31話 組織と手を結ぶ最強勇者
「地球にモンスターを討伐する組織があったとは……驚きです」
「こちらも驚いているわ。まさかエネミー……モンスターがこことは別の場所、それも異世界から出現していたなんて」
自分たちのことをあらかた話し終えたところで、隼人と早苗がそんなふうに呟く。
早苗の話によると、こちら側……地球には二年前からモンスターが現れるようになり、ここ最近は隼人の住む街周辺に、活発に迷宮(彼女たちは特異点と呼んでいるらしい)が発生するようになったそうだ。
彼女たちの組織は特殊な武器を使い、ずっとモンスターたちと戦い続けてきたらしい。
「ねぇ、隼人さん。もしよかったら私たちに協力してくれないかしら?」
「協力ですか、パターソンさん?」
「ええ、私たちが協力すればエネミー――モンスターにも手分けして対処できるし。もちろん、報酬も約束させてもらうわ」
縋るような雰囲気で、そんな提案をしてくる早苗。
すると横から、アリス、可奈、唯も――
「隼人、私からもお願いします」
「……ん。あなたが一緒に戦ってくれると心強い……」
「最近になって今までにないくらい強いエネミーが出現するようになって大変なんだよ〜!」
などと、隼人を勧誘してくる。
(ふむ、とりあえず誘いに乗っておこうかな? 彼女たちがモンスターと戦っていたのは事実だし、目的も一致している。それに、もしも彼女たちがよからぬことを企んでいるのであれば、その時は……)
始末も辞さない――。そんなことを考えながら、隼人は早苗たちの組織、パターソンに協力することに同意する。
「ありがとう、隼人さん。それじゃあ、報酬やモンスター討伐についての協力内容については明日にでも話し合いましょう。もうすぐ夜明けですし」
そう言って、部屋の時計に目を向ける早苗。
時刻は四時前といったところ。そろそろ帰らねば美雪たちに外出していることがバレてしまうだろう。
「それなら私が車で送って行きます。隼人」
「ありがとうございます、アリスさん」
早苗たちと別れを告げ、アリスのあとへとついていく隼人。
可奈と唯もついてこようとしたが、アリスに装備の手入れをしておくようにと言われ、残念そうな表情で別の部屋へと歩いていった。
「隼人、今日は本当にありがとうございました。あなたがいなければ私たちは死んでいたかもしれません」
運転席へと乗り込みながら、アリスが感謝を口にする。
隼人も助手席へ座り、返事をする。
「気にしないでください。むしろアリスさんたちが戦ってくれていたおかげで、街の人に被害が出なくて済みましたから」
「……強いだけでなく、優しいのですね。隼人は」
少し頬を染めながら、小さな声で呟くアリス。
隼人は(どうしたのだろう……?)首を傾げ、アリスの方を見ると、彼女はさらに頬を赤く染めてしまう。
戦闘服のせいで目立たなかったが、アリスはとんでもない美少女だ。
瞳の色はブルー、砂金のように輝く長髪をポニーテールにし、顔のどのパーツもバランス良く整っている。まるでビスクドールのような乙女である。年齢は十六〜十八歳といったところだろうか。
隼人は何か話そうとするものの、アリスはずいぶんと緊張しているようでどうしていいのかイマイチわからない。
(まぁ、彼女も疲れているだろうし、明日また色々話せばいいか……)
隼人はそう判断し、大人しく車に揺られる。
何となくスマホを覗けば、竜児から「お疲れ様でした! 明日もよろしくお願いします!」などと、いくつかメッセージが来ていた。
(そうか、彼女たちに竜児のことも紹介しなくちゃな。明日連れてくるとしよう)