30話 組織と最強勇者
「助けていただき感謝します。あなたは組織からの増援……なのですか?」
「いや、ぼくはその組織とかいう存在とは無関係です。独自にモンスターを討伐しています」
少女の問いかけに、そんな風に答える隼人。
「モンスター……というのはこのエネミーどものことか? それに独自になんて、あなたはいったい……」
リーダーと思しき少女が、オークの死体を指差しながら、そんな風に言う。
どうやら、彼女たちは何らかの組織に所属しており、モンスターをエネミーと呼び討伐しているようだ。
「申し遅れた。私の名はアリス。対エネミー討滅組織・パターソンに所属する戦闘員であり、このチームのリーダーだ。そして、彼女たちは部下の可奈と唯といいます」
「……可奈。助けていただき感謝……」
「唯だよ〜! 君すごく強いんだね〜!」
少女――アリスに続き、可奈と唯が自己紹介をする。
「ぼくは十六夜隼人です。いろいろ聞きたいことはありますが、まずは元の場所に戻りましょう」
隼人がアリスたちに返事をしたところで、空間が歪み始める。
歪みの奔流に巻き込まれると、四人は元の路地裏へと戻ってきた。
「さて……隼人、ひとまず私たちについて来てくれませんか? 私たちの所属する組織のトップにあなたのことを紹介したい。そこで私たちのことについても説明させていただきます」
「わかりました。アリスさん、案内してください」
アリスに頷き、そう答える隼人。
自分以外にもモンスターと戦う人間、それに組織があることは驚きだ。
もし利害が一致するのであれば、ぜひとも繋がりを持っておきたい、そう思っての返事だ。
「それでは、ついて来てください」
そう言って、アリスは可奈と唯を連れて歩き出す。
そのまま駐車場まで案内される隼人。
どうやら彼女たちは車でここまで来たようだ。
可奈の運転する車に揺られること十数分、一行は大きな屋敷へと辿り着いた。
屋敷の中へと招かれる隼人。少々の警戒心を持ちつつも、アリスたちについていく。
三階建の最上階の奥の部屋の前で、アリスが立ち止まる。
「司令、戻りました」
「入りなさい、アリス」
アリスが呼びかけると、ドア越しにそんな女性の声が返ってきた。
司令という言葉から察するに、彼女たちの上司なのだろう。
「お帰りなさい、三人とも……あら、そちらの方は?」
部屋に入ると、優しい声で二十代半ばと思われる美女が出迎え、隼人の姿を見ると不思議そうな声を漏らす。
「司令、こちらは十六夜隼人という方です。私たちが異空間で中型エネミーを相手に、ピンチに陥っているところを助けていただきました。何でも、独自にエネミーの討伐活動をしているとのことで……」
美女――司令と呼ばれる彼女に、そんな風に説明するアリス。
彼女の言葉を聞き、司令は「エネミーを独自で……?」と、少々驚いた様子で隼人を見る。
「初めまして、十六夜隼人といいます」
とりあえず挨拶をする隼人。
それに対し、司令と呼ばれる彼女も挨拶を返す。
「ワタクシの名はパターソン・早苗、この組織……パターソンの創設者であり、彼女たちの司令官です。部下がピンチのところ、助けていただき感謝します」
そう言って、司令……早苗が頭を下げると、アリスたちも揃って頭を下げる。
「……ところで――」
ゆっくりと頭を上げながら、早苗が隼人へと問いかける。
「隼人さん……と呼べばいいかしら? あなたは何者なのでしょう……?」
――と……。
彼女の質問に、隼人は自分のことを掻い摘んで話しつつ、彼女たち組織のことを聞き始める。