33話 最強勇者との力の差
そんな中、早苗が本題に入る。
「さて、私たちの協力体制についてだけど……隼人さん、あなたはいつもどうやって特異点――ダンジョンを見つけているのかしら?」
「ぼくは特定の範囲内にダンジョンが発生した際にそれを感知するスキルを持っています。なのでダンジョンが発生した時に急行する形をとっていますね」
「なるほど、それであれば私たちのシステムが力になれそうね」
「と、いいますと?」
「私たちは特殊な装置の開発に成功してるの。その機能は数時間前にダンジョンの発生位置を特定するというものよ」
「それは……凄まじい機能ですね」
早苗の言葉に、少々驚いた様子の隼人。
まさかそれほどの装置が完成していようとは……。それがあれば、あらかじめダンジョンの発生場所がわかるし、今までのような苦労をしなくて済むわけだ。
これだけでも、早苗たちの組織と手を組む意味はあるだろう。
「ふふっ、よかったわ。私たちの方からも力になれることがあったようで」
少し安心した様子で微笑みを浮かべる早苗。
どうやら、隼人の力を一方的に借りることになってしまうのではないかと、心配していたようだ。
「パターソンさん、ちなみに次のダンジョンが現れる時間と場所も既にわかっているのですか?」
「もちろんよ、隼人くん。次は今日の深夜一時前後に、昨日ダンジョンが発生した場所のすぐ近くに出現することを予測済みだわ。今のところ一ヶ所のみ出現するという予測結果になっているの」
「本当に便利な装置ですね……。では、一時前にその場所で待ち合わせということでよろしいですか?」
「ええ、そうしましょう」
頷きあう隼人と早苗。
ダンジョンが発生する場所がわかっているというのは本当にありがたい。
発見、処理の速度が上がれば一般人が巻き込まれる可能性がグッと減ってくれるからだ。
と、ここで隼人が早苗たちに質問をする。
「ところで、昨日アリスさんたちが使っていた武器なのですが、あれ以上の威力が出るものはないのですか? オーク――中型エネミーに苦戦していたようなので気になります」
「一応、魔力強化武器には昨日私たちが使っていたハンドガンやマシンガンの他にもグレネードランチャーなど、いくつかの武装が用意されています」
「でも弾に魔力を付与するのにとんでもない時間がかかるから、あんまり気軽に使えないんだよ〜!」
隼人の質問に答えるアリアス。それに続き唯が悔しそうな表情でそんな言葉を漏らす。
聞いた限りでは、アリスたちは改造した現代兵器に、自分たちの魔力を付与してモンスターに対抗しているようだ。
「なるほど、そういう事情があるのですね」
と、頷きつつ隼人は思考を巡らせる。
彼女たちにも、竜崎のように異世界産の武器を与えるべきか。もしくは隼人の持つ魔力を彼女たちの武器に付与して強化してあげるべきか。それとももう少し様子を見て信用できると判断してから力を与えるべきか……と。
そんなタイミングで可奈が少し遠慮がちに質問をしてくる。
「……そういえば、隼人さんの使う武器ってどうなっているの……? 不思議な黒い剣を使って中型エネミーを一瞬で倒してた……」
「ああ、アレはぼくが魔力を使って構築した魔法武器です。どちらかというと近接戦が得意なのでよく使っています」
「え? ちょっと待ってください。ということは、隼人は既存の武器に魔力を付与するのではなく、魔力で武器を作っているということなのですか?」
隼人の言葉を聞き、驚いた様子でそんな質問をしてくるアリス。
早苗に可奈、それに唯も信じられない……といった様子で隼人を見ている。
彼女たちの反応に苦笑しつつ、「その通りです」と頷いてみせる隼人。
それを受けさらに驚愕するアリスたち。まぁ、無理もなかろう。自分たちは武器に魔力を付与するのに四苦八苦しているのに、隼人は魔力であれだけ強力な武器を作ってしまうのだから。
「やっぱすげーぜ、十六夜さんは……!」
目の前で繰り広げられる会話についていくのがやっと……いった様子だった竜児も、ここにきて改めて隼人の力に感服するのであった。
その後もいくつかの項目について話し合い、ある程度まとまったところでこの場は解散となる。