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35話 最強勇者とさすがに嫉妬する舎弟

 その日の深夜――


「さて、行くとするか」


 そう言って、隼人はおもむろにベッドから起き上がる。


 もうすぐアリスたちとの合流時間だ。

 こうして余裕を持って行動できるのだから、やはりダンジョンの発生が事前にわかっているというのは非常にありがたい。

 隼人は手早く準備を済ませると、美雪たちを起こさぬようにこっそりと家を出る。


 ◆


 隼人が待ち合わせの路地裏へと到着すると、すでに武装したアリスたちが到着していた。


「待ってました。隼人」

「お待たせしました、アリスさん、それに可奈さんに唯さんも」


 アリスに挨拶を返しつつ、彼女の後ろで待機している二人にも挨拶する隼人。


「……こんばんはです、隼人さん……」

「今日からよろしくね! 中型エネミーが出たら隼人くん頼りだよ〜!」


 いつも通りクールな、それでいて少し恥ずかしそうな様子で返す可奈。唯は天真爛漫といった様子で、マシンガンを頭上でブンブン振り回している。

 そんなタイミングで、竜児もやってきた。


「すみません! 早く出たつもりだったのですがお待たせしてしましました!」


 約束の時間よりも前に到着したのだから気にしなくてもいいものを、竜児はそんなふうに謝りながら駆けてくる。

 そんな竜児を見て、アリスが疑問を口にする。


「隼人は何も装備してないのに対して、竜児は不思議な装備をしているのですね?」

「あ、これは俺が雑魚だから、隼人さんが少しでもマシになるようにと貸してくれた装備です。これがないと、俺はマジで雑魚なんで……」


 少し恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうに答える竜児。

 自分の戦力が心もとないのを説明するのは恥ずかしいが、隼人に装備を与えられたことを嬉しく思っている……そんなところだろうか。


「……隼人さんから与えられた装備ということは、それも隼人さんが魔法で構築したものなんですか……?」

「それとも、この前隼人さんが言ってた異世界の武具なの!?」


 竜児の説明を聞き、彼の装備しているパワードソニックとマジックフィールドアーマーを興味深げに見つめながら、可奈と唯がそんな質問をする。

 そんな二人に隼人は――


「その装備たちは異世界で手に入れたものです。竜児はボクシングをやっていると言っていたのでちょうどいいと思って与えました。逆に、ぼくの構築した魔法武器は今の竜二には制御できないので与えてません」


 と、返す。

 隼人の生み出す魔法武器は膨大な魔力を宿していたり、制御が難しいものが大半なのである。


「異世界産の武器ですか……。確かに、不思議なエネルギーのようなものを感じますね」


 そう言って、アリスも興味津々といった様子で竜児の装備を見ている。

 美少女三人にまじまじと体を見られ、ソワソワした様子の竜児。不良少女たちとつるむのには慣れていても、こういうタイプの少女たちに囲まれるのは緊張してしまうようだ。


 そんなやり取りを交わす中、とうとう時間が訪れる。


「そろそろ来ます。皆、警戒体制を」


 そう言って、マシンガンを手に取るアリス。

 その直後に、隼人は少し先の空間に魔力の流れを感じ取る。流れは奔流へと変わり、大きな歪み――ダンジョンの入り口と化した。


「よし、それでは行きましょう」


 そう言って、魔剣を召喚する隼人。そのままいつものようにダンジョンの歪みを切り裂き中へと入っていく。

 するとアリスたちが――


「「「……は?」」」


 と間抜けな声を漏らす。


「三人とも、どうかしましたか?」


 歪みの裂け目――ダンジョンの中から不思議そうな表情で隼人は三人に問いかける。


「ど、どうしたも何も……!」

「……ダ、ダンジョンの入り口を開けるのには、特殊な装置が必要なのに……」

「時間だってかかるのにそれを一瞬で!?」


 アリス、可奈、唯が目を見開いて口々に言う。

 何やら可奈は地面に置いていたアタッシュケースを開けており、その中には不思議な形をした金属製の物体がいくつか見える。どうやら、普段はそれらを使ってダンジョンの入り口をこじ開けていたようだ。


「隼人……あなたはその身にどれだけの力を秘めているのですか」


 畏敬の眼差しで隼人を見ながら、思わず言葉を漏らすアリス。


 隼人はどんなふうに答えたらいいかわからず、「とりあえず行くとしましょう」とだけ言い残し、迷宮の中を進んでいく。


「……本当に心強い……」

「隼人くんがいれば百人力だね!」

「ふふっ、本当ですね」


 可奈と唯の言葉に、少し笑顔を浮かべながら頷くアリス。


「いいなー。十六夜さん、どこ行ってもモテモテだもんなぁ」


 ここ最近で、幾度となく女子にもてはやされる隼人を見てきた竜児。戦場に来てもそれは変わらないのだなと、彼にしては珍しくボヤくのであった。

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