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15話 呆気に取られる最強勇者

 翌朝――


「おはよう、隼人。昨日は楽しかったな!」


 学校へと投稿してきた隼人に、下駄箱の前で博之が挨拶をしてくる。

 いつの間にか名字から下の名前で呼ばれていることに少々驚きつつも、隼人も「おはよう、博之くん」と挨拶を返す……のだが――


「なんだこれ?」


 下駄箱の中に、可愛らしいデザインの手紙のようなものを見つける。

 それを取り出し、隼人は不思議そうに首を傾げる。


「は、隼人! それラブレターじゃないか!」


「……へ?」


 博之の言葉に間抜けな声を漏らす隼人。

 確かに、よく見れば可愛いハートの形をしたシールで封をしてある。


(こ、この時代にラブレターとは、ずいぶん古風だな……)


 そんな感想を抱きつつも、隼人は懐のポケットにそれをしまう。

 今の博之の声で、周囲の視線が集まってしまったからだ。


「(ねぇ、隼人くんってばラブレターもらったらしいよ!)」


「(うわ! 先越されちゃったよ!)」


 どこからともなく、女子生徒のそんな囁き声が聞こえてくるのだが、隼人はそれを聞かなかったことにして、そそくさと教室へと向かうのであった。


 ◆


「ねぇ、隼人くん、今日一緒にお昼食べない?」


「あ、私が誘おうと思ってたのに!」


「ちょっと、抜け駆け禁止だって!」


 教室に入ると、女子たちのそんなやり取りに巻き込まれる隼人。

 どうやら昨日の体育での活躍、ゲームセンターでの活躍が広まった上に、今朝のラブレターの件もあって、密かに隼人を狙っていた女子生徒たちに火がついてしまったようなのだ。


(こ、困ったな、せっかく悠々自適な学園生活を謳歌しようと思ってたのに、こうも女の子たちに囲まれちゃうとな……)


 女子たちに愛想笑いで返しつつも、頭の中でそんなことを考える隼人。


 異世界でもそうだったが、多数の女性に囲まれるとトラブルの原因となる。

 自由気ままな学園生活を所望する隼人にとって、できればそれは避けたいところなのだ。

 しかし、冷たく対応してしまっては隼人の肩身が狭いものとなってしまう。


 どうしたものか……、隼人は内心途方に暮れるのであった。


 ◆


 昼休憩時間――


「ここなら誰もこないよね……?」


 そんな風に呟きながら、学園の屋上で周囲を見回す隼人。

 本来なら屋上は立ち入り禁止の屋上の鍵を、解錠魔法で開けて入ったのだから恐らく大丈夫であろう。

 四限目の授業が終わり、さっそく女子たちに囲まれさそうになったところを、「用があるからごめん」と言って、教室から抜け出してきたのだ。


 少し経っても誰も来ないことに安堵し、隼人はほっと息を吐き、その場に寝転がる。


(あ、そういえば、お昼ごはん食べられないや……)


 すぐに教室を抜け出してきたので、購買で昼食を買うヒマもなかったことを思い出す隼人。

 腹は減ったがこのまま下に降りればまた女子に囲まれてしまう。


 どうしたものかと考える……その途中であった。

 屋上の扉が開く音がする。


(ああ、見つかってしまったか……)


 残念そうな表情を浮かべながら、扉の方を見る隼人。


 するとそこには――


「竜崎……?」


 そう、不良生徒の竜崎が立っていたのだ。

 竜崎は隼人を見つけると、真っ直ぐに向かってくる。

 また何か因縁をつけられるのか、それとも昨日ゴブリンから救った件について問われるのか……。


 どちらにしても面倒だと、隼人は若干渋い顔を浮かべるのだが――


「十六夜――いや、十六夜さん! 俺をあなたの舎弟にしてくれッ!」


 そんな言葉とともに、竜崎は勢いよくその場に正座し、隼人に向かってこれでもかと深く頭を下げた。


「…………は?」


 竜崎の突然の行動に、隼人は間抜けな声を漏らす。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここ数年読んでいる小説の中でも一番面白いと感じました。 最近の小説は各キャラの心情描写がかろんじられていることが多く、感情移入できないような作品ばかりでした。 この作品はそんな中でも、各キャ…
[一言] 竜崎嫉妬と逆恨みで悪堕ちするかと思ったらそっちにいったか……
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