13話 放課後を堪能する最強勇者
放課後――
「ゲーセンに来るのも久しぶりだな……」
駅前のゲームセンターの前で、隼人が呟く。
博之たちとの約束通り、四人で遊びにきたのだ。
「なぁ、十六夜、試しにパンチングマシーンやってみてくれよ!」
ゲームセンターの中を、何をして遊ぼうかと歩いているとパンチングマシーンを指差し、興奮した様子で博之が隼人に声をかける。
「確かに! 十六夜のパワーを見てみたいなぁ!」
康太もそんな風に勧めてくる。
「わかった、少しやってみるよ」
興奮した様子の二人に苦笑しながらも、グローブを嵌める隼人。
(今度こそは加減を間違えないようにしないと、最低限の力でやるぞ!)
昼間のサッカー試合のこともあり、隼人は逆方向へとやる気を滾らせる。
なるべく本気に見えるように、それでいて力は抜いて拳を振りかぶる隼人。
しかし、戦いで鍛え抜かれた流れるような動作までは隠しきれず、美しいフォームに思わず博之や桃子たちが息を漏らす。
ドパンッッ!!
腹の底に響き渡るような声が響き渡る。
あまりの音量に、近くにいた人間が皆揃って、ビクッ! と体を跳ねさせる。
モニターに表示された数値は431キロだった。
「は……? なんだ、この数値……」
「前の最高記録、230キロって出てるけど〜……」
間抜けな声を漏らす康太、呆然とした声を漏らす美香。
(こ、ここまで加減をしてもダメなのか!!)
マシーンの最高計測記録を200キロ近く超えてしまったことに、隼人は愕然とする。
細心の注意を払い、ここぞとばかりに加減したのにこの様とは……自分の力がこの世界の人間と比べて、予想以上に強化されていることを実感する。
「こ、これって多分、プロボクサーよりもスゴい数値出てるよな……!?」
「隼人くん、凄すぎ……!」
意外にも、博之や桃子たちはどん引きというよりは、隼人のパワーに興奮した様子を示している。
とりあえず、怖がられて距離を取られる……なんていうことはなさそうだと、隼人は少し安心するのだった。
と、ここで――
「ねぇねぇ! 次はプリクラ撮ろうよ!」
「あ、撮りたい撮りたい〜!」
桃子と美香が、そんなことを言い出した。
二人に連れられ、プリクラの筐体へとやってきた隼人たち。
お金を入れて撮る準備を始めたところで――
「隼人くん、マッスルポーズしてみて!」
「な、なんでそんなことを!?」
「いいからいいから〜!」
桃子と美香のゴリ押しに、仕方なく両腕を上げる隼人。
すると二人が隼人の腕に両手でぶら下がってきた。
「なるほど!」
「面白そうだな!」
博之と康太まで楽しげな様子で、隼人の両隣でそれぞれ筋肉をアピールするようなポーズを取る。
「すごーい! 隼人くん、女子を二人も持ち上げてるのに全然ぶれない!」
「そりゃ、パンチングマシーンで400キロも出るわけだよね〜!」
隼人の腕にぶら下がり、きゃっきゃっとはしゃぐ桃子と美香。
隼人は(しまった! キツイふりをすればよかった!)と後悔するのだが、もう遅い。
結局、隼人のパワーを強調するようなポーズばかり撮り、色々と落書き機能で好き放題書かれ、スマホに画像を転送されてしまうのであった……。
「わーい! みんなに送っちゃおっと〜!」
「めちゃめちゃ面白く撮れたもんな!」
美香と康太がそんな恐ろしい会話を交わしているが、ここまできたらどうにでもなぁれ。
隼人はそんな心境で諦めるのだった。
その後も、勇者としての観察力・洞察力を活かし、クレーンゲームでぬいぐるみやゲーム機を乱獲して遊んだりするうちに、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
「十六夜、今日はありがとう!」
「楽しかったぜ!」
別れ際に、そんな言葉をかけてくる博之と康太。
「ほんと、こんなに楽しいのは久しぶりかも!」
「また一緒に遊ぼうね〜!」
桃子と美香も、嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめながら言う。
「ぼくも楽しかったよ、ぜひまた一緒に遊ぼう」
たまにはこんな日も悪くない。
そんなことを思いながら、隼人は皆に返事をしたところで、楽しい時間は終わりを告げる。
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