


 テレビに映し出されていたのは不可解な殺人事件の内容だった。


 一昨日の夜、男女の死体が見つかった。

 両方とも血が抜かれており、さらに心臓まで抉り取られている。

 そして昨日の夜、同じような死体がまたもや見つかった……そんなニュースだ。

 しかも、その現場は隼人たちの住む街の家からそう離れてはいない場所であった。


(血がきれいに抜かれ、心臓まで抉り取られた死体。まさか……)


 ニュースを見ながら、とある存在を頭に浮かべる隼人。


 その者の名は〝ヴァンパイア〟――。

 隼人が召喚された異世界に存在する、アンデッド種のモンスターの名だ。

 ヴァンパイアの中には人間の血を吸い取るだけなく、その心臓を抉り取りコレクションする習性を持つ個体が存在する。


 見つかった死体の状態が、ヴァンパイアの餌食になった者とそっくりなのだ。


(それに、ぼくがこの世界に帰ってきたのも一昨日の夜だ。まさかとは思うけど…)


 自分が地球に戻ってきたことと、今回の事件が起きたタイミングが重なったことで、隼人は何か関連があるのではないかと考える。


 もしそうだとすれば、事態は深刻だ。

 ヴァンパイアは異世界においてそれなりに強力なモンスターだ。

 魔法などの戦う力を持つ異世界人でも、ヴァンパイアの餌食になってしまう事例はかなりある。

 それがこの世界に現れたとしたならば、何の力も持たない一般人など格好の餌食である。


(念のために、確かめてみるか……)


 テレビの情報を食い入るように見ながら、隼人は決意する。


(兄さん、真剣な表情を浮かべて、何を考えてるんだろ……)


 真剣そうな隼人の横顔を見て、夏実がほんのりと頬をピンク色に染める。

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