17話 告白される最強勇者
数分後――
「ところで十六夜さん、結局ラブレターを出してきたのは誰だったんです?」
購買から戻ってきた竜崎が、紙袋から焼きそばパンを取り出しながら、隼人に問いかけてみる。
「ああ、そういえば……」
改めてポケットからラブレターを取り出し、中身を開ける隼人。
するとそこには、可愛らしい文字で告白文が書かれていた。
内容は隼人のことが前々から気になっており、その上、体育で活躍したことや、竜崎たち不良グループを返り討ちにしたことを聞き、その想いがさらに高まった……といったような感じだった。
「差出人は……竜崎沙織? お前と同じ名字だな」
そんな偶然もあるんだなと、苦笑しながら竜崎へと話を振る隼人。
すると竜崎は顔を強張らせ――
「そ、それ、俺の妹です……」
――と、衝撃の言葉を放つ。
「は? 妹? お前の……?」
「はい、まさか沙織のやつ、十六夜さんのことが気になってたなんて……」
茫然と呟く竜崎。
ということは……この沙織という子は、自分の兄をコテンパンにした相手に惚れてしまったということなのか。
なんとも言えない複雑な状況に、隼人は苦い表情を浮かべる。
「竜崎、お前から妹さんにそれとなく断りを入れといてくれ」
面倒ごとは御免だと、隼人はそんな命令をする。
「そ、そんな! せめて会ってやってもらうことはできないですか!? 沙織は俺と違って素直でいい子なんです!」
隼人の言葉を素直に受け入れると思いきや、意外にも竜崎は抵抗の色を示してみせた。
素行が悪いわりには、家では妹思いな兄なのかもしれない。
(こ、こいつ、パシリでも何でもするって言ったのに……)
これでは女除けの意味がないではないか。
隼人はげんなりしながらも、再度手紙に目を通す。
改めてちゃんと想いを伝えたいので、放課後、校舎裏にいてほしいと書いてある。
(まぁ、こうして勇気を出して想いを伝えてくれたことだし、竜崎の妹とはいえ、ちゃんと対応してあげないと不憫か……)
懇願するような目で訴えてくる竜崎を鬱陶しそうに見ながら、隼人は竜崎の妹、沙織と直接会うことを決めるのだった。
◆
「え? あれって……」
「何で隼人くんが竜崎と一緒に話してるの?」
「しかも竜崎、隼人くんのことを「十六夜さん」って呼んでるし……」
竜崎とともに教室へと戻ってきた隼人を見て、クラスメイトの女子たちがどよめいている。
まぁ無理もない。
竜崎がまた隼人に絡むのならともかく、竜崎は隼人を慕っている様子で、隼人もそれをめんどくさそうではあるから受け入れている様に見えるのだから。
(なるほど、やっぱり女子除けの効果はある程度ありそうだな)
周りの反応を見て、隼人は少しほっとする。
女子だけでなく、博之や康太まで様子を窺っているような状況はあまりよくないが、女子と違って少しすれば慣れてくれる……と信じることにする。
(しかし竜崎、思ったより面倒だな)
竜崎の方を見ながら、隼人は思う。
教室に入り席に座ると「十六夜さん、肩を揉みましょうか?」「何か飲み物ほしくないですか!?」などと聞いてくるからだ。
いったいどれだけ隼人に惚れ込んでしまったのだろうか。
そんなこんなで午後の授業を終え、放課後になったので隼人は校舎裏へと向かう。
するとそこには、長い黒髪を目の上で切り揃えた大人しめの……それでいて美少女と呼べる様子の女の子が佇んでいた。
「い、十六夜先輩、呼び出しなんてしてすみません!」
隼人の姿をみると、緊張した様子で少女は声をかけてきた。
「えっと、まさか君が沙織さんなの……?」
意外、といった様子で問いかける隼人。
竜崎の妹と聞いていたから、てっきりヤンキー混じりでド派手な子を想像していたからだ。
「はい、私が沙織です」
恥ずかしそうに頬をピンク色に染め、瞳を潤ませ隼人を上目遣いで見上げる少女……沙織。
どうやら、本当に彼女は竜崎の妹のようだ。
「十六夜先輩、手紙にも書きましたが、ずっと前からあなたのことが気になってました! もしよろしければ、その……私とお付き合いしていただけませんか――?」
勇気を振り絞り、告白の言葉を口にする沙織。
そんな彼女に、隼人は「申し訳ないんだけど……」と断りを入れようとする……のだが――
「十六夜さん! 俺からもお願いします!」
そんな言葉とともに、竜崎が木の影から飛び出してきた。
「え? ど、どうしてあなたがここにいるの……!?」
いきなり現れた竜崎に驚愕する沙織。
そんな彼女に、竜崎は「へへっ! 十六夜さんの舎弟にしてもらったんだ!」と、自慢げに答える。
「と、ということは……十六夜先輩は、私と兄さんが兄妹であることを……?」
「ああ、知ってるぜ!」
まさか……といった様子で問いかける沙織に竜崎は、もちろん! と、胸を張って答える。
「そ、そんなぁ……」
泣きそうな声で、その場に崩れ落ちる沙織。
どうやら、自分が竜崎と血縁関係にあることを、隼人に知られていないと思っていたようだ。
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