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23話 舎弟(パシリ)を鍛える最強勇者

 その日の深夜――


「やっぱり来たか」


 展開していた《黒ノ網恢々》に反応があったことで、いつものように隼人が動き出す。

 家を出る途中で手早くスマホをいじり、そのまま駆け出す。


「いつもよりも歪みが大きいな……」


 目の前を見つめ、静かに呟く隼人。

 彼の言葉通り、歪み――ダンジョンへの入り口がいつもよりも規模が大きい。

 いったいどういうことだろうと、思案していると――


「お、お待たせしました! 十六夜さん……!」


 そんな声とともに、竜児が息を切らしながら現れた。

 家を出る直前に、隼人がスマホで呼び出しておいたのだ。


 現場へとは隼人の家よりも竜児の家の方が近いのもあるが、彼がこの短時間でここまでたどり着けたのは、隼人に与えられたパワードソニックによる身体能力向上の恩恵があったからだ。

 まぁそれでも隼人のスピードには追いつけないわけだが、隼人がダンジョンに入るまでに間に合っただけ上々であろう。


「こ、この中にモンスターがいるわけですね……!」


「ああ、心して挑め」


 竜児の言葉にそう答えながら、隼人が《黒ノ魔剣》を召喚し入り口を抉じ開ける。

 目の前で起こる現象に、竜児は「すげー……」と声を漏らす。


「さぁ、行くぞ」


「はい! 十六夜さん!」


 元気よく返事をすると、竜児は隼人のあとをついていく。

 ダンジョン内を進むこと少し――


「こ、この前のモンスターだ……」


 緊張した面持ちで岩陰から先を覗き込む竜児。

 彼の視線の先には変異種を含むゴブリンどもが十体ほど集まっていた。


「とりあえず、そこにいろ」


 そう言って、隼人が岩陰から踊り出る。

 そのままゴブリンの集団へと直進し、一気に距離を詰める。


『『『グギャ!?』』』


 突然現れた隼人に、驚きの声を漏らすゴブリンたち。

 そんなことなどお構いなしに、隼人は魔剣を振るい敵の半数を一文字に切り裂く。


「す、すげー! あんな化け物どもを一瞬で……!」


 隼人の神業を目の当たりにし、竜児が興奮した声を漏らす。


 隼人は止まらない。

 そのまま大きくステップし、残りのゴブリンどもに襲いかかる。

 隼人の神速とも言える剣術の前に、バッタバッタと斬り捨てられていくゴブリンたち。

 一瞬のうちに最後の一体にまでその数を減らされてしまう。


『グ、グギャ……ッッ』


 残りは自分だけ……絶望した表情で呻き声を漏らすゴブリン。


 そんなタイミングで隼人が「出て来い、竜児!」と岩陰に隠れていた竜児を呼び出す。

 隼人の剣術に見惚れていた竜児が、ハッとした様子で岩陰から出てくる。


「竜児、こいつを倒してみろ」


「や、やってみます、十六夜さん……!」


 緊張した面持ちで、竜児がファイティングポーズを取る。


 竜児を訓練するのに何が一番いいかと、隼人はいろいろ考えたが、結局実戦が一番だろうという結論に至ったのだ。

 もちろん、いざとなったら助けに入るつもりである。


「グ、グギャ……?」


 何が起きているのか、状況を理解できずに不思議そうな声を漏らすゴブリン。

 しかし、このままでは仲間たち同様に殺されてしまうのは明らか、ならば目の前の敵を倒すのみと、ナイフを手に竜児に襲いかかる。


「く……! 舐めんなよっ!!」


 駆け出してきたゴブリンを前に竦みそうになるも、竜児は声を張り上げ拳を突き出す。

 パワードソニックによって生み出された衝撃波が、ゴブリンの肩にヒットする。


『ギィィィィッッ!?』


 突然襲ってきた衝撃に、苦しげな声を漏らすゴブリン。

 しかしなかなかに根性のある個体だったようで、一瞬だけ怯むもそのまま直進してくる。


「う、うわぁぁあ!?」


 パニックになり、でたらめに拳を振るう竜児。

 魔力を消費して発生した衝撃波があらぬ方向へと飛んでいってしまう。

 そんな竜児の懐にゴブリンが飛び込み、ナイフを振り下ろす――が……


 パァンッッ!


 ――そんな音ともに、ゴブリンの攻撃は弾かれた。

 装備していたマジックバリアフィールドが障壁を生み出し、竜児を守ったのだ。


「く、喰らえ……!」


 障壁が自分を守ってくれたことで、少しだけ冷静さを取り戻した竜児が拳を突き出す。

 ゼロ距離から放たれた衝撃波がゴブリンの頭に直撃し……完全に沈黙させることに成功した。


「やった……のか?」


 拳を突き出したまま、声を漏らす竜児。

 そんな彼に、隼人は「よくやったな」と肩に手を置いてやる。


「よ、よっしゃぁぁぁぁぁ! 化け物を倒したぜ!!」


 勝利の咆哮を上げる竜児。


(まぁ、最初にしては上出来かな?)


 今回の戦いは装備の性能に助けられただけだった。

 しかし、竜児はパニックに陥るも逃げることはなかった。

 隼人はそれを評価してやるのだった。

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