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24話 眠れぬ最強勇者

 喜びの声を上げる竜児を他所に、隼人は《黒次元ノ黒匣》でゴブリンの死体の回収を行う。


(やっぱり、日を追うごとにモンスターの数が増えているな)


 死体を回収しつつ、隼人は疑問を確信に変える。


 そして思う。

 もし、今後もモンスターの数が増え続け、さらに上位個体が出てきたら厄介だと……。


 そうこうする内に時間が来たようだ。

 いつものように歪みが発生し、その奔流に飲み込まれると隼人たちは元の場所へと帰還する。


「十六夜さん、今日はもうお終いですか?」


「ああ、これ以上ダンジョンは出現しないだろうし、今日はもう帰れ」


「了解です! ご指導ありがとうございました!」


 元気よく頭を下げると、竜児は家へ帰っていく。

 勝利を収めたからか、その足取りは戦いの後だというのに軽かった。


 ◆


 翌早朝――


 あれから、今後ダンジョンがどのように出現、或いは変化していくのかが気になり、隼人は眠れずにいた。

 仕方ないのでリビングでテレビの音量を最小限にして眺めていた……のだが――


「なんだと……」


 ――まさか、といった様子で声を漏らす隼人。

 テレビに、またもや変死体が見つかったという情報が映し出されていたからだ。

 しかも現場は昨日ダンジョンが出現した位置から数キロ離れた場所のようだ。


(ダンジョン内のモンスターの数が増えただけでなく、出現するダンジョンの数も増えた……ということか)


 隼人は確信する。

 テレビから流れてくる情報を聞き、それがゴブリン種の仕業であると推測が立つからだ。


 どうしたものかと、隼人は考える。

 ダンジョンが離れた場所に複数出現するのであれば、《黒ノ魔網恢々》を全て展開しても把握しきれなくなってしまう。

 現れるモンスターの数も増えているとなれば、このままだと被害が続出するのは間違いないだろう。


 どう対応すべきか思考する……そんなタイミングで美雪が「おはよう、隼人くん」という挨拶とともにリビングへと降りてきた。


 気づけば部屋には陽が差し込んでいる。

 思った以上に長考してしまっていたようだ。


「おはよう、母さん」


 隼人は平静を繕いながら美雪に挨拶を返し、学校へ行く準備を始めるのだった。


 ◆


「十六夜先輩、おはようございます♪」


 一緒に登校してきた春菜と夏実と分かれ、下駄箱の前で靴を履き替えていると、そんな声とともに沙織が現れた。

 手には可愛らしい弁当入れが、どうやら今日も隼人のために弁当を作ってきたらしい。


「おはよう、沙織さん。今日も上機嫌だね」


「はい! 朝から十六夜先輩の顔が見れて幸せです♪」


 隼人の言葉にそんなふうに返しながら、沙織は弁当を差し出してくる。


 昨日と同様に、隼人は弁当を受け取る。

 弁当に関してはもう受け入れていこうと思っている。

 せっかく好意で作ってくれたものは無下にできないし、昼食代が浮くのも地味にありがたかったりするのだ。


 沙織から弁当を受け取り、教室へと向かう隼人。

 すると彼の机の前で待ち構えていた竜児が、「おはようございます! 十六夜さん!!」と、朝からデカい声とともに頭を下げてくる。


(う、うざ……っ)


 その名の通り舎弟ムーブをかましてくる竜児に、隼人は引きつった表情を浮かべる。

 まぁ、周りの目もあるので「おはよ、竜児」と、隼人はとりあえず挨拶を返す。


 しかし、これが少しよろしくなかった。

 それを聞いていた博之や桃子たちが、「隼人が竜崎を下の名前で呼んでる!?」「しかも手懐けてる感じじゃない!?」とざわめき出してしまったのだ。


(ま、まずい! これでは本当に親分と舎弟みたいに見られてしまう!?)


 ダンジョンのことも気がかりだというのに、まさかこんな場面でも危機感を覚えるとは……隼人は思いもしなかったのである。

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