11話 人気者の最強勇者
翌朝――
「おはよう、隼人くん♪」
リビングへと降りてきた隼人を美雪が優しい笑顔で出迎える。
「おはよう、母さん」
美雪に挨拶を返しつつ、テレビへと視線を向ける隼人。
今のところ、変死体が見つかるような事件が取り上げられている様子はない。
どうやら未然に事件を防げたようだと、ひとまず安心する。
テレビを見つつ朝食をかき込むと、隼人はテキパキと登校準備を済ませる。
「あ、待って、隼人くん。一緒に登校しよ?」
隼人が玄関で靴を履いていると、春菜がそんな風に声をかけてきた。
「なんで私まで……」
春菜の後ろには、少々不満げな……それでいて気恥ずかしそうな様子の夏実が立っている。
特に断る理由もないので、隼人は二人と一緒に登校することにする。
◆
登校中――
「おい、アレって二年の不登校児じゃなかったっけ? なんで春菜さんたちと一緒に登校してるんだ?」
「知らないの? あの子、春菜さんの弟よ」
「しかも久しぶりに登校してきたと思ったら、不良の竜崎たちを返り討ちにしちゃったらしいよ」
「え!? その話ってアイツのことだったのかよ!」
通学路を歩く隼人たちの耳に、登校中の生徒たちのそんな声が聞こえてくる。
「ふふっ、人気者だね? 隼人くん」
「勘弁してよ、姉さん」
少しからかってくる春菜に、苦笑しながら答える隼人。
どうやら竜崎たちを返り討ちにした件が、思ったよりも広まっていたらしい。
「……兄さ――隼人さんを見てる女子の数が多い気がする……」
春菜の隣で、夏実がボソッと小声で呟く。
本人は隼人に聞こえないように言ったつもりのようだが、耳の良い隼人には丸聞こえだ。
周囲を見渡してみると、確かに女子生徒たちの視線が多いように思える。
(面倒なことにならないといいなぁ……)
そんなことを思いながら、隼人は学校へとたどり着くのだった。
◆
「おはよう、十六夜!」
「おはよう! 隼人くん!」
教室へと入ってきた隼人を見て、クラスメイトたちが次々に挨拶してくる。
「おはよう、みんな」
今までとはえらい違いだな……。
そんな感想を抱きながらも、隼人は愛想よく挨拶を返す。
「なぁ、十六夜、今日の放課後一緒にゲーセン行かないか?」
「あ、私も行きたい!」
隼人が席に着くと、そんな風に声をかけてくる生徒が二人。
一人は相馬博之、なかなかにイケメンで女子に人気がある男子生徒だ。
そしてもう一人は綾瀬桃子、こちらも可愛らしい見た目をした女子生徒で、博之同様に人気がある。
「相馬くん、綾瀬さん、誘ってくれてありがとう。ぜひ一緒に遊ぼう」
朝きていきなり遊びに誘われたことに少々驚きつつも、隼人はそれを快諾する。
「お、いいな」
「私も私もー!」
隼人たちがやり取りを交わしていると、他の生徒も話に加わってきた。
長瀬康太、ガタイのいい男子生徒だ。
それに白上美香、桃子と並んで男子に人気のある女子生徒だ。
結局、隼人を含め五人で放課後に遊ぶことになった。
他の生徒もソワソワした様子で隼人たちのことを見ていたが、声をかけてくることはなかった。
今は様子見……といったところなのだろう。
そうこうするうちに、担任が教室へと入ってきた。
「なんだ、竜崎は来てないのか?」
教室を見渡しながら、担任の教師が言う。
そういえば、と隼人は竜崎の席の方を見る。
竜崎の取り巻きの生徒、田中たちはいるものの、竜崎はいない。
(この前、やり過ぎちゃったかな……)
威圧の調整を間違えて、竜崎を返り討ちにしてしまったことを、少々後悔する隼人なのであった。
ご覧いただきありがとうございます!
ブックマーク、評価をしていただけるとモチベーションの向上になります。
『面白い』『続きが読みたい』そんな方は、下の評価欄を☆☆☆☆☆⇒★★★★★にしてくれると嬉しいです!
『面白くなりそう』と思ってくださった方も、期待を込めて評価していただけると、作者のやる気が出ます!




