4話 驚愕する最強勇者
「よし、宿題終わりっと……っ」
夕陽の光が差し込む自室で、隼人が気持ちよさそうに伸びをする。
家に帰り昼を食べたあとは学生らしく、今日出た学校の宿題に勤しんでいたのだ。
隼人は不登校児ではあったものの、元々の成績はそれなりに良くその日のうちに宿題を終わらせることができた。
おかげで日曜日は丸一日自由に過ごすことができる。
(まぁ、引きこもり生活をしていたせいで、休みの日に遊ぶ友だちもいないんだけどね……)
過去の自分のせいで交友関係が皆無なことを、隼人は自重気味に笑うのであった。
そんなタイミングで、隼人の部屋のドアからノック音が聞こえてくる。
「隼人くん、夜ご飯できたみたいだよ」
「あ、今行くよ、姉さん!」
ドア越しに呼ぶ春菜の声に、隼人が元気よく返事をする。
宿題を終えて、ちょうど腹が減っていたところだ。
隼人が部屋を出ると、夕飯のいい匂いが漂ってくる。
美味しそうな匂いに、少しだけウキウキしながら階段を降り、リビングに向かう隼人。
しかし、リビングのドアを開け、テーブルの上に並ぶ料理を目にしたところで、隼人の動きが止まる。
「か、母さん、これは……?」
「ふふふっ、隼人くんが久しぶりに登校してくれたお祝いをしようと思って用意したの♡」
心の底から嬉しそうな表情で答えながら、テーブルの上に料理を運ぶ美雪。
隼人が困惑するのも無理はない。
テーブルの上には色とりどりのオードブル、サラダ、スープ、ステーキ、さらには伊勢海老や鯛の乗った刺身の盛り合わせまで用意されていたのだから。
「もうっ、母さんったら本当に嬉しかったのね。もちろん、私もとっても嬉しいよ、隼人くん♪」
席に座りながら、春菜も喜びの言葉を隼人に伝えてくれる。
「まぁ、兄さ――隼人さんが学校に行ってくれたおかげで、ごちそうが食べられるんだからラッキーかな」
そんな風に言いながら、夏実が春菜の隣の席に座る。
「あら、夏実ったら、今隼人くんのことを「兄さん」って呼ぼうとしてたわね」
「ち、ちがっ……言い間違えそうになっただけよ!」
「もう、素直じゃないんだから」
「ね、姉さんまで……!」
隼人に対しては、普段からちょっとツンでクールだった夏実が、美雪と春菜にイジられて顔を真っ赤にする。
(なんというか、言い間違えでも兄って呼んでもらえるのは嬉しいかもな……)
二人にイジられて、ムスッとした夏実を見て、隼人はそんな風に風に思うのだった。
「ちょっと隼人さん、何を笑ってるのっ!」
「そんなことないよ。それより、せっかく母さんが用意してくれたんだから美味しくいただこう」
「むぅ……」
微笑ましい表情を浮かべていた隼人に夏実が突っかかってくるも、隼人はさりげなく受け流す。
そんな隼人に、今度はイジけたような表情を浮かべる夏実。
美雪と春菜は思わず苦笑してしまう。
「どう? 隼人くん、美味しい?」
「どれもとっても美味しいよ、ありがとう母さん」
「ふふっ、たくさん食べてね」
食事が始まって少し、美味しそうにもりもりと料理を食べる隼人に、美雪が嬉しそうな表情を浮かべる。
「母さん、グラスが空いてるよ」
「あら、ありがとう。隼人くんは強いだけじゃなくて気遣いもできるのね♡」
せっかくのお祝いだからと、美雪はワインを飲んでいた。
隼人が登校を再開したのが本当に嬉しかったようで、先ほどからなかなかにいいペースでグラスを空けている。
そしてグラスが空く度に隼人がワインを注ぐものだから、すでに美雪はほろ酔い状態である。
夏実はまだ少しイジケけた表情を浮かべていたものの、美味しいごちそうのおかげもあり、楽しい夕食の時間となるのだった。
◆
夜――
「ふぅ、いいお湯だ……」
家の風呂場で湯船に浸かる隼人が、気持ちよさそうに声を漏らす。
美味しい料理の数々、今まで距離の離れていた家族と打ち解けることができた楽しい時間、それらを思うだけで隼人の胸はいっぱいだ。
(地球に戻って来れてよかった……)
改めて、隼人が思ったそんなタイミングであった――
「隼人くん、一緒にお風呂に入りましょ♡」
――隼人の耳に、そんな声が聞こえてきた。
「…………は?」
間の抜けた声を漏らす隼人。
それと同時に、風呂の扉がカラカラと音を立てて開く。
「か、母さん!?」
隼人は思わず叫ぶ。
そんな反応も当然だ。
何せ、彼の目の前には、バスタオル一枚のみを体に巻き、妖艶な表情を浮かべる美雪が立っていたのだから――。
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