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7話 力を試す最強勇者

 翌日――


「朝か……」


 静かに、隼人がベッドから起き上がる。


 時計を見れば時刻はまだ4時台。

 異世界にいた頃の習慣で、かなり早い時間に目が覚めてしまったようだ。


「ちょうどいい、少し出かけるとしよう」


 そう言って、徐にジャージへと着替える隼人。

 そのまま皆を起こさぬようにリビングへと降りて、身支度を整えるとひっそりと家を出る。


 ◆


「よし、この辺なら大丈夫かな?」


 人気のない河川敷へとやってきた隼人。

 周囲に人がいないかしっかり確認すると……


 タン――ッ。


 ……そんな音とともにその場を飛び出した。


 軽く踏み込んだだけにも関わらず、隼人は十メートル以上先まで跳躍し軽やかに着地してみせる。


「うん、感覚でわかっていたけど、やっぱり異世界にいた頃の身体能力を引き継いでいるみたいだな」


 そう言って、満足げに頷く隼人。

 自分の体は今どのような状態にあるのか、隼人はそれを確かめにきたのだ。


「不思議なもんだな、年齢は異世界に召喚される前の状態に戻ってるのに、勇者としてのステータスは引き継がれてるなんて」


 そんな感想を抱きながらも、隼人は次の確認作業に移る。


「来い、《黒ノ魔剣(ブラック・セイバー)》!」


 天に手を翳し、その名を叫ぶ隼人。

 すると彼の頭上に黒紫の幾何学的な紋様が描かれた魔法陣のようなものが展開した。

 そして中から、一振りの闇色の禍々しい魔剣が顕現した。


「まさかとは思ったけど、やっぱり魔法武具の召喚までできるんだな……」


 召喚した黒き魔剣を手にしながら、先ほどよりも満足げに頷く隼人。


 魔法武具とは、勇者やそれに類する者が扱うことができる魔法技術で構築された武器や防具の象徴だ。

 魔法武具にはそれぞれ属性があり、主に火・水・風・土・光の五つの属性で分かれている。


 しかし、隼人が扱える属性はこのどれにも当てはまらない。

 彼の使役するのは、闇属性と呼ばれる特殊な力だった。


 この場での詳しい説明は省くが、闇属性はどの属性よりも強力だ。

 隼人は異世界で〝大魔導士〟と呼ばれる人物の元で修行を積み、闇属性の力を己のものとし、魔王や魔族の軍勢に立ち向かい勝利を収めたのである。


「誰もいないし、大丈夫だよね……?」


 改めて周囲を見渡し、人がいないことを確認する隼人。


 完全に人がいないことが確認できたところで、川の浅瀬へと立ち――


「そら……ッ!」


 ――そんな声とともに、魔法武具……《黒ノ魔剣》を振るう。


 するとどうだろうか、スパン――ッッ!! と軽快な音ともに、川が向こう岸まで真っ二つに割れてしまったではないか。


「よし、魔法武具の性能もそのままみたいだな」


 凄まじいことをやってのけたというのに、隼人は涼しい顔でそんなことを言う。

 そのまま隼人は《黒ノ魔剣》を軽く払うと、川はもとの流れに戻る。


「他にも色々試してみたいけど、今日はこの辺にしておこう」


 そう言って、《黒ノ魔剣》を異空間へと帰還させ、来た道を戻り始める隼人。

 彼の判断は正しかった。

 数分歩いたところで、ジョギングをする若い女性とすれ違ったからだ。


(まぁ、力を試したところで、あまり意味はないんだけどね……)


 朝陽が眩しい河川敷を歩きながら、隼人は思う。

 もうここはモンスターや魔族がウジャウジャいる異世界ではない。

 勇者としてのステータスや、特殊な戦闘スキルや武器、そんなものは不要の世界だ。

 これからは学生として、そして一人の少年として、家族やこれからできるであろう友人たちと人生を謳歌するのだと。


「でも、やっぱり修練は怠らない方がいい気がするんだよな……」


 雲ひとつない空を見上げながら、隼人は呟く。


 彼の勇者としての勘が、これからも力を磨き続けなければならないと囁いている――。

 そんな感覚を抱くのであった。

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