29話 三人の少女と最強勇者
戦いが始まり約十分――
「オラァ! これで終わりだ!!」
最後の一体の頭部に向け竜児は勢いよく拳を繰り出す。
ドパンッ! という音とともに拳はクリーンヒットし、ゴブリンを沈黙させることに成功した。
「よくやったな、竜児」
ハァハァと肩で息をする竜児に、隼人は感心した様子で声をかける。
まだ実戦は二回目だというのに、ゴブリン二体を倒しきることができたのだ、上出来であろう。
「あ……ありがとうございます、十六夜さん!」
隼人に褒められガッツポーズをする竜児。
そんなタイミングで、いつものように迷宮に歪みが生まれ、隼人たちは元の場所へと戻される。
「これは……」
「どうしたんですか、十六夜さん?」
「竜児、こことは別の場所に迷宮の反応が現れた。ぼくはそっちに向かうから、お前は帰れ」
「な!? それなら俺も行きます!」
「いや、そこまで消耗したお前を連れて行っても邪魔なだけだ。今日は大人しく帰れ」
そう言って、隼人はその場を飛び出した。
「邪魔なだけ、か……。もっと強くならないとな。いつか十六夜さんと肩を並べて戦うために……!」
悔しそうな表情を浮かべながらも、竜児は心を燃やすのであった。
◆
「ここか……」
駆けること少し、隼人は別の路地裏に時空の歪みを見つけた。
魔剣で入り口を抉じ開け中に入ると、いつものような光景が広がっている……と思いきや――
「どういうことだ?」
不思議そうに声を漏らす隼人。
迷宮の中に、ゴブリンの死体が複数転がっていたからだ。
「考えていても仕方ない。奥へと進もう」
魔剣を手に隼人は迷宮の中を歩き始める。
歩くことしばらく、奥の方から何やら衝撃音や怒号のようなものが隼人の耳に聞こえてきた。
(まさか、誰かがモンスターと戦っているのか!?)
聞こえてきた音から、それが戦闘音だと瞬時に理解した隼人は一気に駆け出した。
すると――
「もう! 中型エネミーがいるなんて聞いてないよ!?」
「……ダメ! 魔力弾が効かない……!」
「二人とも距離を取って! 撤退も視野に入れるわよ!」
そんな声とともに、中型の豚人モンスターである二体のオーク。
それに何かの特殊部隊の戦闘服のようなものを着た三人の少女が、拳銃、マシンガンなどの銃火器で応戦する姿が、隼人の目に飛び込んできた。
(どういうことだ? 女の子たちが現代兵器でモンスターと戦っているだと……?)
そんな疑問を抱くも、隼人はそのまま少女たちの方へと駆けていく。
「な!? 私たち以外の人間がどうしてここに!?」
三人の中でリーダーと思われる少女が、隼人の姿を見て驚愕した様子で声を漏らす。
他の二人も驚きのあまり戦いの手を止めてしまう始末だ。
「ブヒィィッッ!!」
突如現れた隼人に、オークが棍棒を構え咆哮を上げた……その刹那だった――
スパンッッ!!
そんな音とともにオークの頭があらぬ方向へと飛んでいった。
「すごい! 中型エネミーを剣で倒しちゃった!」
「……いったい何者、なの……!?」
隼人の戦いぶりに、二人の少女が声を上げる。
「これで終わりだ――!」
隼人はその場を跳躍。
そのままもう一体のオークの頭上から魔剣を振り下ろし一刀両断にしてみせる。
「大丈夫か、三人とも?」
魔剣についた血をビッ! と払いながら、三人の少女へと問いかける隼人。
彼の言葉を聞き、少女たちは――
「……まさか、援軍……なの?」
「でもあんな人が組織にいたなんて知らないよー?」
不思議そうな表情でそんなやり取りを交わしている。
(〝組織〟……? なんだか気になる言葉だな)
二人の少女のやり取りを聞き、頭の中に疑問を浮かべる隼人。組織とは、いったい何のことだろうかと。
そんな隼人に、三人の中でリーダーと思われる少女が――