37話 武装少女たちの実力と最強勇者の判断
ダンジョンの中を進むこと少し、またもや前方にモンスターの姿が見えてきた。今度はオークが一体だ。
敵の姿を確認すると、アリスたちがそれぞれの得物を構える。
「隼人、ここは私たちにやらせてください。この前は助けてもらってしまいましたが、中型エネミー……オークが相手でも一体であれば倒して見せます」
「アリスさん……わかりました。お任せします」
アリスの言葉に、隼人は少しだけ心配そうな表情を浮かべるも、彼女たちの実力を改めて見極めるためにこの場を任せることにする。
隼人の返答にアリスは「ありがとうございます」と、頷くと部下二人に指示を出す。
「可奈、唯、行きますよ」
「……ん。了解……」
「隼人くんにカッコイイところ見せちゃうよー!」
可奈も唯も、闘争心に燃えている様子だ。隼人の力を目の当たりにし、心を揺り動かされたといったところだろうか。
「先制攻撃です……!」
そう言って、魔力で強化されたライフルを構えるアリス。
そのまま引き金を引くと、銃口から淡い光――魔力を纏った弾丸が飛び出し、オークの肩に着弾する。
『ブモォォォォ――ッッ!?』
魔力弾による攻撃を受け悲鳴を上げるオーク。
しかしダメージは浅く、肩の肉を少し抉った程度に収まってしまう。
攻撃を受けたことで、オークが目を血走らせながらアリスたちを睨む。
自分が何かしらの攻撃を受けたことに気づいたようだ。
「今です、可奈!」
「……了解……っ!」
アリスの声に応え、可奈がグレネードランチャーを構え発射する。
弾は弧を描きオークへと飛んでいき、その足元に着弾するとその場で音を轟かせ爆発した――かと思えば、次の瞬間、バリバリバリバリッッ!! と紫電を走らせたではないか。
『ブババババババババッッッッ!?』
強力な電撃を浴び、叫び声を上げながら大きく痙攣するオーク。
爆発自体のダメージはそこまでではないものの、電撃は有効打となったようだ。
そんな中、再びアリスが指示を飛ばす。
「唯! ショットガンを!」
「了解だよ〜!!」
アリスの指示に従い、ショットガンを手に唯がその場を飛び出した。
そのまま勢いよくオークと距離を詰め、その頭部にマシンガンを三連続で――ドパンッ! ドパンッ! と発射する。
散弾はオークの頭を中心に広範囲に飛び散る。やはりその皮膚に大きなダメージを与えることはできないものの、オークはその場に崩れ落ちた。
「なるほど、弱点部位を狙ったわけか」
「どういうことです? 十六夜さん……?」
隼人の言葉に、首を傾げる竜児。
そんな彼に、隼人は軽く説明をしてやる。
「アリスさんたちの持つ武器ではまともに戦ってもオークに勝つことはできない。そこで、二回の攻撃で敵をその場に釘付けにして、安全な状態を作ってから顔に攻撃を放つことで、弱点である目から脳まで弾丸を届かせたんだ」
「な、なるほど……! そんな戦い方があるんですね。弱点部位か、俺ももっと意識して戦わないと……」
隼人の説明に、竜児はまだまだ学ぶべきことがあると再認識するのであった。
そんなタイミングであった――
ダンジョンの奥から、ドシッ、ドシッ! と、足音が聞こえてくる。
見ればオークが二体、近づいてくるではないか。
その姿を見て、アリスたちが思わず声を漏らす。
「く……っ、さらに二体ですかッ!」
「……ちょっと、というか……」
「かなりキツいよ〜!」
先ほどの戦術はオークが一体だったからこそ使えた戦術だ。
立て続けに、それも二体が相手となるとそれは通用しなくなってしまう。
そんな彼女たちの反応を見て、隼人は――
(ここはぼくが引き受ける……のもいいけど、少し力を与えようかな? 早苗さんはともかく、アリスさんたちは信用できそうだし)
そう判断し、とある魔法を発動することにする。